『チーム・ハリケーン』:アニカ・ベウ監督インタビュー

2017年、デンマークの若者からカルト的な支持を集めたパンクな青春群像劇『チーム・ハリケーン』。この話題作が早くも今週末から東京で上映される。本作の大ファンを公言する映像作家のUMMMI.が行なったアニカ・ベウ監督へのインタビューを独占公開。

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feb 9 2018, 8:20am

「自分に厳しすぎるわ」。エメラルド色のアイシャドウをした金髪のキャラクターがそう繰り返す。「自分に厳しすぎるわ」「自分に厳しすぎるわ」「自分に厳しすぎるわ」「ビッチ!」

『チーム・ハリケーン』の予告篇はこんな調子で始まる。ピカチュウにビンタするピカチュウ、極彩色のボールで満たされたミニプール、燃えるぬいぐるみ、早送りで開花していくサボテンの花、草原で馳ける馬、といったイメージがそれに続く。それらの雑多なイメージをつなぐのは、集まってははしゃぎ、ときに独白しながら涙を流す8人のティーンエイジャーたち。

モンタージュを駆使したこのGIF的予告篇のテンションは、そのまま本篇まで引き継がれている。デンマーク出身のアニカ・ベウ監督による長編デビュー作『チーム・ハリケーン』は、別々の悩みをもつ8人の少女たちのひと夏を描いた群像劇。彼女たちの言動は衝動的で、ときどき支離滅裂だ。そんな直感的で不安定な彼女たちを、ベウは客観することなく、カメラごとその中に入って同じ目線から映し、思春期の移り気な心情にも似たスピード感のある展開でストーリーを語っていく。

この映画の大ファンである映像作家のUMMMI.がアニカ・ベウ監督にメールで行ったインタビューを独占公開。デンマークの気鋭監督が、女の子の集団を撮りたかった理由、映画に投影した悩み、ピカチュウへの愛を語る。

——各国の映画祭で上映された本作。インターネットも含め反応はいかがでしたか?

「好意的な反応がほとんどでしたが、保守的な映画オタクには、インターネット・アート的な要素が “芸術”として受け入れづらくさせているようでした。そういう反応も面白いと思っています」

——舞台はユースセンター(klubben)という設定でしたが、ここには監督の体験談も盛り込まれているのでしょうか? 日本にはこういった施設に該当するものがないので、どういった所かも含めお聞かせください。

「ユースセンターは、放課後から夕方までの子どもたちのたまり場として、デンマークを含むスカンジナビア諸国で普及しました。しかし、子どもがあまり来なくなったため、現在ではその多くが閉館しています。友達にもユースセンターに行っていた子は結構いましたが、私自身はどちらかというと独りでいることが多かったです」

——本作の着想はいつ、どのように得たのでしょうか?

「失ってしまったように感じる、かつて存在した自分の一部を再発見したいと思っていました。そのためにまず、だいぶ前に女友達と撮った古いDVテープを発掘し、それを分析、再編集して短編と予告篇を作りました。自分にとって映画を撮ることは、冒険し、成長する機会だと思っています」

——映像をコラージュする際に、日本のポルノアニメやピカチュウなどを引用していましたが、なぜそれを選んだのですか?

「直感的に選びました。昔からずっと、ピカチュウとピカチュウが象徴するすべてが本当に大好きです。実は昔からピカチュウの小さいフィギュアを持っていて、インスピレーション源として、そして勇気と思いやりを忘れないようにいつも持ち歩いています」

——キャスティングの決め手は?

「決め手はたくさんありますが、ひとつとして、女の子の集団を撮りたいという気持ちがありました。いわゆるチック・フリック(女性観客をターゲットにした映画)の多くは、まず2人の親友がいて、そこに第3の登場人物が加わることによって物語が始まります。そうではなくて、私が若い頃に周りにいたスケーター仲間のような、女の子の大きな集団をテーマにすることで、自分の理想的な世界を描きたいと思いました」

——女の子たちを演出する上で気をつけた点があったら教えてください。

「人、シーン、シチュエーションによってけっこう異なりますが、自分の先入観でシーンやキャラクターを型通りに撮影しないように、彼女たちが必要としているものをかなり敏感に察知できるよう気をつけています」

——この映画は、女の子たちがそれぞれの悩みを吐露していく構成ですが、監督自身も何かコンプレックスなどがあった/あるのであれば、それを教えてください。また、そのコンプレックスは映画を撮ることと関係していますか?

「私の作品には、常に自分の悩みが投影されています。いわば悩みは作品の原動力です。なので映画にでてくる女の子たちの悩みは、私の悩みでもあるのです。この映画には自分が本当に共感できる内容だけを入れました」

——次の作品はどんなものを撮りたいと考えていますか? 今後の予定を教えてください。

「宇宙のように無限な可能性に限界を作ってしまう気がするので、構想が完成に近づくまでは自分のプロジェクトをあまり言語化したくないのですが、今言えるのは、映画を撮る予定があるということです。もしかしたら舞台やドキュメンタリーもつくるかもしれません。それと、CPH:DOX(コペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭)の関連企画として、若い子たちとビデオアートの展示をデンマークの大きな美術館で行う予定です」

2月10日(土)に開催される「トーキョー ノーザンライツ フェスティバル」の『チーム・ハリケーン』日本プレミア上映では、このインタビューのアンカット版を掲載したUMMMI.制作のジンが来場者に配布される。2017年にデンマークのユースを熱狂の渦に包んだ、できたてホヤホヤの話題作を目撃せよ。

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『チーム・ハリケーン』上映スケジュールはこちら
2/10(土)11:30〜 ※ジャパンプレミア UMMMI.によるアフタートーク付
2/13(火)11:30〜
2/16(金)21:10〜