Photography Petra Collins. 

タヴィ・ゲヴィンソンのWEB雑誌「Rookie」の8年間と、若い女性ライターに与えた影響

2018年末、タヴィ・ゲヴィンソンが10代の女性に向けたWEB雑誌「Rookie(ルーキー)」の閉鎖を発表。ZINE『Polyester』の創刊者であるアイオン・ギャンブルが、Rookieがネット時代のDIYカルチャーに与えた影響、若い女性たちの声をより大勢に届けることについて語る。

by Ione Gamble
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19 April 2019, 6:31am

Photography Petra Collins. 

2018年11月末、タヴィ・ゲヴィンソンが十代の女の子のためのウェブサイト「Rookie」の閉鎖を発表し、世界中のミレニアルガールたちが悲しみに暮れた。2011年、十代の少女たちのためにより良い世界をつくりたい、というタヴィの想いをきっかけに、彼女のブログ「Style Rookie」として始まった同サイトは、誠実で安全なネット空間を提供してきた。しかし、スポンサー記事、自己ブランディング、Instagramのインフルエンサーが席巻する現代において、存続が難しくなったRookieは、わずか7年の歴史に幕を下ろした。

「ある意味、閉鎖は私の意志ではありません。デジタルメディアビジネスを取り巻く状況はますます厳しくなってきていて、現状のままではRookieの運営資金を確保できなくなってしまいました」とタヴィは最後に投稿された記事で述べた。「でも運営資金を募るために、サイトを新しいオーナーに売ることも、投資家から資金を募ることも、寄付や購読によって読者にお金を請求することもしなかったのは、私自身が決めたこと」。Rookie愛読者にとって、サイトの閉鎖はひとつの時代の終焉、青春時代の終わりを象徴している。私たちがマーケティングや冷笑的なフェミニズムもどきから自由でいられた場所、若い女性たちが自由に自己表現できるネット上の小さな空間が、またひとつ失われてしまったのだ。

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ZINEのDIYスピリットを体現する「Rookie」は、SNSやブログで生まれたネット上のガールズカルチャーの本質を捉え、それを誠実なコンテンツによって発信してきた。大人の女性にアドバイスを求めるコラム〈Ask a Grown〉、メイクのチュートリアル、ハウツー記事を通して、同サイトは大手メディアの大半がいまだに固執し続ける〈排他性〉という壁を打ち破った。Rookieは、若い女性の等身大の言葉で彼女たちに語りかけた。そこには、初期のTumblrのようなスピリットや信頼があった。若者が仲間を見つけられる本物のコミュニティ。みんなのお姉さんであり、親友であり、私たちが求めてやまない、秘密を打ち明けられる相手。それこそがRookieだ。他のメディアが、ヒエラルキーや社会的排他性という裏の目標のもとでマーケティング戦略を推し進めるいっぽう、Rookieはあらゆるひとに扉を開いていた。

このサイトがネット世界に登場した当時、女性のメディアは現在のものとはまったく違っていた。〈ウォークネス(社会正義に関する問題意識)〉という言葉はまだ普及しておらず、『Teen Vogue』が安全なアナルセックスを特集することもなかった。アイデンティティ政治(訳注:民族、人種、ジェンダー、性的指向など、特定のアイデンティティに基づく集団の利益を代弁して行なう政治活動)が役員室に座る年配の白人男性に浸透し、社会問題への意識を高めることが利益につながるようになる前の話だ。SNS黎明期にネットに触れながら育った私たちは、生活の半分を秘密の世界で過ごしているようなものだった。そこは検閲もなく、乳首を隠す必要もない。ティーンエイジャーたちはTumblrで赤裸々すぎる内容を長々と綴り、セックス、自らの身体、メンタルヘルスについて語り、以前は紙の日記にしか描けなかったいかがわしいアート作品を公開した。そんな世界を踏襲し、クリエイティビティ溢れるコミュニティを形成したのがRookieだ。ティーンエイジャーが報酬をもらい、技を磨き、仲間を見つけることができる場を提供したタヴィは、嘘偽りない誠実なメディアブランドを築き上げた。

タヴィは編集者として、この世界には若い女性の声や意見が尊重されるだけでなく、彼女たちが創造力を発揮し活躍できる舞台がある、ということを証明した。彼女はかつてほんのひと握りの人間しか触れることのできなかった、閉じた扉の向こうに存在する世界を、あらゆるひとに向けて開いたのだ。今20代の女性のなかには、十代でタヴィの活躍を目の当たりにして「私にだってできるかもしれない」と励まされたひとも多いはずだ。Rookieは、7年の歴史のなかで数え切れないほどのクリエイターを輩出し、彼女たちのキャリアを支えるとともに、さらに多くの読者にインスピレーションを与えてきた。Rookie出身者には、ペトラ・コリンズ、ライターのヘイゼル・シルズやアシュリー・リース、レイチェル・ホジソンのようなヴィジュアルアーティストなどが名を連ねる。しかし、Rookieがこのような錚々たるメンバーを輩出した事実以上に重要なのは、このサイトが女性主導の出版活動、コミュニティが花開く新時代の種を植えたことだ。

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現在、『Gal Dem』『OOMK』、私自身が出版する『Polyester』など、数々のZINEが制作されるとともに、ZINEフェア、ワークショップ、パネルディスカッションなど、女性主導の様々なDIYイベントが毎週のように世界各地で開催されている。Rookieは若い女性とクィアの、消費と創作のありかたを根本から変えた。しかし、インディペンデントで草の根的な活動の裏では、Rookieの成功に乗じて、女性によるコンテンツに悪意あるブランディングがなされることもある。ZINE人気をきっかけに、若者中心のフェミニスト的な考えが、大手のメディア、すなわちシスジェンダーでストレートの年配白人男性によっていまだに支配されているメディアで持て囃されるようになったのだ。その結果、彼らは私利私欲のために女性のエンパワーメントを利用・改悪し、商品を売りこむために〈セルフケア〉などと称してダイエットカルチャーなどを広めることになった。

有名インディペンデントメディア(「Lenny」「Toast」「Hairpin」、雑誌媒体では米国版『Nylon』や『Teen Vogue』など)がここ2年で相次いで閉鎖している。Rookieもその流れに続くかたちになった。しかし、前述のメディアとは違い、Rookieの終焉は私にとってより身近に感じられる。結局慎重な対話は、安易な〈ガールパワー〉を打ち出すマーケティングに潤沢な予算を割ける媒体にはかなわない。私たちのメディアの未来は、今再び上流階級の役員たちが経営する巨大メディア企業の手に委ねられている。彼らは〈社会への意識の高い〉コンテンツが採算に合わないと判断したら、さっさと投げ出すに違いない。

涙なしには読めないタヴィの最後の編集後記には、このような問題との闘いが記されている。Rookieの資金調達のために努力したが、第三者からの出資による運営はサイトのポリシーに反し、結果として彼女がもっとも避けたかったプラットフォームになってしまう、との判断に至った。しかし、金銭的な問題以上に印象に残ったのが〈インポスター症候群〉だ。これは私が嫌というほど知っている感情であり、クリエイティブ業界を志す私の仲間、社会の周縁にいる多くの人びとに絶えずつきまとう思いでもある。

インポスター症候群とは、自分は周りの評価に見合わないと感じる心理状態のこと。第三者視点からみたステータスによって絶えず脅かされ、自分には他人が時間とお金を割くに値するビジネス、アート、クリエイティビティを生み出す能力がない、と感じてしまう。ブランドスポンサー付きの企業、釣り記事を多用するウェブサイトは、〈ガールボス(社会で活躍する女性)〉たれ、という考えを私たちに押しつけてくるが、このようなプロジェクトを成功させるには、まず莫大な資金が必要になる。結局、純粋な想いから生まれたプロジェクトは頓挫するばかりで、新進気鋭のアーティストは安定した収入を得られないままだ。

Rookieを閉鎖するという決断について、タヴィはこのように述べている。「私が決めるべきことではない、とも思っている。このサイトは今でも活気に満ちていて、多くの読者の人生に深く関わっているから」。失われてしまったものを褒めたたえるには、決して埋まることのない穴を嘆くしかない場合もある。しかし、Rookieは数々の新たな出版物、共同体を活気づけ、次世代の若きクリエイターに刺激を与えてきた。もちろん、金銭的な問題はまだあるが、新たなプラットフォームを立ち上げ、メディアを自らが望む方向へと変えていくのに、今ほど適した時代はない。私たちが愛してやまないクリエイティブな試みが消えないよう、消費者、クリエイターとして、口だけでなく実際に行動を起こそう。すべては私たち次第だ。

This article originally appeared on i-D UK.