次の必見ドラマは『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』

この夏もっともアツいドラマがこれ。

by Colin Crummy
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02 August 2017, 8:27am

土曜朝のテレビは変わってしまった。80年代のアメリカには、『Gorgeous Ladies of Wrestling (aka GLOW)』があった。週末の朝にレオタードを着てパイルドライバーをかけあったりする女性レスラーたちを追ったテレビ番組だ。奇抜だけど面白そうでしょう? 新しい番組企画を探していたテレビ・ライターのカーリー・メンチとリズ・フラハイヴはそう考えた。そして、女性レスラーたちを描いた10話完結ドラマ・コメディ『GLOW』のアイデアを思いついた。

現在、Netflixで配信されている『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』は、女子プロの内側を描いたコメディ・ドラマだ。そこには、オーディションからリハーサルを経て試合へといたる過程が描かれると同時に、80年代のロサンゼルスを舞台に、女子プロのファンや奇妙な登場人物たちの姿も描かれている。『コミ・カレ』のアリソン・ブリーが、生活のためにしかたなく女子プロに挑戦する女優ルース・ワイルダーを演じているが、『GLOW』に登場するほかの女性たち同様、ルースは、男性ばかりが評価を得て、女性が二番手に甘んじるばかりの世界で、ブレイクのきっかけを待ち続けている。彼女は自身を"次なるメリル・ストリープ"だと信じているが、キャスティング・ディレクターたちは映画の主演男優にお茶を持ってくる役にぴったりだとしか考えない。そして、結局、そんな役さえ彼女には巡ってこない。

ゴキブリが出るような安宿に暮らすルースは、GLOWのオーディションを受ける。女子プロは、女性が体にぴったりと張り付くような服を着て、胸の大きな金髪アメリカ人女性の"ヒーロー"役と、育ちも素行も悪い悪役"ヒール"役に分かれて戦うショービジネスの世界だ。それは、古臭いステレオタイプに基づいて作られた善悪の決戦ショー——あらゆる意味で搾取的な世界だ。しかし、そんな世界があるからこそ、GLOW女性たちの生計がなりたつという現実もある

それこそが、この番組のクリエイターたちが作品の核をなすと考えているものだ。「登場する女性たちの姿に勇気をもらえると同時に、内容にはとても搾取的な要素がある」と、これまで『Weeds ママの秘密』や『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のプロデュースも手がけてきたメンチは話す。「全10話を描き出していくうえで、その葛藤を手放してはならないと思ったんです。彼女たちがGLOWやレスリング業界を理解し、ときには少しくらい自分の手を汚さないといけないということを知っていくのは、この作品のひとつの重要なテーマだったので」

『GLOW』は80年代を見事に表現している。1話30分ほどの映像には、ダウンタウンにかつてあったパステルカラーのモーテルや、マリブの豪邸など、80年代らしい風景が多く登場する。制作スタッフは、『ワーキング・ガール』や『がんばれ!ベアーズ』など80年代に作られた名作映画を観て、大きなヘアスタイルと化繊の服が大流行したこの時代をリサーチしたそうだ。また『GLOW』は、アジア人女性に中東人テロリストを演じさせ、ソ連のセクシーなスパイも登場させるなど、当時の文化背景も物語に盛り込んでいる。登場するすべての女性が、番組中のショーを監督するディレクターで、B級映画監督のサム・シルヴァによって性差別的扱いを受ける。

『GLOW』が、GLOWを批判することはない。しかし、レスリングのリングという極端化された世界で、社会のタブーを浮き彫りにしている。「特に80年代、レスリングの悪役は、社会に浸透していた固定概念に基づいて作り出されていた」と、これまた女性を中心人物に描いた番組『ナース・ジャッキー』などを制作したフラハイヴは説明する。「反アメリカ感情を打ち出して、ライバルのハルク・ホーガンを一躍有名レスラーにしたヒール役、アイアン・シークのような例を見てもわかるように、時代の文化背景にある人々の恐怖心をリング上に描き、戦わせるというのがベースとなっているの」

『GLOW』に登場する女性たちは、社会の固定概念を真っ向から問い、同時にリング内外での個人的な体験を明らかにしていく。制作総指揮のジェンジ・コーハンが手がけるもうひとつの作品『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』と同じく、『GLOW』もまたこれ以上ないほどの多様性をキャスティングに反映している。キャストには、元レスラーのミア・スティーヴンス(Mia Stevens)、2008年映画『Good Dick』の監督マリアンナ・パルカ、そしてイギリス出身で歌手から女優に転身したケイト・ナッシュなどが起用されている。なんとも奇妙な取り合わせだが、不思議と見事に機能している。

「これは、女性の身体についてのドラマ。だからこそ、さまざまな体型の女性を起用したかった」とメンチは言う。「そういうキャスティングをすることで、まったく新しい感覚のドラマにしたいと思ったんです。リアルに感じられるものにしたかった」。その意味でも、ほかのあらゆる意味でも、『GLOW』は観るものをノックアウトする作品だ。

『GLOW』はNetflixで配信配信中

Credits


Text Colin Crummy
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.