Ryan LOがいざなう自己愛への世界

多国籍に「好きなもの」を集めたRyan LOの2018年秋冬コレクション。チャイナガールやメイド、アニメやシルバニアファミリー、そして草間彌生のかぼちゃも……?

by Steve Salter; photos by Lily Vetch; translated by Aya Takatsu
|
23 February 2018, 10:04am

ルル・ケネディMBEの新人デザイナー育成プログラム、FASHION EASTを通して6年前に自身のブランドを立ち上げてからというもの、ライアン・ローはそのロマンティックな幻想で私たちを魅了してきた。ポップカルチャーと幼少期の憧憬を織り交ぜ、そのインスピレーションを描くローは、アニメ的なスピード感とイギリス流の厳かなスロー感の双方を、不協和音のようなキャンディカラーに落とし込んできた。香港で生まれ育ち、ロンドンを拠点にして活動するイギリス人ハーフのロ──2018年イギリスの市民権を得たいと熱望中──は、自身の経験と歴史上の女性の経験の両方を慈しんでいる。プレゼンテーション兼エキシビション形式に立ち戻った2018年秋冬コレクションは、過去の一度きりの傑作コレクションが、いかに遠く昔から私たちとともに歩んできたかを思い起こさせてくれた。「僕がしたいと思うことをシンプルに表現しただけです」。現実となった彼の理想の世界に囲まれながら、ローはそう語った。「これは完璧な女性、そして僕の矛盾した世界についてなんです。つまりノンフィクションとフィクション、現実と非現実、ハイとローのような」。

ショーノートに「I LOVE ME」と記されている通り、このコレクションは自己愛について。では、ローは何を愛しているのだろうか? そう……(ここで深呼吸)Aラインのプリンセス風フロックにあしらわれた手ざわりの良いニットチュール、綿菓子のようなナイトガウンのレース、銀色の蝶や虹色に織り込まれたジャカード、大きい目マンガのキャラクターとヴィクトリア朝の王族のような袖、それにボウタイのついたブラウスとリトルブラックドレス。全体を通して、自然のものと人工物、手仕事と機械が、魔法の錬金術でひとつになっている。「前シーズンはしたいことをしている自分についてでしたが、今シーズンもそれを継承しています」と、ローは説明した。「あの偉大なミウッチャ・プラダでさえも、アイデアを融合させているのです」。そして、そのアイデアときたら! 中華風パンダメイクをした子がチャイナタウンのぬいぐるみを連れて陽気に闊歩したり(2016年秋冬コレクション参照)、ティーンの子にシルバニアファミリーのお母さん役をさせて幸せな家族を演じたり(2014年春夏コレクション参照)、彼の手にかかると、アイコニックなアイテムに甘さと洗練された雰囲気が同時に加わるのだ。12シーズン目となる今季、Ryan LOファンが何を必要としているか、ローは正確に把握していた。「それはアティチュードです。多国籍で、世代を超えたカルチャーですね」。甘くてドリーミーなものすべてを愛するローはシュガー・ハイ(糖分による興奮状態)になっていて、それは周りにも感染するようだ。

会場はデイヴィッド・シュリグリーが経営するパウダーピンクのギャラリーレストラン、。「ずっとここで何かやってみたいと思っていました」とローは話す。「ぴったりくるプロジェクトを探していたんです」。回顧展「the Hair by Sam McKnight」──このヘアスタイリストはローの長年のコラボレーターでもある──にインスピレーションを受け、イサマヤ・フレンチがペイントしたマネキンや、アフタヌーンティーをいただくモデルたちを配したこの場所は、ローの素晴らしい作品を発表するのにぴったりの空間だった。

すごい!と思える部分はたくさんあったが、その最たるものは草間彌生に着想を得たパンプキンのベレー帽──引き続き帽子職人スティーヴン・ジョーンズとのコラボレーション──で、最新のグリッターキャンディワールドを仕上げるにふさわしかった。かつて考えられていたように、帽子もかぶらないで外に出るなんてありえないことなのだ。レースのオペラグローブにも同じことが言えるだろう。これもまたヴィクトリア時代の身だしなみを想起させるものだ。ローが過去に向ける夢見がちな視線は、常にフィルターを通して美化されている。彼のフィルターを通せば、すべてが魔法にかけられるのだ。

This article originally appeared on i-D UK.