一夜限りの火花:森川マサノリ×山岸慎平

BED j.w. FORDとCHRISTIAN DADAによるジョイントショー「RE:ACTION」。それぞれパリとフィレンツェで発表を終えたばかりの2人のデザイナーは、なぜこのタイミングで“AT TOKYO”に参加を表明したのか?

by Tatsuya Yamaguchi
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05 November 2018, 9:49am

10月17日(水)、Amazon Fashion Week Tokyo 2019年春夏の3日目の夜。渋谷・道玄坂にある立体駐車場で、森川マサノリが手がけるCHRISTIAN DADAと、山岸慎平によるBED j.w. FORDのジョイントショー「RE:ACTION」が開かれた。ともに1984年生まれのデザイナーである2人の強烈な“個性”がぶつかり合いながらも、1つに融合していくショーは“一度きり”しか発現しないであろうエネルギーに満ち満ちていた。ショーを終え「さまざまな“賛否両論”の声があった」と話す彼らの“リアクション”は、果たして何に向けられたのものだったのだろうか。

CHRISTIAN DADA
BED j.w. FORD

——CHRISTIAN DADAは3年以上パリ・ファッションウィークで発表を続けていて、BED j.w. FORDは今年6月にイタリア・フィレンツェで開かれるPITTI IMAGINE UOMOでランウェイショーを開催しましたが、それぞれの活動の延長線として、合同ショーを行うのなら“今”だという感じがあったのですか?

森川:そうですね。もし〈AT TOKYO〉からのオファーのタイミングや開催時期が少しでも前後していたら、今回のショーは実現しなかったかもしれません。それぞれのフィールドで発表してきて、今なら何か面白いことができるかもしれないという予感が湧き始めていたころだったんです。絶妙で、不思議な偶然だったと思います。

山岸:森川くんはデザイナーとしては自分たち世代の先を走っていて、嫉妬心のようなものがありました。彼がパリで挑んでいることは画面越しにもちろん知ってたのですが、僕がパリで展示会を行ったときには「こんな厳しい世界でやってきたのか」と驚きがありましたし、フィレンツェでショーをして思い浮かべたのも同年代である彼の姿だったりしました。そうした時期を経て、どこかフラットな眼でCHRISTIAN DADAの服や森川くんのことを見られるようになってきていたタイミングでしたね。

CHRISTIAN DADA

——掲げられたタイトルは「RE:ACTION」。合同ショーの一報を受けて、同じく“AT TOKYO”枠で発表した「10.20 sacai/UNDERCOVER」のショーを少なからず想起しました。

森川:実は僕たちに合同ショーの話があったのは1年前で、正式に決まったのはショーの二ヶ月半前のこと。「RE:ACTION」という名前は話をもらってすぐ決めていたんです。「RE:」という文字は「続編」という意味や「返信」の意味がある。“繋がり”を意味する言葉として僕たちの下の世代にとって轍となるような“アクション”でありたいと思う一方、「10.20 sacai/UNDERCOVER」とは同じことは絶対にしたくないし、何か僕たち特有のドキドキ感を表現するべきだという反抗心もあった。例えば道玄坂のエリアはCONTACTやVISIONがあって僕らがいつも遊んでいる場所でもある。自分たちと近しい場所で行うこと、そして“今”の僕たちだからこそ可能な表現という意識は共有していましたね。

——2フロアをつかった演出で、4階からはCHRISTIAN DADAのウィメンズ、5階からはBED j.w. FORDのメンズモデルが同時に歩みを始めて、徐々に1本の動線上で交差していきました。目で追いきれず困惑しましたが、ショーが進むにつれてこの光景そのものが「RE:ACTION」の一部なのではないかと思い始めました。

山岸:僕はプライドを押し付けてくるだけのランウェイほど嫌なものはないと思っています。少なくとも僕たちがジョイントするうえで何よりも“空気感”が重要だと思っていました。それぞれのブランドの個性を強く提示しながらも、ランウェイ上では服やモデルの出方を混ぜようというアイデアは当初からずっと変わらない軸でしたね。相手がCHRISTIAN DADAでなかったらできなかったと思うし、いい意味で僕が今後ブランドをやっていくなかで絶対にやらないであろう一度きりのショーになったと思っています。

森川:各々のプライドの上にエモーショナルな“空気感”を生み出したいというイメージを共有していていました。登場する服の“境界”が見えない合同ショーへの“賛否”の声を色々と聞きましたが、僕は2つのブランドがごちゃまぜに混在した見せ方を慎平とやれたこと自体が面白かった。服は全く違うのに「どっちがどっちなんだ」と戸惑わせるくらいの共有感が生まれることを狙っていましたから。

CHRISTIAN DADA、BED j.w. FORD
CHRISTIAN DADA、BED j.w. FORD

——海外での経験が今回のショーに与えた影響はありますか? CHRISTIAN DADAはシャツを再構築した新作コレクションで、BED j.w. FORDはすでに発表したコレクションにコサージュを加えながら新たにスタイリングを組んでいました。

森川:今回の合同ショーではウイメンズを担当することになったので、「10.20 sacai/UNDERCOVER」への反応も含め、なにか日本のファッションを題材にしたいと思っていて「シャツ」という一題材のみで作りました。それは、イッセイミヤケの一枚布の思想、 アンダーカバーの高橋さんのTシャツコレクションなどへの僕なりの『反応』という意味を込めています。パリで発表したウイメンズの服もほぼありませんでしたしね。でも同時にいつもとは違うすごくシンプルなコレクションを作りたいとも思いました。僕の過去のショー、特に初期の頃を見てもらうとわかると思うんですが、盛りに盛って、激しくて。日本ブランド特有なのか、今でも東京で発表するブランドは引き算で勝負するデザイナーはほとんどいない。“盛る”ことで良くも悪くも一抹の安心感を得られますから。僕自身も”盛る”性質はあるものの、パリで色々なスタイリストなどと働いていくなかで"引く" 大事さを知りました。2016-17年秋冬の頃からですかね。だから今回の合同ショーでは、東京でショーをやっていた5年前とは違うぞと、全体のルックを組んでいったんです。一方、BED j.w. FORDには他のブランドにはない気持ちの良いレイヤーがあって……

山岸:BED j.w. FORDの場合、レイヤードは意味のあることしかしていません。海外で活動を始めてからは特に無闇矢鱈に奇をてらわなくなりましたね。例えば暑かったらコートを脱ぐ、それを手に持つのが邪魔だから肩から背負う。そうした日常の所作から発想するので、余計なことは省かれていくんです。森川くんの言うように、確かにショーを構成する上で“引く”ことの怖さはどんなデザイナーも抱いているので、簡単なようで実は一番難しい。かつて僕たちは「この服、誰が着るんだよ」って言われてきたブランドだったし。

森川:当時いわゆるノームコアみたいのが出てきたんだよね(笑)。正直、そんな状況を苛立ちながらみていたけど、お互いそういう時期を経た“今”なのかなと思いますね。

bed j.w. ford

——ショーの最後に流れたのはRadioheadの「Lift」。1997年に出された『OK COMPUTER』には未収録でありながら、ファンの間では名曲と語り継がれてきた一曲ですね。

山岸:Björkだとか2〜3つの候補はありましたけど、フィナーレの曲は短い会話ですぐに決まったよね。

森川:「Lift」は昨年、10年越しにリリースされたリマスター版を使っているんです。当時の僕たちはyoutubeとかで「Lift」を聴いていて、それがようやくアルバムに収録された……。世代的な感覚や思い出を直接リンクさせたいわけではなかったけど、自然と合致した選曲でしたね。

——無意識に共有していることであったり、同じ年に生まれ、同じ時代を生きてきたと感じることはありますか?

森川:1984年生まれってけっこう面白いと思うんですよね。高校生の頃にインターネットが入ってきた世代。小学生の頃は渋カジブームがあって、中学1〜2年でDCブランド、そのあと裏原……。慎平は宮下さん、僕は盾さんと、傾倒してきたブランドや人は違えど、東京のファッションカルチャーの動きはほぼすべて通ってきているんですよね。

山岸:うん。それぞれのジャンルには何かしらで触れて来ています。それと、地方出身である僕たちは2人とも情報を足で稼ぐタイプだってのも共通してますね。インターネットが普及していなかったからこそ、雑誌を読みふけり、怖い思いしながらわざわざ東京まで服を買いに行ったりしていた。自分が見たいものだけをピンポイントで見てきたわけじゃないから、都合のいいものだけで形成されてないんですよね。“世代”という言葉で括ると途端に陳腐になりますが、僕たちと同年代のデザイナーは経験したことが似ていても切り口が人の数だけ違って一辺倒になっていない。そういう多様さの面白みはいつも感じますね。

森川: 5年前、僕たちは最初カラオケで会ったんですよ。僕は東コレでショーを始めたばかりで、彼はブランドを始めたばかりの頃。もう食うのも必死な時期ですよ。それからそれぞれの活動を経て、今、さまざまな意味が込められた「RE:ACTION」と題した"AT TOKYO"でのショーを開催することができた。僕たちはこれから、若い世代からも、上の世代からも「こいつら、ここまできたか」と思わせるブランドにならなきゃいけないんじゃないかと。合同ショーでそれぞれのファッションに対する気持ちも再認識できたし、その使命感を僕らにしかなし得ない方法で果たし続けたいと考えています。

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Credit


Text Tatsuya Yamaguchi
Photography Nobuko Baba

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