ジョン・ガリアーノにスナップチャットを教えた学生デザイナー:パオリーナ・ルッソ

彼女は、CSMの卒業コレクションで〈ヤングタレント・アワード〉を勝ち取ったばかり。そう、パオリーナ・ルッソは真剣だ。

by George Douglas-Davies; translated by Aya Takatsu
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08 June 2018, 6:13am

先日、5年間の学生生活を終え、卒業コレクション〈I Forgot Home〉に数か月を費やしたのち、パオリーナ・ルッソはセントラル・セント・マーチンズの卒業制作展で、L’Oreal Professionnelのヤングタレントア・ワードを受賞した。100名を超える学生デザイナーがエントリーしたこの競争は、厳しいものだった。グレース・ウェールズ・ボナー、ホ・グン、ジム・チェン=シアン・フー、フラミニア・サクッチといった諸先輩が受賞したこの賞を勝ち取ったことは、彼女のファッション界における将来の成功を予感させるものだといえる。

トロントで育ったパオリーナが、最初にファッション感覚を得たのは、いつも周りにあったスポーツウェアからだった。だから、帽子に編み替えられたスニーカーやローラブレード、強化されたスポーツソックス、アイスホッケーやアメフトの試合で見られるようなヘルメットや防具は、彼女にとって不可欠の要素なのである。彼女のコレクションは、BALENCIAGAが手放してしまったものを拾い上げている。つまり、靴をレギンスのように扱うトレンドに込められた皮肉に似たものが、そのシューズレギンスやシューズハット、シューズ手袋に感じられるのだ。

彼女の、マルチカラーの編み上げボディスーツは、幻覚のように刻一刻と変化し続ける。だがこの独創的なデザインが、コレクションそのものが持つ本質的な魅力を損なうことはない。非常に複雑なディテールと精緻なカッティングによってすべての曲線はあるべき場所にぴったり収まり、どの靴ひもも線からはみ出していない。「消えゆく記憶と、過去への憧憬についてのものなの」と、パオリーナは語る。「コレクションのいたるところに、スポーツのモチーフや影響があるでしょう。子どものころに、ファッションがこうなったらいいのにと夢見ていたのは、こういう感じだったから」

幼少期における親友は、自らの想像力だ。誰もが地球温暖化や北朝鮮など気にも留めず、ただお姫さまや騎士になりたいと思っていた--パオリーナの場合は、それがグウェン・ステファニーだったが。「ドレスアップして、ポップスターみたいな気分を味わうのがずっと好きだった」と彼女は言う。「何かをつくるときはいつでも、それを頭にのせたり、ジュエリーにしたりしてね。服をつくり始めたのは、だからとても自然な成り行きだった」

マーカムの郊外で育つうち、彼女はノー・ダウトのグウェンに夢中になっていった。ヘソ出しトップス以外の格好でいるところを見られたくないというくらいに、その子ども時代はグウェンで埋め尽くされていた。そして今、パオリーナは作品を通して、自身の中にあるポップディーバを呼び覚ましている。「明るい色彩やシルエット、アイコンやロゴを使って、自分の子ども時代や青春を表現しているの。私の作品の中心にあるのは若さだと思う。だって、成長に伴う不確実感や希望って、美しくておもしろいから」

しかし、パオリーナのキャリアは出世の一途をたどっている。2017年Margielaでインターンをして以来、彼女はジョン・ガリアーノを師のひとりと呼べるようになった。「すごく現実離れした時間だった。ジョンにはすごく感謝しているし、彼やMargielaのチームからはたくさんのことを学んだ」。最近ティム・ブランクスと交わした会話の中で、ガリアーノは彼女を自身の2017年春夏コレクションのインスピレーションのひとつだとさえ言っている。彼はパオリーナを「インスタグラム・ベイビー」と呼び、Snapchatの使い方を習ったのだという。「自分自身やその作品にインスピレーションや影響を与えた人から認めてもらえるなんて、とっても素晴らしいことね」と彼女は言う。

Margielaの2017年初夏コレクションのショーに登場したかぎ針編みの作品は“パオリーナ・ドレス”と名づけられた。さらに彼女はそのひだのあいだに、ボーイフレンドのエイダン・ザミリのいたずら心あるポートレイトを刺繍したのである。「彼はずっと私や私の作品の影の原動力なの」。自身の卒業コレクションの動画を撮り終えたばかりのエイダンについて、彼女はそうしゃべり立てた。「私はいつだって、彼や彼の関心ごと、そしてそのファッションからもすっごく影響を受けてる」

このカップルはよく協働しているが、ふたりが最近いちばん注力しているのは、ドリーム・ワイフのスタイリングしたり、彼女たちのPVを撮ったりすることだ。ドリーム・ワイフが最初に行ったライブの舞台制作を、彼らが担当して以来の知り合だという。「バンドのPVをきっかけに、私たちはまったく違う世界を創造するチャンスを得たというわけ。メンバーにこんな奇抜な衣装を着せたら、それがぴったりハマっちゃって。彼女たちは存在感と個性たっぷりに演奏するの。それって素晴らしいでしょ」

では、次に予定していることは? 「今は、次のコレクション以外のことを考えてる時間はないの。でもそれが終わったら、次に何がやってくるのか楽しみでしかたない」。カナダで母親と一緒にペットボトルから帽子をつくっていた少女は、今年最もエキサイティングなセントマ卒業生へと成長を遂げた。彼女には、これからどんな人生が用意されているのだろうか。それを見るのが待ち遠しい。

Credits


Photography Pablo Di Prima
Video Aidan Zamiri
Make-up Mona Leanne
Wigs Taylor-Mary Anthony
Headgear in collaboration with Leo Carlton
Models Zenobia Crimson @ antiagency, Ayesha Tan Jones @ antiagency, Jasmine Lia @ Nevs, Leonie Perzl, Shot at Grand Palace Studio

This article originally appeared on i-D UK.

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