ハーリー・ウィアーについて知っておくべき10のこと

超現実的かつ親密なポートレイト作品で知られる写真家ハーリー・ウィアー。2018年の初春、彼女はi-D Japanのカバー撮影で3度目の来日を果たした。いま最も注目されている新鋭ファッション・フォトグラファーに、今回の日本滞在やインスピレーション源、最近オススメの映画・音楽を訊いた。

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03 April 2018, 7:30am

1:Harleyの発音は「ハーリー」
これまで日本のファッション・写真専門誌およびウェブ媒体では、Harley Weirを「ハーレー・ウィアー」と表記してきた。2018年3月現在、その率は100%。最初に紹介した媒体が、同じ綴りであるハーレーダビッドソン(Harley-Davidson)から「ハーレー」を採用し、それ以降はBがAの、CがBの表記にならうといった具合に拡散・流布していったものだと思われるが、ここで大事な訂正。Harleyは「ハーリー」だ。音として「リー」が近いというばかりでなく、これはHarley Weir本人の望みでもある。i-D Japanの撮影に際して来日していた彼女が、ことあるごとに「ハーレーじゃなくて、ハーリー!」と訂正していた。とあらば、本人の意向を尊重しなくては。もちろんすべての媒体での表記を統一しなくてもいいのだけど、わざわざハーレーダビッドソンの二の舞を踏む必要もないのだから。

2:寝不足のワケは怪奇現象
インタビューの当日、私たちは新宿にあるホテルのカフェでハーリーを待っていた。しかし、予定時間になっても彼女は来ない。予定の時間から30分ほど経ったころ、ようやくハーリーが姿を現した。発色の良いオレンジのタートルネックにジーンズといったシンプルな装いだ。メニューからお茶を選んでいる彼女に、昨日はよく寝れたか尋ねると予想外の答えが。「日本に来てからずっと、寝るときに金縛りにあってて。それから私が別の部屋にいるのに、トイレのふたが勝手に開いたり閉じたり! だからすごく疲れてます」。そう話す彼女の口調は少し興奮ぎみで、怖がるというよりむしろ連日の怪奇を楽しんでいるかのようだった。

3:最近の映画で最も好きなのは『君の名前で僕を呼んで』
「最初に夢中になった映画は『レオン』。それからいろんな映画を好きになっていきました。最近だと『君の名前で僕を呼んで』が一番好き。私にとって特別な映画で、親しみを感じました。それにあれは夏の恋物語でしょ、サマーロマンスはいつでも最高だから」

4:最近繰り返し聴いているのは、Anikaの「I Go To Sleep」
スタジオでの作業に音楽は欠かせない。ハーリーに作業中によく聴いている曲を訊ねると、ちょっと待ってねと言いながらiPhoneを取り出し、ずらりと曲が並ぶ自作のプレイリストからお気に入りの一曲を探しはじめた。好きな曲がたくさんあると悩みながらも選んでくれたのは、Anikaの「I Go To Sleep」。「作業するときはいつも音楽を聴いています。これは最新の曲じゃないけど、このあいだ見つけてからはよく聴いてますね」。ちなみに彼女のスタジオは凍えるくらい寒いようで、「スタジオで作業するときは、たくさんの服を重ね着してから行くようにしてる」とのこと。

5:インスピレーションは人生の端々から
そんな彼女にインスピレーションを求めてどこにいくのか聞いてみた。「ベッドって言おうとしたけど、それは多分いま疲れてるからね(笑)」。それから少し考えてからこう続ける。「インスピレーションは人生のあらゆる場面から得ています。煌めく瞬間や素晴らしい人との出会い、それが肝です。旅もインスピレーショナルですね。旅先で見たものを持ち帰って、写真撮影にフィードバックさせるんです」。Harley Weir’s Five Womenでは5カ国を旅しながら、各地で出会った女性アーティストたちとコラボレーションをした彼女らしい答えだ。

6:修行時代は仕事だけに集中していた
「今やっていることを続けるということに尽きると思う。それに専念してください」。アーティストを志す若い世代へのアドバイスを訊くと、ハーリーはそう答えた。「3、4年のあいだ、私には人生と呼べるようなものがありませんでした。そのあいだは両親と暮らし、仕事ばかりしていました。パーティや楽しみは一切なかった。自分のやりたいことだけに集中していたんです。すべての人がそうしなければならないわけではありません。でも私の場合はそうする必要があったので。やりたいことに専念し、それを好きでいてください。たいていのことは好きでいればうまくいくから」

6:イラン料理が得意
最近家を買ったばかりのハーリーは、友達を自宅に呼んでよくホームパーティを開いているという。「床に青いブランケットを敷いて、みんなで座って食べてます。料理は好きなのでいつも作ってます」。得意な料理はイラン料理だ。「イランにいたときにつくり方を習ったんです。次は日本の料理を習いたいと思ってる。箸も買ったしね」

7:筆まめ
普段は買い物をしない彼女も、日本では珍しくショッピングを楽しんだようだ。「中野ブロードウェイは最高だった。古い葉書と切手をたくさん買った。すごくかっこいいの。それから古いシールも」。買ったものの中には沢田研二のプロマイドや初期のビックリマンシールも混じっている。インタビューを終えるとハーリーはその場で、大きさも色もまちまちの封筒に入った家族や友人宛ての手紙をそれらのシールで飾りはじめた。彼女の慈愛とシュルレアルな感性を同時に感じる瞬間だった。

8:壁に夢中
ハーリーが日本に来るのは今回が3回目。これまでの滞在は仕事づくめでオフがなかった。それもあってか、今回はゆっくり観光をしたかったようだ。予定の滞在を2日延長して、京都へも足を伸ばしたという。日本で一番楽しかったことを訊くと、「ひとつに絞れないけど、強いて言うなら人を見ること」という答えが返ってきた。「街を歩きながら人や変わったお店を見るんです」。旅先からインスピレーションを得る彼女の眼は新奇を求めてつねに動き回っている。その目線は人や店だけではなく、“壁”へと向かう。ハーリーは大の「壁好き」で、事実2冊目の作品集『Paintings』は、彼女が世界中で撮りためた壁の写真が大半を占めている。取材後に向かった新宿三丁目でも、雨の中、傘を挿すのも忘れて、壁に向かってシャッターを切り続けていた。

9:帰国したら、まず自分とトマトに水をやる
イギリスに帰ったら最初に何するか訊くとハーリーは「寝る」と即答。「あっ、あとトマトに水をあげないと」。彼女は最近、家の庭でトマトを育てはじめて、枯れてないか心配しているのだという。「だから帰って最初にするのはトマトの水やり、それから自分にも栄養をあげる。寝るのはそれからね」

11:おまけ
インタビューをしたのは3月8日、国際女性デーだった。そのことをハーリーに伝えると「え、本当? マーチはどこでやってるの? 行かないと。みんな行くよね?」と興味津々。日本ではまだ広く認知されているとは言いがたいウィメンズ・マーチだが、欧米では様々な立場の女性たちが結束できる機会として大きなムーブメントになっている。「私たち(女性)がマーチをできることを嬉しく思います。私たちにはまだまだやるべきことがある。だけど、そのことにとてもワクワクしています」

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