10.20 sacai / UNDERCOVERの夜:2018SS

2017年10月20日(金)、東京千駄ヶ谷・明治神宮外苑内にある聖徳記念絵画館の前に巨大な特設テントが現れた。午後7時30分、阿部千登勢が手がけるsacaiと高橋盾によるUNDERCOVERの合同凱旋ショーが始まった。

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okt 24 2017, 3:48am

2017年10月20日(金)午後7時。土砂降りの夜だった。聖徳記念絵画館前に、近年ではおおよそ都内で見かけることのない、1000人以上は収容できる巨大なテントが出現した。その白いテントには絵画館の外観がプリントされている——あえて言うなら、重厚な石造りの絵画館と異様な「不調和」があった。人々の傘が大挙している。雨に濡れながらも、それでも奇跡を待ち望む人々は、sacaiとUNDERCOVERの合同ショー「10.20 sacai/UNDERCOVER」を目撃するために駆けつけたのだ。

Amazon Fashion Week Tokyoのプログラム「AT TOKYO」のプレスリリースが手元に届き、驚きを禁じ得なかった。東京コレクションの変貌のシーズンになるだろうという、どこか確信めいた未来予言が至る所から耳に入ってくる。彼らは、両雄のパリでの功績はもとより、このイベントのタイトルから、今から約26年前の1991年6月1日に明治神宮水泳場で行われた、COMME des GARÇONSとYohji Yamamotoによる合同ショー「6・1 THE MAN」を想起したのだ。デニス・ホッパーやエドガー・ウィンターがモデルで登場したこのショーを目撃した数人に話を聞けば、口を揃えて、ショーの幕があがるや否やすぐに「伝説になる」と確信したのだと話す。当時COMME des GARÇONSに勤めていた、sacaiのデザイナー阿部千登勢もまた、その衝撃的出来事を身を以て体感したひとりであり、今なお強く記憶しているのだという。然るに、「10.20 sacai/undercover」は「6・1 THE MAN」への誠実なるオマージュであり、ある誰かの心に強く何か(それは人それぞれで一向に構わない)を刻むことが、最大の目的なのでないだろうか。——会場には、数え切れないほど多くの観客席に挟まれた、シンプルな一直線のキャットウォークがあった。招かれたゲストたちは、整然と"その時"を待っている。両者共に披露するのは、去る9月にパリで発表されたウィメンズ・コレクションだ。

ショーは、sacaiから始まった。大型LEDの光を背景に、エネルギッシュなトーンで、会場の熱量を瞬時に駆り立てた。多様なボタニカル、ミリタリー、英国調のチェック……sacaiのハイブリットなミックスが続き、モデルの闊歩に合わせて、服が躍動する。40人のモデルの中にはSarah SnyderやIrene Kimなど海外インフルエンサーを招き、日本のユース世代モデルを代表して今季のAmazon Fashion Week Tokyoをも彩ったCHIHARUや萬波ユカ、福士リラ、MIKI EHARA、そして、秋元梢の姿もあった。爽やかな春風さえも感じる、のびのびとした時間が流れた。

sacaiのフィナーレを迎え、会場は一転、暗闇と化した。天井に隠されていたシャンデリアが現れ、UNDERCOVERのおどろおどろしい世界に誘われる。対面の位置にある紅色のカーテンの奥から、モデルは双子のように対になって手を繋いで歩き、スポットライトが落ちるシャンデリアの下で一度立ち止まる。そして、また歩き始める。最後には2人組の少女たちが現れた。淡いブルーのガーリー・ワンピース姿だが、片やそのドレスを裏返し施された糸は赤く、血が滴るかのように見えている。ジキルとハイドではないが、全てのドレスの"2つの表情"に何か意味を見出したくなる——。

強いていうなら、リアリティとファンタジー。あるいはモデルの選定や音楽、空間性といったショーの演出という様々な「対比」が、図らずも、それぞれのデザイナーとしての独自性を際立たせながら、私たちに強烈な印象を残した。そして、"何か"が拮抗するチームアップだからこそなし得る、その完璧なる不調和が、両雄が常にインディビジュアルであることを証明していたのだと思う。ウィンナワルツの代表作「美しき青きドナウ」とともに合同ショーを締めくくったのは、「What comes around goes around(自分がしたことは最終的に自分にかえってくる)」とプリントされた白衣のようなレインコートだった。

服飾を学ぶ学生が、200名以上招待されていたという。彼らの中に、強く刻まれた何かはあったのだろうか。数年後、もしくは数十年後に日本を牽引するデザイナーが出現することを、阿部千登勢と高橋盾は、切に願っているのかもしれない。