春菊は苦いけど美味い:KEISUKEYOSHIDA 18aw

「久しぶりにダウナーな気持ちです」。思春期特有の「明るいのか暗いのかわからない空気」をブランドテーマに掲げるKEISUKEYOSHIDAの吉田圭佑は今季のトーンについてこう語った。大人になっていく過程に湧き上がる、輪郭をもたない曖昧な感情に、フレッシュな眼差しを向ける。

by Tatsuya Yamaguchi; photos by Shun Komiyama
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21 March 2018, 9:53am

雪の予報だったが、まだ降り始めていない。AFWT3日目の朝、KEISUKEYOSHIDAのショーが始まるのを待っていた。会場には、水が“半分”まで入った5000個以上のグラスがランウェイの中央に陳列され、1970年に27歳の若さでこの世を去った伝説的女性ロックシンガー、ジャニス・ジョプリンの歌声が響き渡っている。

「意識的に“大人”であったり、エレガンスなデザインをしたいと思って」。今季は大きなスポンサードもなく、ある種、「独立」したショーを開催したデザイナーの吉田圭佑はこう話した。「シーズンを積み重ねていくなかで思い至った、成熟していく感覚がスタートライン。もっと大人にならないとな、と」。“大人になること”を一言二言で語ることはできないが、彼が注目したのはその“成熟“の過程にある“空虚感”だという。「感情のまどろみ。あるいは、もやつきや寂しさ」。呼称しようもないエモーションを、抽象的なままコレクションに落とし込むことを意識したのだという。こう続けた。「ファッションは新鮮なものが大事だと思っています。ですから今回は、成熟していくこととそこにある感情にすら、自分自身が新鮮味を感じながらつくりたかった」

——改めて気になって、「成熟」という単語を辞書でひいてみると、「農作物やくだものが、じゅうぶんに実ること」と「ひとのからだや心が、じゅうぶんに成長すること」とあった。

「KEISUKEYOSHIDAのメインコンセプトのひとつは“もがく”こと。大人になろうと思ったり、エレガンスに向き合うことも“もがき”なのです」。ブランドイメージに定着している制服やジャージの要素、スポーティなマテリアルは息を潜めて、高級感のあるシルク、「フューチャリスティックなイメージがある」というナイロンが服地の中心。色彩は、光沢感も相まって、どれも鮮やかだ。さらに彼が抱いた感情的な“まどろみ”は、シルエットにも現れる。互い違いに、あるいは2つの何かが混じり合うように、服の見頃の合わせが交わっている。身体に巻きつくような服地の流れがあったり、力強いショルダーラインに対してヘムに向かってゆるやかに消えていくようなラッフルも“曖昧さ“と”融和“の表現だ。服に貼り付けたような熟した果物のラバープリントは、洗練さというよりは軽やかなノリ的なテンションもある。「ちなみに、葉っぱのモチーフは春菊。苦いですからね(笑)」。たしかに。

「成熟と新鮮さが溶け合う」。果物が熟すまでには多くのプロセスが必要だし、からだはもとより、ひとのこころはそう易々と解読することはできない。ほんのひとつまみだけ、“未成熟であること“への名残惜しさを残しながら、だからこそ見いだすことのできる新鮮味というのがあるのかもしれない。ちなみに、吉田圭佑も1991年1月生まれの、27歳だ。