『ゴシップ・ガール』好きのシカゴ出身のバンドWhitney

シングル『Polly』のビデオをリリースしたばかりのWhitney。そのスウィートなサウンドで人気を急激に拡大している彼らの素顔に迫る。

by Milly McMahon
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01 November 2016, 8:53am

シカゴ出身オルタナティブポップス・バンドWhitneyのアンビエントなハーモニーには、誰にでも覚えのある、無気力にくすぶりながらもがく、若さ溢れる音の世界が広がる。心温まる思い出を歌う明るい言葉に、最初はトボトボと、徐々に加速し、予測できるとはいえ突如として雲が晴れるように壮大な光景を描き出す安定したテンポ感を合わせたその世界観は、60年代的美観と自由、そして実存主義的表現を核に置いたこのバンドのララバイに最も顕著に表れている。Smith Westernersのマックス・カカセック、Unknown Mortal Orchestraのジュリアン・アーリック、楽器担当のジョサイア・マーシャル、ウィル・ミラー、マルコーム・ブラウン、プリント・ショトー、チャールズ・グランダーズが2015年に結成したWhitneyは、またたく間にインディアナ州のインディペンデント系レーベルSecretly Canadianと契約するまでに至った。

カントリーとソウルを入れた賛美歌ともいうべき音楽性を打ち出したマックスとジュリアン。Whitneyという表現の場を得たことで、虚勢をはる必要も、先入観に怖気づく必要もなく、素直な洞察や恐怖心をより明確に描けるようになった。共鳴するコードと、ふたりが織りなす詩の世界を通して、マックスとジュリアンはそれぞれの心にある繊細な感性を存分に表現し、Whitneyのデビューアルバム『Lights Upon The Lake』を作り上げた。シンプルに思えるがよく聴けば卓越したアレンジであることが分かる緻密なオーケストレーションの存在もあり、このアルバムには何物にも束縛されないふんわりとした楽観の世界が広がっている。ジュリアンとマックスのオーラが体現された世界だ。

過去数カ月をツアーバスで暮らし、国外でのコンサートにも挑むなど、旅が続くふたりだが、スウェーデンの音楽フェスティバルWay Out Westに参加するため、ヨーテボリへとやってきた。旅で疲れてはいるが、この新たな経験を通してどんな未来が開けていくのか楽しみで仕方がないといったふたり。まるで90年代のティーン向けロマンチックドラマ番組から飛び出してきたような雰囲気だ。その才能をひけらかすことなく常に控えめな演奏に終始しているにもかかわらず、音楽業界からの需要は高まるばかり——そんな彼らが、心に秘めた情熱についてバックステージで語ってくれた……『ゴシップ・ガール』について……。

「No Woman」をレコーディングした後、完成したトラックを大層気に入ったあなたたちはハイになってその曲をスピーカーフォンでかき鳴らしながらシカゴの街中を練り歩いたそうですね。それから2日間は寝ずにはしゃぎ通したと聞いています。曲をレコーディングするたびにそんな高揚感を感じるのでしょうか?
マックス(以下M):最初にアイデアが頭に浮かんでから1日半ぐらいはハッピーでいられるんだけど、そこからは「実際に形に落とし込むにはどうしたら良いか」を考えなきゃならなくなるね。
ジュリアン(以下J:ハイになるドリンクを飲んで2日間寝ずにいたあの夜、あんなにクレージーになったのは、自分たちがこんなに良いものが作れるんだって初めて実感できたからなんだ。

Whitneyとして音楽が成熟していくにしたがって、そのクオリティやディレクションに変化が生じているように感じますか?
M:色々と話し合ってる現段階では、次のアルバムはもっと夜にしっくりくるものになると感じてるよ。今回のアルバムがこれだけ光を反映した内容になっているから次作はもっと気だるく、でもスキャンダラスな内容になると思う。
J:このプロジェクトはそれほどストレスフルではないけど、音楽を作ること自体は時々ストレスに感じるよ。「これはいい」と思えるアイデアを、当初思い描いていたよりも良いものに仕上げていかなきゃならないからね。自分で作った山を、敢えて一歩下がって全体を見るような作業だから。

自分に課すにはずいぶんなプレッシャーですが、そんなプレッシャーをどのように和らげているのですか?
M:プレッシャーは感じないよ。テンパったりしなかったからこそこのプロジェクトはうまくいったんだ。バンドっていう関係性は、お互いを助け合って最善を尽くすためのものだからね。
J:プレッシャーから解放されるには、マリファナを吸うのが効くね。違う角度から、自分が築いた山を見つめられるようになる。
M:演奏するだけでもかなり解放されるよ。たまに、パソコンの前に座って細かいパートを延々と編集しなきゃならないようなときもある。パソコンの前に座ったままで煮詰まっちゃったり、家のなかをウロウロしてみたりして、どこにも行きつかないように感じることもよくある。そんなときは、地下の練習スペースに行って、好きな曲を演奏するんだ。地下室で、その環境にいるからこそ出てくるものがある。そうすると、ただパソコンの前で頭を掻きむしってたときよりよっぽど良いアイデアが生まれてきたりするんだ。

今後が期待される無名ミュージシャンという位置付けではなく、アーティストとして認められた今をどう受け止めていますか?
J:それについて深く考えたことはないな。元カノの家の近くにあるピザ屋が、俺が行くとタダでピザを出してくれたりするようになったぐらいかな。
M:俺たちがフリーの時間に会うのは友達ぐらいのもので、やつらは俺たちが有名になろうがなんだろうが関係ないみたいだしね。

大勢の観衆が自分たちの歌を一緒に歌ってくれたりすると「これを夢見てきた」と思うでしょうね。
M:ショーでプレイするのはやっぱりいいね。
J:小規模なギグに、小さな頃から自分を知ってるひとが観客としていると難しかったりするよね。
M:そうだな。ブリトニー・スピアーズも言ってたな。「4万人の観客を前にパフォーマンスするほうが、仲の良い友達12人を前にバーでパフォーマンスするよりも簡単」って。

親密な雰囲気のショーのほうが難しいってありますね!現代の音楽業界では、心に響く誠実さとでもいうべきものが男性ソングライターの歌詞に多く見られる傾向にありますが、今回のアルバムの曲ではバンドとしてそうした「感情的に裸の歌詞」を意識して作りましたか?
M:数曲を一緒に書いてみて、そこで初めてお互いに魂をさらけ出せるようになった感じだよね。バンドをWhitneyにすることに決めた時点で、俺たちの頭のなかに変なキャラクターができあがってたんだ。最初の数曲ができあがった時点では、まだ冗談みたいな感じで、ぼんやりとした輪郭の人物になりきって歌詞を書いていたんだけど、あの"出来上がった瞬間にハイになってそれから2晩眠れなくなった"曲ができあがったときには「キャラクターなんか忘れて、バンド名はそのままで、自分たちのリアルな感情を曲にしていこう」ってことになったんだ。

ツアーと恋愛、このふたつを両立することについて聞かせてください。
M:大変だよ。
J:マックスは真剣な付き合いの彼女がいるけど、俺のは終わったよ。
M:でもこの5日間、電話してないから、今頃きっと発狂してるはず。
J:お前と付き合っていて彼女が幸せなわけないだろ。俺は自由じゃないとダメだな。
M:バンドメンバーのほとんどが彼女持ちなんだ。今日、俺たち『きみに読む物語』を観たばっかりだから、変な答えばっかりでごめんね。

なぜ『きみに読む物語』を?
J:俺たちのお気に入り映画だからね!

どんな経緯で『きみに読む物語』を観ることになったのですか?
J:俺が好きで観るのなんてあの映画だけだから。
M:他にはどんな映画があったっけな……『プリンセス・ブライド・ストーリー』も観るつもり。『フォー・ウェディング』も観たいと思ってるんだけどね。ヒュー・グラントが出演してる映画はだいたい俺に響くね。『ノッティングヒルの恋人』は素晴らしかった。『ラブ・アゲイン』は最高。俺たち、一時期『ゴシップ・ガール』にはまったこともあったな。

『ゴシップ・ガール』の最終話、観ました?隠れたライターは誰だったのですか?
J:あれはダン・ハンフリーだったんだよ。あのストーリーにはつじつまが合わない問題がたくさんあった。ライターたちがテンパって、最後の最後で「ダンにしちゃえ!」ってことになったんじゃないかな。ペン・バッジリーはバンドをやってるから、俺は『ゴシップ・ガール』のなかでも応援してる!ペンには会ってみたいな。Whitneyのギグにも来てもらいたい。

バンドメンバー全員で一緒に『ゴシップ・ガール』を観たりしたのですか?
J:うん、一度全部観て、改めてみんなでまた観たぐらいだよ。最初は、テレビ放送されてたとき、俺がまだ高校生だった頃に観たんだ。バンドPretty Recklessのテイラー・モンセンが好きだったな。2011年に同じフェスでプレイする機会があって、そのときにビールを一気飲みしようって迫ってみたんだけど、テイラーは「ビールを飲んでるところをパパラッツィに撮られたりしたら大変なことになるから、それはできないの……でもほんとはショットガン飲みやりたくてしょうがないわ!」って言ってたよ。

Credits


Text Milly Mcmahon
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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