Timothée wears Jacket Maison Margiela spring/summer 19. Vest stylist’s studio. necklace and earring on left ear (worn throughout) Saint Laurent by Anthony Vaccarello spring/summer 19.

OH BOY! ティモシー・シャラメ × ハリー・スタイルズ 夢の対談

待望の映画『Beautiful Boy』公開を記念し、ティモシー・シャラメとハリー・スタイルズが名声との向き合い方、SNS、現代の男性性について語る。

by i-D Magazine; translated by Ai Nakayama, and Nozomi Otaki
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01 November 2018, 4:42pm

Timothée wears Jacket Maison Margiela spring/summer 19. Vest stylist’s studio. necklace and earring on left ear (worn throughout) Saint Laurent by Anthony Vaccarello spring/summer 19.

君の名前で僕を呼んで』でティモシー・シャラメがスクリーンに登場するや否や、彼の繊細な表情、キュートな髪型に世界中が恋をした。彼の美しさはいうまでもなく、特筆すべきはトリリンガルで早熟なエリオという役を演じ切ったティモシーの力量だ。この役で彼は過去80年で最年少のアカデミー主演男優賞ノミネートを果たし、彼の名声は高まるいっぽうだ。

本作に続き、ティモシーは同じくアカデミー賞にノミネートされたグレタ・ガーウィグ監督の『レディ・バード』に出演。クールな高校生の役で驚くべき感情の深みを表現した。しかし、彼の才能を新たなレベルに押し上げたのは、フェリックス・ヴァン・フルーニンゲン監督による『ビューティフル・ボーイ』の役どころだろう。ティモシーが演じたのは、裕福な家庭の10代の息子で、ジャーナリストの父親デヴィッド(スティーヴ・カレル)への恐怖心から覚醒剤依存に陥るニック。一見すると、ニックは人が羨むような生活を送っている。

サーフィン文化が息づくカリフォルニア北部、サンフランシスコのベイエリアで、ニックを待ち受けているのは輝かしい未来…。しかしそれは、彼がドラッグに走り、家を捨てて依存症に陥る前の話だ。父デヴィッド・シェフと息子ニック・シェフそれぞれの回顧録にもとづき、双方の視点から描かれる本作では、衝撃的な展開が繰り広げられる。何が間違っていたのか、その原因を必死に探し求める父親。そのいっぽうで深く傷つき、絶望に打ちひしがれる息子ニックをティモシーは熱演した。繰り返される依存症の回復と再発に胸が痛むが、他のドラッグ映画とは違い、『ビューティフル・ボーイ』は陳腐で説教じみた答えを出してはいない。本作は父と息子の関係、そして彼らの世界を打ち砕いた依存症を説得力をもって描いている。

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ティモシーはニックのあらゆる感情の機微をとらえている。クスリ漬けになり、サンフランシスコのカフェで父親と会ったニックが、結果として金をせびることになるシーンから、シラフに戻り、回復は長続きしないとわかっていながら帰宅する打ちひしがれた表情までを見事に演じてみせた。涙なしには観られない悲痛な本作は、早くもアカデミー賞受賞が期待される。ポスト〈#MeToo〉時代において、ティモシー・シャラメは、私たちが映画業界に望む変化を体現している。センシティブで、正直で、思慮深く、礼儀正しく、お調子者で、自分をよくわかっているティモシー。自身の女性的な面を理解し、よく笑うティモシー。

魅力的なルックスで男女問わず愛される彼は、まさしく現代のティーンの憧れだ。彼のような人物は、ここ数十年、スクリーンには登場していなかった。ジェームズ・ディーン、リバー・フェニックス、レオナルド・ディカプリオと同じ系譜に連なる22歳のニューヨーカー。プレミアにはファンが殺到し、ネットでストーカー被害に遭い、ゴシップ誌のコラムニストに嗅ぎ回られ、パパラッチに追いかけられる。ネットユーザーも彼に夢中だ。〈#timotheechalametdoingthings(〇〇をするティモシー・シャラメ)〉から〈#timotheechalamethair(ティモシー・シャラメの髪型)〉まで、彼の一挙手一投足を記録するハッシュタグも存在する。今年の夏には、Instagramアカウント@chalametinartが、ミケランジェロのダビデ像やボッティチェリの〈ヴィーナスの誕生〉など歴代の芸術作品にティモシーを合成したことで話題を集め、ティモシー自身が最高傑作であることを証明した。

演技に真摯に向き合いながらも、遊び心たっぷりに役を演じるティモシー。私生活の彼は、私たちと同じようにミーハーらしい。YouTubeで数百万回再生されたティモシーのラガーディア高校時代のラップビデオに私たちが夢中になっているのに負けないくらい、ティモシーもカーディ・B、キッド・カディ、フランク・オーシャンをべた褒めしている。

今月、ロンドンで行われた『ビューティフル・ボーイ』のプレミアに、ティモシーはAlexander McQueenのサラ・バートンがデザインした、手描きの花模様のスーツで登場した。この装いは少なからずハリー・スタイルズを連想させ、ネット上の話題を席巻した。かの俳優とポップスターが比較されたのは、実はこれが初めてではない。ティモシーとハリーのまだ見ぬ友情は、インターネットで待ち望まれていた。ネット上には、ふたりにまつわるTumblrアカウントを始め、モンタージュ映像、ミーム、ファンフィクションまで存在する。今年初め、彼らがInstagramで互いをフォローしたとき、世界中のティーンエイジャーが色めき立った。ふたりは共にセンシティブで、思慮深く、クリエイティブで、ありのままの自分を恐れない、新たな男らしさを提示している(彼らが実際に対面したことがないなんて信じられない)。その〈繊細さの受容〉こそが、ティモシーをこの世代でもっとも重要かつ引く手数多の人気俳優の座に押し上げたのだ。

来年公開のNetflix映画『The King(原題)』では、ヘンリー5世を演じるティモシーの見事な筋肉美が披露される予定だ。さらに、グレタ・ガーウィグ監督による名だたるスターが集結した『若草物語』の実写化作品、SF小説『デューン 砂の惑星』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によるリブート作品への出演も決まっており、『君の名前で僕を呼んで』続編の噂もある。しかし、その前にティモシーにとても大切な電話がかかってきた。

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ハリー・スタイルズ(以下 H):えっと…シャラメさん…?

ティモシー・シャラメ(以下 T):スタイルズさん…? えっと、こうやって電話越しに会えてうれしいです。どうもありがとう。

H: こちらこそありがとう。今朝『Beautiful Boy』を観たよ。最高だった。

T:わざわざ時間を割いて観てくれてありがとう。すごくうれしいよ。

H:最初の質問はデヴィッド・ボウイの言葉について。「クリエイティビティとは歩いて海に入っていくようなもの。足がつかないところまで進むと少し怖くなる。最高の作品はそこで生まれる」。ボウイはこういったけど、彼に同意する?

T:もちろんだよ。こんな言葉を思い出した。「もし誰かがアーティストにあなたは勇敢だ、といったら、それは『あなたはクレイジーだ』って意味だ」って。演技中、骨に電気が流れた感じがすることがある。そんなとき、今自分は足がつかない場所にいる、抑えがきかない状態なんだと思うんだ。

H:いつも安全な場所にいたら、すぐに飽きちゃうよね。時には全部壊してもう一度最初から始めることも大事だと思う。

T:あえてめちゃくちゃにしてみたり、リスクを冒すことも大事だよね。映画に出演してわかったんだけど、シーンの撮影が失敗するとセットで笑いが起きるんだ。そうするとみんなリラックスして次のテイクに臨める。自分を守ったり頭のなかで迷うよりも、そのほうが良いよね。僕にとって最高の教師は、いつも〈経験〉なんだ。

H:『Beautiful Boy』でのキャラクターはかなり強烈だったけど、君はカットがかかってもキャラクターを抜けられないタイプ? それとも撮影中とそれ以外で切り替えられる?

T:『Beautiful Boy』で演じた役は、予想以上に長く僕のなかに残ってた。こういう役で、特に追い詰められた若い俳優が陥りがちなのは、そのシリアスな面ばかりに集中してしまうことだと思う。僕はできるだけ自分を追い詰めたくなかった。それが良い役作りにつながると思ったんだ。撮影最終日の夜、歩いて家に帰ったんだけど、すごく不思議な気分だった。僕はニックやデヴィッドの人生を実際に体験したわけじゃないけど、それでも影響されたし、疲れ切ってたし、少しだけ落ちこんでた。この映画は贖罪や希望を描いているから、ダウナー系の作品じゃない。でも腹にパンチされたみたいな衝撃はあったよ。

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H:依存症という病気に、すごくたくさんの人が苦しんでいる。僕らはみんなそれを知ってるのに、いまだに恥とされたり隠されてるのはなぜだと思う?

T:僕は別に専門家じゃないけど、そうやって考えるほうが簡単だからだと思う。依存症に直面したとき、自分自身や家族や大切な人には関係ないと考えるほうが楽だから。でも実際は、君のいうとおり、依存症は誰だってなる可能性がある病気だ。人種も階級もジェンダーも関係ない。僕たちと同い年くらいの若者が大勢苦しんでる、ありふれた病気なんだ。『Beautiful Boy』のすばらしいところは、ニックが依存症になった理由がそこまで詳しく明かされないことだと思う。依存症になるのはパーティでバカをやってたからだ、とかそういうきっかけがあると考えるほうが楽なんだよ。でもニックもいってたように、それは巨大なブラックホールとか、地獄のような場所に近いものなんだ。

H:初めて完成した映画を観たとき、何か驚いたことはあった?

T:実在する人に基づく作品だったから、これまでのどんな作品よりも不安は大きかった。プレッシャーも感じたし、初めて観たときはちょっとそわそわしたよ。

H:僕は映画でもミュージックビデオでも、いつも友だちに対する秘密のメッセージを忍ばせておくんだ。例えば、何かに誰かの名前を書くとか、友だちの子どもがつくってくれたネックレスを着けるとか。君は映画のなかで、誰かに対して秘密のメッセージを込めることはある?

T:僕はなんでも肌で感じるタイプの俳優なんだ。吸収したものを頭で理解したら、実際に手を伸ばしてみる。ちょっとした思い出の品とか場所ならあるよ。特に『君の名前で僕を呼んで』はヴィラで撮影したから、人目につかない隅っことか隙間がたくさんあって、そこにいると安心した。役には少しだけ自分自身を反映するし、撮影が終わったあとは役から少しだけ何かを持ち帰るんだ。

H:『君の名前で僕を呼んで』の脚本を読んだとき、「このシーンは絶対やりたい」と思ったシーンはあった?

T:戦争の記念碑のそばで、エリオがオリバーに自分の気持ちを打ち明けるシーンかな。原作は登場人物の心情をリアルに描写していて、洗練されていて、完成度も高かったから、このシーンが作品の成功を決めるバロメーターになる気がしたんだ。このシーンの撮影日、ルカ・グァダニーノ監督はどんなふうに撮るか決めかねていて、ワンテイク、ワイドショットで撮るというアイデアを出したのはアーミー・ハマーだったんだ。そのおかげで、いわゆるハリウッド的な気恥ずかしさはなくなった。音声オフで観たら、告白シーンとはわからないよね。

H:そういう意味では、すごくリアルで現実的だったな。

T:僕もそう思う。あまり大げさにしすぎると、相手を怖がらせるかもしれないしね。

H:続編の噂もあるけど、すごく人気の出た作品の続きをつくることに不安はある?

T:そもそも、原作のファンが映画館で観てくれるといいな、くらいの控えめな希望をもちながらつくってたくらいだから。続編もぜひやりたいし、今からワクワクしてるよ。

H:モモが食べられなくなったりしてない?

T:(笑)まあ食べられないことはないけど、どうしても頭に浮かんじゃうよね…。

H:僕も大変だったよ…。

T:(笑)両親といっしょに観るのに、あんなに気まずいシーンはないよね。お父さんがかわいそうだったな…。

H:お父さんもやったことあると思うよ。家族とは仲が良い?

T:良いよ。君もそう?

H:うん。両親とツアーを回ることもある。いっしょにいられるのは良いことだよね。ここ2~3年はめちゃくちゃ忙しかったと思うけど、君がいつもの君でいるために、ご両親はどんなふうに支えてくれた?

T:両親からもらったいちばん大切なものは、愛とサポート。僕もできるだけふたりに返したいと思ってる。陳腐に聞こえるかもしれないけど、本当のことなんだ。10代後半から20代前半のある時点で突然、両親も人間なんだ、って気づく瞬間がある。彼らから何も教えられなかった、っていう意味じゃない。実際、僕はふたりからたくさんのことを教わった。でも、ある程度の年齢になると、自分で自分の人生をコントロールするようになるからね。母は『Beautiful Boy』のロサンゼルス・プレミアで父と撮った写真を送ってくれた。ふたりとも誇らしげに顔を輝かせていて、すごく心を揺さぶられたよ。ものすごく感動した。

H:自分のいる状況を見渡してみて、改めてすごいなって実感したことはある? 僕は日記をつけているんだけど、曲を書くときに役立ってる。ちょっと立ち止まって、起こった出来事を箇条書きにしてるだけなんだけど。

T:僕も日記つけてるよ。あと携帯のノートアプリに思ったことを書いたり。感謝すること、今自分がいる場所を正しく認識することって僕にとってはすごく大事で。でもそれも時間がないとできないよね。日記を書いたり、感謝を抱くにも充分な時間がないと。向こう1年半の予定が埋まってて、今は『若草物語』と『デューン』の撮影中だけど、それら全ての仕事に感謝できる時間が取れればいいなと思ってる。健康な身体で寝起きできることにいつも安心するんだ。常に、何らかの感謝の念を抱いているよ。ショービジネス界で長く活動を続けてきた君みたいなセレブが、そういう客観性をもっていたり、自分の立つ場所から一歩下がって俯瞰的に見つめたり、日記を書くことができてるってすばらしいね。時間をかけて自分を見つめるのが大事だよね。

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H:何かが上手くいくと、いつも思考は「さて次はどうしよう?」ってほうに向かいがちじゃない? 全てが瞬く間に過ぎていくから、立ち止まって「いやー、ほんと最高だったな」って感慨にふける時間すらなかったりして。僕はツアーが終わったばかりなんだけど、一歩引いたところから想い出を見つめて、夢みたいだった、自分のやってる仕事って最高だな、って思えるのって良いよね。

T:だんだん、そういうふうに客観的に見られるようになるの? それとも、そこに想いを馳せるため、充分に時間を設けるようにしてる?

H:自然とだな。でも特に運転中が多いかも。何か音楽を聴いていて、例えば12歳の頃の自分を思い浮かべて、「ああ、12歳の頃の自分に今の僕の姿を見せたいなあ」って。そういう時間って大事だと思うんだ。そうじゃなければ、このすばらしい人生を当たり前だと思ってしまう。それってめちゃくちゃ危険だよ。

T:僕もそれは怖い。僕は、良いキャリアの築きかたがまだわからなくて、だからこそ、ニューヨークで生まれたことを幸運だと感じるんだ。なるべくニューヨークで過ごすようにしてるし。キッド・カディがすごいなって思うのは、彼がオハイオ州クリーブランド出身だってこと。ロサンゼルスとかニューヨークとか、ショービジネスの中心地以外の場所から出てきて自分のキャリアを築き上げる人たちには尊敬の念を抱いてる。信じられないくらい高い山に登るみたいだよ。

H:スクリーンに映る君は自信に満ちあふれた俳優だけど、テレビ番組ではめちゃくちゃ緊張してるなって思うときがあるよ。自分自身でいるよりも、誰かを演じているほうが楽だったりする?

T:良い質問だな。公共の場、つまり社会的な場、あるいは生活全般において、若者にとっての毒は虚栄心だと思うんだ。そのせいで僕もトーク番組で緊張しちゃうんじゃないかな。僕はそういうの慣れてないから、オーディエンスの目線で自分を見つめるんだ。それで、無名の若者が真面目に映画についてしゃべっているのを観て、あっけにとられている様子を想像する。

H:今のこの時代において、政治的であらねば、というプレッシャーは感じる?

T:プレッシャーとは思わないな。それよりも、責任だと感じてる。このことについて、スティーヴ・カレルとも話をしたんだけど、これまでの世代は、全て上手くいってるし、右肩上がりだしで、現状に満足しきっていた。でも僕らの世代はもっと自分から主体的に動いている。それは良いことだよね。

H:今の時代は、世界で起きていることを無視することができない時代。社会はかつてないほどに対立している。だから、自分が正しいと考えることのために立ち上がるのが大事だよね。僕としては、僕のつくる音楽や僕自身の活動で自分の考えを伝えられたら良いなって思う。自分の声を届けるすごく強力な方法だよ。これまでは長いこと、みんな「自分の行動ひとつでは何も変わらない」って考えていた。だけど小さな行動から革命は始まる。それこそが真の変化をもたらすって、人びとは気づきつつある。

T:僕らはすごく刺激的な時代を生きてるよね。例えばエマ・ゴンザレス(註:パークランドで起こった銃乱射事件を生き延びたマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校の生徒のひとり)みたいに、声を上げる若者は多い。この先、様々な問題に対処しなければいけないのは僕らの世代だし、今も問題に取り組もうとしているのは僕らの世代だ。去年のゴールデングローブ賞やアカデミー賞授賞式の会場も興味深かった。授賞式って本来お祝いの場だけど、すごく緊張感が漂っていたんだ。多くの人びとが苦しんでいて、多くの人びとが怒りを抱いているから。無視できるような怒りじゃない。正当な怒りだ。

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H:今の時代、活動しようと思えばいろんな方法がとれる。それがSNSのポジティブな面。だけど同時に、ものすごく恐い面もたくさんあるよね。君はSNSについてどう考えてる? 良い面と悪い面と…。

T:2000年代後半、アラブの春がエジプトまで波及したときには、インターネットの良い面や、SNSの可能性が盛んに取り沙汰された。でも、第2次SNSブームみたいになってるここ3~4年は、みんな、自分が聞きたいことしか聞かなかったり、自分の主張を過激化するだけの場になってしまっている。僕の元ルームメイトが、インターネットの開発者たちのインタビューを読んだらしいんだけど、今のインターネットは悪夢みたいなもので、インターネットがもたらす悪い面や虚偽情報を嫌悪している、って彼ら自身もいってたらしい。もっと身近な話になるけど、僕の経験上、SNSは扱いが難しいよ。アーティストとしては、創作するならみんなに見てもらいたい。だけど、誰かからのコメントのせいで、心にダメージを受けることにもなったりする。かつて人びとが映画に熱中していて、その集中力をそぐようなモノがなかった時代をうらやましいとも感じる。パーティでテトリスに夢中になってるなんておかしいよ。

H:僕は前よりも、自分がSNSをやってないときに、幸せだと感じるようになってる。誰かがSNSを「良い感じの人が3人、嫌な人が23人いるホームパーティ」ってたとえてた。そんなパーティ行くわけないよね? 僕はSNSにそういう感情を抱いてる。ログインして、見たい友だちだけ見て、すぐログアウト。

T:自然とそういうふうに?

H:時を経てだんだん気づいたって感じかな。特にキャリアの初期は、できる限りいろいろしようって思うじゃん? でも仕事とプライベートを分けようってなって、自分だけの秘密にしといたほうがいいこともある、誰かとシェアする必要はないこともある、って気づいたんだ。そうしたほうがいろいろと上手くいく。

T:インターネット上のインプット、アウトプットに関する自己認識をもつってことだね。

H:そう。SNSにログインすれば、探してるものが何でも見つかる。それは間違いない。もしネガティブなコメントを探したら、ネガティブなコメントを目にしてしまうんだ。それをわかっていつつも、みんな止めようとしない。まるで自分を拷問してるみたいに。

T:マゾ的だね。

H:僕も、始めた当初はそうだった。でも今はもうしない。どうすれば自分が心地よくいられるか、意識の変化があったんだ。良かったよ。でもSNSを非難しているわけでもない。もちろん良い面はたくさんある。だけど、良い面と悪い面を見極めつつ、自分も成長していくことが大切だよね。

T:結局、昔には戻れないわけだし。こうなってしまったからにはしょうがないよね。ところで『ダンケルク』の撮影はどうだった? 僕も『インターステラー』にちょっと出演したとき、クリストファー・ノーラン監督と仕事ができてすごく感激したよ。大好きな映画監督。

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H:僕も昔からノーラン監督はめちゃくちゃ好きだったんだ。オーディションを受けるときに部屋の奥に監督が座ってたんだけど、もう同じ部屋にいられただけで幸せだって思ってたよ。『ダンケルク』は僕にとって初めての映画出演だったから、何にも比べられない不思議な体験だったな。

T:撮影場所は荒れ果てていて、バカンスとは程遠い感じだったね。

H:ほんとそれ。ビーチで撮影するって聞いたときは、まったく違う光景を想像してたのに! でも自分ではない誰かを演じるのはすごく楽しかった。自分の安全地帯から遠く離れるのも嫌じゃない。セットのなかで、自分が何をしているのかもわからない男の子を演じるのは楽しかった。本当に。

T:他の役を演じる君も観たいよ。僕にいわれても、って感じかもしれないけど、ほんと、『ダンケルク』での君の演技はすばらしかった。

H:ありがとう。

T:すばらしい映画だった。観ながら、「ハリーが、全部の映画の現場が第二次世界大戦の船だと思わないといいな…」って願ってたよ!

H:次にどんな映画に出るとしても、『ダンケルク』と比べたら朝飯前って感じになると思う、ってみんなにいわれる。でも撮影はすごく楽しかった。今の世界を鑑みたとき、俳優として、映画で新しいかたちの男性性を表現する責任がある、って感じる? 昔と今じゃ、男性性の定義もかなり違うと思うけど…

T:いや、さっき僕も似たような質問を君にしようとしてて、でも、そういう質問をすることで僕なら男性性を変えられる、みたいになっちゃうのもアレだな、って不安になってたんだ。でも君が質問してくれたから、はっきりと「もちろん」って答えられるよ。今回、君とこうやって話ができてうれしいのは、僕らの世代が尊敬する人たちを、はっきりと挙げられることだな。だって、これまで明言されてこなかったじゃない? 例えば、もしかしたら読者のみなさんにはびっくりされるかもしれないけど、僕はリル・Bからものすごく影響を受けてる。だって彼は、ミュージシャンとして男性性の定義を更新したと思うんだ。自分が演じている役が何らかのかたちで変化に貢献しているって思うとすごくうれしい。何というか…。僕のいいたいことを、僕の表現なんかよりももっとスマートに書き表している人がきっといると思うんだけど、僕たちって、どんな自分にだってなっていいと思うんだ。男性であるための決まりがあるわけじゃない。ジーンズのサイズも筋肉量も決まってない。ふるまいとか眉毛の角度とか、これまでの男性らしさを崩壊させていようが、ドラッグを使っていようがいまいが関係ない。それってワクワクするよ。勇敢なる新世界だ。それはSNSのおかげかもしれないし、あるいは原因なんて誰にもわからないけど、僕らの世代が新しい方法で物事に取り組んでいるのってすごく刺激的だと思う。君はどう?

H:僕自身、男性による男性のための世界で育ってきたわけじゃないんだ。母親と姉と暮らしてて。でもここ2年で、自分自身にもっと満足できるようになったと思う。傷つきやすくたって、女性らしさがあったって、逆にそこに男性性があると思うし、それに安心する。大人になったって、男らしさとは何か、なんてわかるわけじゃない。男ってこういうものだって思い込みがありつつ、成長して、世界のいろんなことを経験して、自分でいることに心地よさを感じるようになっていく。今は昔よりも、様々なものに存在する男性性を大切にできる。音楽、文学、友人との会話、そしてオープンでいることを通して感じたことなんだけど、自分にいちばん自信がもてるのって、自分が繊細でもいいんだって思えるときなんだよね。そう思おうと努力してるよ。

T:みんなを触発する、すばらしい考えかただと思うな。結局、カオスのなかで心地よさを感じ、狂気のなかでものづくりをするってことだよね。繊細であることってハイだよね。本当にそう思うよ。それはアートでも達成できるけれど、誰かと親密な関係性を築くことで達成できるものでもある。繊細さっていうものを獲得できたなら最高だよね。僕らがこういうふうに対話をすることで、繊細であることは弱いという意味でも社会的障壁でもない、と男女問わず誰かが気づくきっかけに少しでもなれればって願ってるよ。繊細であることは、クレイジーというわけでも、感情的すぎるってわけでもない。ただ人間であるってことなんだよね。それは君の音楽が伝えていることだと思うし、そして僕の映画も同じことを伝えられたらいいな。人間っていうのは複雑だ。否応なしに、いろいろな感情を経験することになる。みんな同じじゃないし。

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H:はっきりと線を引ける話じゃないよね…。さて、あともう少し聞かせてほしいんだけど、まずは目まぐるしかったであろうこの2~3年について、どういう気持ちを抱いてる? 楽しんでる?

T:本当、感謝しかないね。同世代たちが世界を盛り上げている様子を見るにつけ、すごく刺激を受けるんだ。こういうこと、父親によく話してはからかわれるよ。昔の僕はこんな話全然しなかったから。3年前、SNSが人びとの集中力の持続時間に影響を及ぼしているおかげで、もう誰もじっと座っていることなんてできない時代だから、アートや映画は過去の遺物だ、っていう話を耳にしてすごく心配だったんだ。今はいよいよやばいなって気がしてる。今、僕はどうやら出演作品を選ぶことができる立場にあって、ちょうどボストンで、グレタ・ガーウィグ、シアーシャ・ローナン、エマ・ワトソンたちと『若草物語』を撮ってるとこなんだけど、こんな伝説的な撮影現場に自分が立ち会えているなんてほんと夢みたい。君がデビューして数年は、休みあった? それともやっぱりかなり忙しかった?

H:めちゃくちゃ忙しかったな。いったん立ち止まって内省できるようになったのって、ほんとここ2年くらいだよ。でも全てを処理する時期がもててよかった。今は、次にどんな仕事ができるのかすごくワクワクしてる。君は未来にワクワクしてる? あ、自分自身の未来の話ね、人類の未来とかそういう話じゃなくて。

T:わかってるよ、むしろゴメン、視野の狭い人間で。

H:君は今、出演作品を選べる立場。すごいよね。君はもう、誰もが出演映画を待ち望んだり、君のつくった音楽が聴きたいと思ったり、最終的に「次は何をするんだろう?」と常にみんなをワクワクさせるスターになった。そんな今、何か不安なことはある?

T:正しい選択をしないとな、って思う。僕らの年代に共通する不安ってあるよね。15年後とかに、また君とこうやって対談できたらなと思う。これまでずっと、すばらしい映画監督と仕事をしたくてやってきた。今はグレタ・ガーウィグと仕事をしてる。あと詳細はいえないんだけど、僕が大好きな監督ともいろいろ進めてる。みんな大好きなアートハウス系の米国人監督だよ。そしてドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『デューン』。『ダンケルク』とか『ダークナイト』『インセプション』みたいな大作に出るっていうのも夢だけど。そんなとこだよ、ハリー。もちろん、恐れもある。これまでもあった。でもその恐れは作品とか自分の選択についての恐れであって、家賃払えるかな…、とかそういう類いの恐れじゃないからよかったな、って思う。そこはすごく感謝してるよ。君ともいつかいっしょに映画に出たいな。君のこれからの予定は?

H:今はセカンドアルバムを制作中で、他にはいろんなものを読んだり観たりしてるよ。『ダンケルク』で役をもらったとき、ちょうどファーストアルバムの制作を始めたばかりで、5ヶ月間作業がストップしちゃったんだ。そういうことはよくあるから、まだ先のことはわからない。このわからない状況を楽しんでるかな。

T:僕が今までに会ったミュージシャンもそんな感じだった。決まった日時にどこかに行かなきゃいけない俳優ほど、スケジュールが細かく決まってないよね。例えば今だって、君がいる場所は夜中の3時だったりしてもいいわけで。ミュージシャンは自分の裁量で行動してる気がする。

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H:グループで活動してたときは2年先のスケジュールまで決まってた。今はひとりでアルバムをつくっていて、完成まではずっとこれに集中できるってわかってるから楽しいよ。仕事のしかたが変わったんだ。

T:ソロアルバムをつくるクリエイティブなプロセスは、誰かと協力して曲をつくるのと全く違うんだろうね。

H:そうだね。活動を始めた頃は、自分が何をしてるのかあまりわかっていなかった。だから曲を書けるだけ書いて、いろんな人と仕事をして、できるだけ多くのことを学ぼうとした。良いものが書けるまで、最低なものばかり生み出してたけどね。あと何個か質問。もしこの先の人生で、曲、映画、本、話ができる人、それぞれひとつしか選べないとしたら何を選ぶ?

T:オーケー、曲、映画、本、人、ひとつずつね。ちょうどそれこないだメモしたばっかりなんだ。ノートアプリに残してる。まず曲は、キッド・カディの「Rain」。映画は『パンチドランク・ラブ』。本は…フェルナンド・ペソアの『不安の書』。ちょうど今読んでるんだ。あと人…。これは秘密にしておこうかな。僕だけの秘密で。もちろん頭のなかには浮かんでるんだけどね。君は? 逆に質問してみてもいい? 大丈夫?

H:もちろん大丈夫だよ。僕は、曲ならヴァン・モリソンの「Madame George」。映画は『グッドフェローズ』。本は…2冊でもいい? 村上春樹の『ノルウェイの森』かロブ・シェフィールドの『ラブ・イズ・ア・ミックステープ』。まだ読んでないならオススメだよ。すごく美しい物語だから。

T:で、人は?

H:うーん…。君と同じく、秘密にしておくよ。

T:わかった、確かにフェアだ!

H:フェアな取引でしょ?

T:そうだね、ごめんごめん。

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H:じゃあ、一問一答形式でどんどん行くよ。で、そのあと大事な最後の質問をさせて。

T:オーケー。

H:ではまず、カラオケの十八番は?

T:NIRVANAの「Heart-Shaped Box」。でも知らない人たちの前では絶対歌わないようにしてる。

H:ニューヨーク派? ロサンゼルス派?

T:完全にニューヨーク一択。ニューヨークに着いたら地面にキスする。

H:サッカー派? バスケ派?

T:うわ…、決められない!

H:好きなテレビ番組は?

T:『ザ・オフィス』。

H:コービー派? レブロン派? これは難しい質問かも…。

T:うーん…。レブロンは僕ら世代を代表するアスリートだし、コービーはものすごい才能の持ち主だし…。レブロンがマイアミにいた頃はすごく好きで、クリーブランドに戻ってからもまた好きになった。今はほんとただのファンって感じ。レイカーズのジャージ買おうとしてるくらい。

H:なるほど。寝るときは何着てる?

T:何も。

H:ジェイ・Z派? ビヨンセ派?

T:えー、選べないよ! ふたりとも最高だから。僕はジェイベイ派(JayBay:ふたりをまとめて呼ぶときの呼称)。

H:最後に送ったメッセージは?

T:ちょっと待ってね…[と電話を見る]。いくつか返信しないといけないんだよな。僕が最後に受け取ったメッセージはお父さんから、『Beautiful Boy』について。オープニングがいいねって。あと『ヴェノム』の興行成績のリンクが送られてきてるな。お父さん絶対『ヴェノム』なんて観ないのに。何で僕に送ってきたんだろ?

H:良くないとわかっててもやりたくなってしまうことは?

T:『リック・アンド・モーティ』を観ることかな? でも良くないってことはないか。みんな好きだし。

H:『ビッグマウス』って観たことある?

T:いや、ない! 観たほうがいい?

H:うん、Netflixにあるよ。観てみて。

T:わかった。

H:カーディ・B派? ニッキー・ミナージュ派?

T:えー! 実は、ニッキーって僕が通ってた高校に在籍してたんだ。カーディはレジェンドだし、ふたりとも好きってことでいいんじゃない? あのふたり、ケンカ止めてくれるといいんだけどね。あれめちゃくちゃシュールだったよね。まあ、ニッキーはもう圧倒的な存在で、カーディはシーンを盛り上げてるってことで。君は?

H:僕は質問者だから。

T:ずるい!

H:幸せになれる場所は?

T:幸せな気持ちになれるのは、ニューヨークの夏の日だな。

H:いいね。では最後の質問。人生の意味とは?

T:えー? うーんと…。遠い昔から人間は地球に暮らしてきただけだから、とにかく生きること。生きとし生けるものを生かすこと。深く、オープンに愛すること。真の賢者は自分が無知であると知っているけど、理解を深めるのを止めないこと。

H:すばらしい。楽しかったよ。本当にありがとう。

T:こちらこそ楽しかった。インタビューしてくれてありがとう!

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Credits


Interview Harry Styles
Photography Mario Sorrenti
Fashion director Alastair McKimm
Hair Duffy at Streeters
Grooming Caoilfhionn Gifford using Tata Harper Skincare
Lighting technician Lars Beaulieu
Photography assistance Kotaro Kawashima
Digital technician Chad Meyer
Styling assistance Maggie Foster, Madison Matusicha and Abby Adler
Hair assistance Lukas Tralmer
Production Katie Fash and Steve Sutton
Casting director Samuel Ellis Scheinman for DMCASTING

This article originally appeared on i-D UK.