中国ファッションブームのベビーフェイス

中国ファッション界を激震させている上海生まれのデザイナー、エンジェル・チェンにインタビューを行った。

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18 maj 2016, 11:55am

Photography Courtney DeWitt

中国広東省の深圳(シンセン)に生まれ、ロンドンでのトレーニングを経て今や国際的に活躍するデザイナー、エンジェル・チェン(Angel Chen)は、地球に舞い降りてから9,000日間という短期間で実に多くを成し遂げている。17歳で中国を離れ、セントラル・セント・マーチンズでデザインを学んだ後、Vera WangやMarchesaなど、美しいドレスを作り出す名手のもとでインターンとして経験を積んだ。そして2014年、満を持して自らの名前を冠したブランドを立ち上げ、上海ファッションウィークでデビューを飾った。それから2年、彼女の作品はパリやニューヨークのランウェイ、そしてOpening CeremonyやLane Crawfordなど名だたるセレクトショップでも取り上げられるまでに成長している。

エンジェルが作り出す作品は大胆で、その色彩感覚と姿勢はロマンチックなSMの世界と、90年代日本のカルト雑誌『Fruits』、そして彼女が英雄と崇めるジョン・ガリアーノが00年代にDiorで打ち出した世界観が組み合わさったものだ。

他の多くの中国人デザイナー同様、彼女もデザインを通して西洋と東洋が混じり合うスペースを探ることを主なテーマとしている。SwarovskiとLane Crawfordとともに挑んだ最新コラボレーション作品は、中国伝統の薬学からインスピレーションを受けたドレスで、薬でワックス加工を施した紙から作った生地に、刺繍とSwarovskiのクリスタルが鍼治療の点のように散りばめられている。世界各地の文化要素を取り入れることができるその能力にはすでに多くの注目が集まっており、『Forbes』誌は「注目すべき30歳以下の中国人30人」のひとりにエンジェルの名を挙げている。

i-Dは、スキンヘッドの天使に、なぜ2016年が「中国の年」になるのかを聞いた。

現在、中国ファッションが世界的な注目と評価を得ていますが、若手中国人デザイナーにとって良い時代なのでしょうか?
はい、服を買うひとが成熟しましたから。年齢的な意味ではなく、教育の意味でね。近年は、中国本土だけでなく海外の人々も多くのものを見て学ぶ機会に恵まれています。消費者の目は肥えているし、皆が知識を持っています。若者たちの好奇心はとても強くなっているし、デザインとクオリティで他国のブランドに引けを取らない新しい中国のレーベルに、世界が大きな期待を寄せてくれています。私には素晴らしい小売業者が多くついてくれていますし、彼らからも若手デザイナーのニューウェーブに対する強い期待感が感じられます。自分のレーベルを世界的な観点から見ています。

Image via Angel Chen Studio

2014年にCSMを卒業し、あなたはご自身のラインをローンチしたわけですが、あなたはこのブランドを中国発、それともイギリス発のどちらと考えていますか?
どちらでもあります。クリエイティブデザインはロンドンで行ない、生産はすべて中国で行なっていますから。当時はロンドンの学校を卒業して、中国に帰ってと、忙しくしていました。レーベルの立ち上げは急速に進んで、初シーズンのお披露目はニューヨーク、パリ、ロンドンで行ないました。現在、上海を拠点としていますが、ヨーロッパからアメリカまで各国を飛び回っているのが実情です。

ご自身のレーベルを立ち上げるのが夢だったのでしょうか?それとも特定のメゾンやデザイナーのもとで仕事をしたいと考えていましたか?
ガリアーノのもとで働きたいと思っていました。彼は私にとって偉大なインスピレーションです。でもその頃、彼はデザインの世界から去ってしまっていて、私にとってエキサイティングなものが業界に残されていなかったので、自然な流れとして自分のレーベルを立ち上げるということになったのです。

Opening Ceremonyから声が掛かるというのは大きな転機になったのではないかと思います。当時のことを聞かせてください。
あれは去年、私がパリにいたときのことでした。Opening Ceremonyのスタッフは中国にも来てくれたんです。彼らはそれまで数シーズンにわたり上海ファッションウィークを見にきてくれていたんですよ。そこで彼らは、Opening Ceremonyにとっても中国デザイナーたちにとっても良いアイデアを打ち出し、毎月新しいデザイナーの作品を展示していく「The Year of China(中国の年)」と題したプロジェクトを立ち上げたんです。今年は本当に中国の年ですから!

Image via Angel Chen Studio

あなたは選ばれたデザイナーのひとりですね。2シーズンを通して急速な成長が感じられます。
今、中国では若いブランドのブームが巻き起こっていますが、その意識と支援の態勢が整うまでには長い時間がかかりました。一夜にして起こったわけではありません。今ようやく業界で長く維持可能な状況が整った感がありますが、これまで、私のようなレベルにこのようなシステムは用意されていなかったんです。

中国の消費者におけるファッション教育は今ようやく強化され始めたばかりだと、Vogue中国版のアンジェリカ・チュン(Angelica Cheung)は話していますが、いかがでしょうか?
その通りだと思いますし、それは消費者やバイヤーだけの話ではなく、メディアやデザイナー、販売店、製造者、販売代理店といった広い領域で、皆が共通の認識を持つようになってきています。これまでの、駆け引きを中心とした構造じゃなくて、業界全体が皆で一緒に繁栄しているような感覚です。昔、東京で起こったのと同じ集団的な動きが、今中国で起こっているのです。

他のデザイナーたちとは友好関係を築いていますか?ひとつのブランドが評価されると、それは他ブランドたちとっても良いものとデザイナーたちは考えているように見えますが?
はい、皆ととても良い関係を築けています。ロンドンで一緒に学んだ人たちや、一緒に遊んだ人たちとはもちろん親密な関係を築いていますし、販売代理店を通じて出会った他のデザイナーたちとも友好な関係を築いています。皆が支え合っていて、中国はクリエイティブでいるには今が最高の時だと皆が感じていると思います。

@angelchen

Credits


Text and portrait Courtney DeWitt
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.