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アーロン・テイラー=ジョンソンが映画『ノクターナル・アニマルズ』と、トム・フォードとの映画作りについて語る。

11月3日(金)にトム・フォードの映画監督作品2作目となる『ノクターナル・アニマルズ』が公開される。2016年にアメリカで公開され、注目を浴びたこの映画について、ファッションで美しい世界を作り上げてきたデザイナーの監督作品に出演することのすばらしさについて、アーロン・テイラー=ジョンソンが語った。

by Colin Crummy
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11 October 2017, 9:25am

トム・フォードは細部にまでこだわったものづくりでよく知られている。しかし俳優に「3ヶ月は身なりに構うな」と言い放つまでとはとは思われていなかっただろう。彼は映画『ノクターナル・アニマルズ』の撮影に先立ち、アーロン・テイラー=ジョンソンにそう言ったそうだ。「撮影を前にトムは僕に『髪も髭も爪も伸ばしてくれ』と言ったんだ。撮影までには垢が溜まった汚い爪ができあがったよ」とバッキンガムシャーのハイ・ワイコームに生れ育った26歳の俳優、アーロンは話す。「伸びた爪がスクリーンに映し出される、詳細なイメージがトムのビジョンには明確にあったんだ」

トム・フォードは『ノクターナル・アニマルズ』で何を捉えるかについて具体的なビジョンを持っていた。彼は2009年に監督初作品『シングルマン』を発表し世界で注目を浴びた。第2作目となる『ノクターナル・アニマルズ』では、オースティン・ライトによる小説を脚本化し、プロデュースも監督も務めた。できあがった映画はフィルム・ノワール調の世界観が緻密に作り上げられ、現代社会の過度な物質主義を批判する内容(意外に感じるだろう)の作品となった。『ノクターナル・アニマルズ』の核をなすのは恋愛関係とその大切さだ。元夫(ジェイク・ギレンホール)から送られてきた小説処女作「ノクターナル・アニマルズ」の原稿を受け取るロスアンゼルスの美術商、スーザン役をエイミー・アダムスが演じている。

トム・フォードは、元夫の小説「ノクターナル・アニマルズ」の物語と、それを読み進めるスーザンが回想する過去、そして現在で映画『ノクターナル・アニマルズ』の物語を構成した。スーザンは送られてきた小説を読みはじめる。「ノクターナル・アニマルズ」の主人公のレイがテキサスを舞台に地元で落ちこぼれ、誘拐や強姦、殺人をおかしていく暴力的な物語だ。まだ小説家の卵だった元夫に対しかつてスーザンがとった行動と、それが招く結末が寓話として描かれている——そう考えたスーザンの思考と想像がフラッシュバックで映像に織り込まれる。アーロンは暴力的なレイを演じている。

シャツのボタンを大きく開けるTom Fordの代表的なスーツ・スタイルでi-Dスタッフの前に現れたアーロンは、殺人鬼というよりもキャットウォークに登場するモデルのようなオーラを放っている。また『キック・アス』や『アベンジャーズ』にピッタリとしたボディスーツを着てスーパーヒーローとして出演していたころの、"髭をたくわえた顔に、引き締まった筋肉質な身体"というイメージからもほど遠い。いまの彼は大人の男だ。アーティストから映画監督に転身したサム・テイラー・ジョンソンと結婚しふたりの娘の父親ともなった。そんなアーロンがデザイナーと映画監督の両方を務めるトム・フォードとの現場について、長く支え合う関係の大切さについて、そしてなぜ年に一本しか映画出演をしないかについてi-Dに話してくれた。

—トム・フォードはあなたが演じたレイを「自分を70年代ロックスターだと心信じてしまっている落ちこぼれ」と形容し、そのイメージから劇中のレイの容姿を作り上げていったそうですね。その説明はキャラクター作りに役立ちましたか?
「トムは細かな部分までこだわるひと。ある意味建築家のような、どうしたいかを自分で完全に理解してそのビジョンをもとにひとをうまく操ることができるひと。そんなひとの助言が役立たないわけがない。トムは映像の一瞬一瞬をすべて綿密に考え抜いているんだ。僕の髭もトムが自ら剃ったんだよ。70年代ロックンローラーのイメージということでマトンチョップ(もみあげと鼻下の髭は繋ぎ、あご髭は剃るというスタイル)を映像に必要としたんだ。僕の髪をストレートに伸ばしたのもトムがやったんだ」

—すべてを自分の手で作り上げていくというのが、監督としてのトム・フォードが見せたもっとも顕著な特質でしたか?
「トムには自信があるんだよ。彼の素晴らしいところは迷わないところ。何をどうしたいか明確にわかっている」

—あなたはこれまでにまったく違う世界から映画監督に転身した監督ふたりの作品に出演しています。ひとりはファッション・デザイナーから監督になったトム・フォード。もうひとりがあなたの妻でありアーティストから転身したサム・テイラー・ジョンソンです。トムの『ノクターナル・アニマルズ』と、サムの『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』の撮影では何か違いはありましたか?
「もちろんだよ。トム・フォードは自身のファッション帝国を築き率いてきたリーダーだからコラボレーションというものに長けている。またトムはアートを愛している。彼は監督としてその場にいる全員を率いることができる。すべては彼から生まれるんだ。彼にはものすごいオーラがある」

—サムはどうでしょう?
「サムはまた違うね。サムは映画監督になる前はアーティストだったひと。アーティストもアイデアの具現化や作品制作過程においてトップに立たねばならない。彼女の作品の美しいところは不可能なアイデアがないところ。サムは楽観的で明確な理想を持ったひとなんだ。映画会社がもっとも大きな権限を握る世界では監督のうえに大勢のひとびとが存在していて、彼らが決定したり、妥協したり、選択をする。そういう世界で映画を作ることはトムがいる世界とはまたまったく違う世界なんだ。トムは大手ファッション企業の傘下に入ったりせず、自分の会社で独自のデザインを作り出している。映画でも同じで彼が脚本を書き、プロデュースをした。トムは主導権を握っているべきひと。サムも同じ。サムは自分に裁量が委ねられているから美しいものを作る。彼女のアートと同じでね」

—『ノクターナル・アニマルズ』は、別れと酷い殺人が並行して描かれ、関係を無下に壊してしまうことの恐ろしさを訴えています。この映画から何を学びましたか?
「トムはこの物語をとても個人的に解釈した。トムはおそらくこの小説を映画として作らずにいられなかったんだと思う。彼とパートナーのリチャード・バックリーは30年間をともに生きてきた、彼はとても誠実なひとなんだ。だから愛や友情やソウルメイトがそこにいるなら関係を育み、大切にしていかなきゃならない絶対に手放したりしちゃいけないものなんだととトムは知っている。間違った選択をしてその後の人生を後悔して生きるなんてしちゃいけない。トムは『ノクターナル・アニマルズ』を個人的な視点からそう解釈したんだと思う。僕はそこに描かれているラブストーリーにとても心動かされる。スーザンはとても物質主義的なライフスタイルを望んだけれどそれを手に入れたら、そこに幸せなどなかったことに気づく。後悔のうちに愛を知る、残酷なラブストーリーの描かれ方なんだ。ソーシャル・メディアによって否が応でも影響を受ける現代文化で、僕たちは本当に何を必要としているかを見失いがちだと思う」

—スーザンが生きる物質主義的な世界に共鳴できてしまう部分はありましたか?
「トムはふたつのまったく異なる世界を映画に描いた。それは描き方のスタイルとしてトムが選んだもの。アート、金、そして物質主義的ライフスタイルの現実を観客に感じてもらうために。それは誰にでもある感覚なんだと思う。誰でも、たとえば車や家やファッションといったものに夢中になって物質主義的なライフスタイルに傾くときはある」

—あなたは何に物欲を感じますか?
「僕はあまり贅沢をしないほうだと思う。妻と子どもが一緒にいてくれる、落ち着いて幸せな生活に満足しているからね。妻と子どもたちが僕と一緒にいてくれればどこに住もうとかまわない。どんな物質的なものにも依存したりしていないと思う」

—あなたの足を地にしっかりと下ろしてくれているものとは?
「親として子どもを育てているという責任ほど落ち着いた人間にしてくれるものはない。ひたむきさを求められ歓びを与えてくれるものはほかにない。子どもを育てることは僕の人生でもっとも好きなこと。だから僕は一年に一本しか映画に出ないとに決めているんだ。子どもたちを学校やアクティビティに連れていったり、料理をしたり、そういったありふれた日常を送ることにできるだけ多くの時間を費やしたいからね」

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Credits


Text Colin Crummy
Image courtesy of Universal Pictures