Versace spring/summer 18. Photography Mitchell Sams.

コカイン、死、自我:ドナテッラ・ヴェルサーチェの歴史に残る名インタビュー

Netflixで『アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺』の配信がはじまり、再び脚光を浴びているVersace。現デザイナーであるドナテッラ・ヴェルサーチェが、実兄ジャンニの死により彼女の肩にのしかかったプレッシャー、その後のドラッグ依存症、Versaceのレガシーを明らかにする。

by Ryan White; translated by Ai Nakayama
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13 June 2019, 8:31am

Versace spring/summer 18. Photography Mitchell Sams.

近年のランウェイにおけるもっとも象徴的なシーンをファッション好きに尋ねれば、身体にぴったりと沿うシアーゴールドのVersaceドレスに身を包み、ナオミ・キャンベル、クラウディア・シファー、カーラ・ブルーニ、シンディ・クロフォード、ヘレナ・クリステンセンという、歴史に名を刻む5人の元祖スーパーモデルが一堂に会した、Versaceの2018年春夏コレクションショーが挙がるだろう。ミラノで行われたこのショーのフィナーレで、彼女たちはVersaceのクリエイティブディレクター、ドナテッラ・ヴェルサーチェと並んでランウェイを闊歩した。このフィナーレ、このコレクションはドナテッラの兄であるジャンニへのオマージュであったが、世界屈指のラグジュアリーブランドの頂点に立つ彼女自身のパワーを示すような力強いショーでもあった。昨今のハイファッションは、アグリーな要素や、ストリートウェアの奇をてらったかたちやシルエットに多大なる影響を受けているが、Versaceはドナテッラの指揮のもと、大胆で、イタリアらしく、最高にセクシーなアイテムを、毅然たる態度で発表し続けている。

しかしVersaceを継いだドナテッラの歩む道は平坦ではなかった。世界で愛されるブランドを受け継ぐことの厳しい現実を、彼女は「SSENSE」のインタビューでマイケル・イバート(Michael Ebert)とスヴェン・マイケルセン(Sven Michaelsen)に打ち明けた。最初の質問は単刀直入に、ジャンニの死について。ドナテッラはこちらが気後れしてしまうほどに率直に答える。「亡くなった兄の姿は、今でも私の脳裏にこびりついてる。銃弾1発が首に、もう1発は顔面に当たってて。身元確認をしたあと、私は車でオーシャンドライブにあるジャンニの別荘に向かった。別荘の中ではマドンナが私を迎えてくれた」。そのあとも彼女の言葉は止まらない。2018年のインタビューから、ドナテッラのアイコニックな発言をピックアップする。

〈ジャンニの遺志で、会社の資産の20%がドナテッラに、30%が兄のサントに、そして当時11歳だったドナテッラの娘、アレグラに50%が相続されたことについて〉

「ジャンニの遺言はめちゃくちゃだった。でもクリエイターなんてみんな頭がおかしいもの。ジャンニは〈私の小さなお姫様〉と呼ぶくらい私の娘を溺愛していた。だからとんでもない額の資産を彼女に譲るっていう遺言を残した。おかげでアレグラは11歳にして新聞の一面を飾った。その年代の子どもには酷な話」

「Versaceというブランドの半分が私の娘に譲渡されることで、私は強制的に、彼女が成人するまで会社の責任を負うことになった。この遺言のトリックがなかったら、私は彼の死後、会社を辞めていたと思う」

〈プレッシャーとコカイン依存症〉

「失敗ばかり繰り返してた。みんなにジャンニを届けようと思って。だけど私はジャンニにはなれなかった。私が新しいことをするたびに、みんなは頭を横に振りながら、「あのひと何してるの?」みたいな反応で。7~8年経って、ようやく私も強くなり、天才の後を継ぐプレッシャーに耐えるすべを学んだ」

「ひとりきりになったときは、まあひとりになることもあまりなかったけど、自分の依存症が相当悪化してると気づいてた。でも、すぐに次の予定がある、という感じだったから。何度か、もう何をすることもできなくなって、子どもたちの前で取り乱した夜もあった。自己嫌悪がどんどん募っていった」

〈彼女のスタイル〉

「金髪はどんどん鮮やかに、化粧はどんどん濃くなっていった。世界中が私をみつめる視線を短剣みたいに感じていたから、身を守るための仮面をつくる必要があった。私が抱えているものを、誰にもみられたくなかった」

「私はVersaceの新しい顔となったわけだけど、ドラッグで正気じゃなくなって、自分にうんざりしているような弱くて不安定なデザイナーの服が欲しいひとなんている? いないでしょう。だから私はもうひとりのドナテッラを創った。冷酷で孤高で、荒々しくて恐ろしいドナテッラを」

〈エルトン・ジョンにリハビリ施設への入所を勧められたときのファッションについて〉

「まさか、誰もエルトンの勧めに従うなんて思ってなかったみたい。でも助言を受けた数分後、私はダイヤモンドを外してイブニングドレスからランニングウェアに着替えた。それから髪をひっつめ、すっぴんで空港へ向かったの」

インタビュアー:ぺたんこ靴で?「まさか! それはあり得ない」

〈シルヴィオ・ベルルスコーニのパーティに参加したこともある兄のサントについて〉

「2年前、会社の経営陣を一新した。サントはいまだに相談役を務めてはくれているけど、今はビジネスの細かい部分には関わってない。今でも、どうして彼がベルルスコーニを支持しているのか私には全然わからない」

〈『アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺』について〉

「ドラマの原作となった本については、2017年に初めて知った。読んだあと、テレビシリーズの制作会社に事実と違う箇所のリストを送った」

〈アナ・ウィンターの「アルマーニは妻の服、ヴェルサーチェは愛人の服」という発言について〉

「この役割分担はなかなか良いと思う。妻より愛人のほうが楽しいでしょ」

〈人生最良のとき〉

「ジャンニは12歳の私をいちばんの友人として、秘密を打ち明けてくれた。レザーのミニスカートをつくって、ディスコに連れて行ってくれたり、ひとりの女性として扱ってくれた。兄のそういうぶっとんだところが好きだったし、いっしょに夜遅くのロックコンサートに行ったときなんかは、女友だちのうらやましげな視線を感じた。それが私の人生最良の時期かな。気分は大人だけど、未来のことなんて考えられないくらいには子どもで。この時間が死ぬまでずっと続くと信じてた」

〈ジャンニのセクシュアリティについて〉

「彼はイタリアにおいて、同性愛を自信をもってオープンにした最初の人間。彼が自分のセクシュアリティについて説明してくれたのは11歳のとき。彼がオープンでいてくれたことに感謝したし、自分も気高くなったような気分になった」

〈自我について〉

「私以上に才能のあるひとを恐れる気持ちはない。むしろ、そういう人材を探してる。だって、自分がつくったチームばかりにこだわっているファッションデザイナーは、いずれ脇役になってしまう。私は25歳のスタッフにだって、「昨日はあなたのアイデアは間違ってると思ったけど、今は自分のアイデアよりもあなたのアイデアのほうが納得できる」って全然いえる」

〈もし今ドナテッラが死んだら、Versaceはどうなる?〉

「とりあえず90%の社員は大喜びするはず」

〈新世代のデザイナーたちへ〉

「保守的な人間ほど、バカみたいに肥大したエゴを持ってる。自分は神だと思っている50歳以下のデザイナーは、物笑いの種でしかない」

〈彼女がヘアスタイルを変える日は来るのか〉

「いいえ。髪型を変えたら自分だってわからなくなっちゃう。カール・ラガーフェルドだって、サングラスがないと自分の顔を識別できないはず。それに、ブロンドヘアはひとつの生きかた。私たちは、獰猛な勇者のように世界と向き合う。私がこれまでのどん底を乗り越えられたのも、ブロンドヘアが力を与えてくれたから」

〈愛犬、オードリーについて〉

「オードリーを〈犬〉って呼ばないでもらっていい? もし今のをオードリーが聞いてたらきっと怒ってたわよ。だって、彼女を名前で呼ばないなんて。オードリーは人間と同じくらいの知性と、確固たるパーソナリティを備えてるんだから」

インタビュアー:どんな性格ですか?「彼女は、私(ドナテッラ)が自分だと思ってる」

〈独身のイメージが強いドナテッラ〉

「今の時代、女性が男性を必要とする理由なんてある? 自分の力、決断力、自立心を証明するためでないことは確か。男が必要なのは、ちょっと恋を愉しみたいときと、肉体的なリラクゼーションのためくらいでしょ」

〈神の御前に立つときには、どんな格好をする?〉

「絶対ハイヒール。神様もみたことないだろうし」

This article originally appeared on i-D UK.