TOMO KOIZUMIが一番大切にしていること。小泉智貴が考えるファッションの力

オリンピックの開会式での小泉のドレスを覚えているだろうか? MISIAがポジティブなエナジーを放つドレスをが纏って登場したときに、ファッションの力強さを実感した。

by Kazumi Asamura Hayashi; photos by Adi Putra
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01 July 2022, 7:30am

オリンピックの開会式での小泉のドレスを覚えているだろうか?開催が疑問視され続けながら行われたオリンピック。そのような最中の開会式だったがMISIAが彼のドレスを纏い、国歌斉唱した瞬間ガラリと空気が変わったのを覚えている。もちろんポジティブな思いへとだ。歌手の歌唱の魅力はもちろんのこと、小泉のドレスには登場感があった。それを着て出てきた瞬間に現れる華々しさだ。開会式を見ながら、ファッションは難しすぎない、楽しくて気分を上げてくれるものなのだと改めて感じた瞬間だった。

小泉のクリエイティブは、シンプルに忘れられない良さが溢れている。そんな彼のドレスに込められた「らしさ」とはどこから来るのか?彼にいくつかの質問を投げかけてみた。

──子供の頃の夢を教えてください

3、4歳の頃は折り紙が好きで、折り紙の先生になりたいと親に言っていたのを覚えています。保育園にも自分の折り紙ボックスを持参していたようです。何かを作ることも好きだったのですが、折り紙の様々な色や質感の違いなどでグラデーションを作ったりすることが特に好きでした。

──デザイナーになったきっかけは?

親や親戚は現在は60代ですが、彼らが若い頃DCブランドブームというのがあり影響を受けていました。ファッションへの熱意のある世代に囲まれていたんですね。決して裕福というわけではありませんが、こだわりのあるものを着せてもらっていたと思います。自分が中学生の頃に2つ上の兄が、裏原ファッションに熱中したりもしていました。

雑誌も幼いときから読んでいました。自分は千葉出身なのですが、外の世界を知りたいという好奇心旺盛な学生時代を過ごしていました。その頃本屋で立ち読みした、装苑のコレクションリポートでジョン・ガリアーノが作った、ディオールのオートクチュールの写真に出会いました。その写真を見て衝撃を受け心を掴まれました。そして自分もこの世界に関わりたいと思うようになりました。その年の冬に、母に家庭用のミシンを買ってもらい、見よう見まねで洋服を作り始めたのが14歳のときです。

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YAMATO WEARS DRESS TOMO KOIZUMI. T-SHIRT STYLIST OWN.

──キャリアに大きく影響した出会いや出来事を教えてください。

高校生のときに、横浜美術館で「GOTH -ゴス-」展という展覧会がありました。アーティストのピュ〜ぴるさんがその展示でボランティアを募集していたので、お手伝いに行きました。その頃の経験は今でも影響を受けています。

大学生になってからは、知り合いのスタイリストやヘアメイクさんを通じてファッション撮影の現場に行く機会がありました。そのとき出会ったのがスタイリストの北村道子さんです。

そのときに道子さんにキャリアについて相談しました。彼女は「スタイリストよりデザイナーの方がクリエイティブであなたにむいてるわよ」と言ってくれました。大学在学中に自分のブランドを立ち上げ、メインにライブの衣装などエンターテイメントの世界のデザインをしていました。

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TAKERU WEARS DRESS TOMO KOIZUMI.

──マーク・ジェイコブスがサポートしたNYのコレクションについて教えてください。

キャリアを重ねるうちに、大きなお仕事もいただくことに、なりました。そして自分の憧れている世界により近づいて行きたいという気持ちが大きくなりました。その頃もしかしたら日本ではもう限界かも?と考え始めたところ、スタイリストのケイティ・グランドからインスタに連絡があったんです。その一ヶ月後2019年の2月にNYでショーをやりました。

NYでのショーは夢のような経験だと思います。でも自分の洋服を量産し、プレタポルテを売るという、ファッションブランドとして王道のやり方は自分らしくないとも考えました。ブランドを長く続けることって大変なことですよね。コラボレーションや、セレクトショップでの販売など、とても良いお話しを頂きましたが、その頃は圧倒されて全部お断りしました。ストレスで眠れないこともありました。そしてもともとこのチャンスが無くても自分がやりたかったことに集中して、自分のペースを取り戻しました。

──今もビジネスの中心はコレクションと衣装デザインということになりますか?

衣装も製作しますし、コレクションを顧客にオーダメイドで作ったりもします。美術館やコレクターの方もいるのでその方々へもお洋服を製作します。コラボレーションもありますね。

先日の楽天ファッションウィークの際に、スポンサーである楽天のECサイトに向けて受注制で、カジュアルなものを作りましたが、プレタポルテのように、いつでも購入できるものは基本的に作っていないです。チームは小さく、妹と二人でやっています。プロジェクトによって外注の方にお願いすることはありますが、ストレスがないような働き方を、一番重要視しています。そのためにも、チームは小さくフットワークを軽くしています。

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MOTORA SERENA WEARS DRESS TOMO KOIZUMI.

──あなたの服は、どんな人に着てもらいたいと思っていますか?

洋服を見てワクワクして楽しんでもらいたいという気持ちが一番あるので、エンターテイメントの世界とは相性がいいと思っています。着た人の個性と自分の作る洋服のパワーが相乗効果になるように目指してデザインしています。

──あなたのインスピレーションの源を教えてください。

たくさんあるんですが、最近は「色」に集中しています。たとえばNYでのショーのときも、ラッフルの使い方が個性的で注目を得られたのかな?と思っていたのですが、「色使いが独特」だとおっしゃる方がとても多かったのです。自分の中で「色合い」は、あまり練られていない瞬間的に出てくるごく自然なものであり、無理せず作っているものなので、それを指摘されたのは新たな発見でした。難解ではなく伝わりやすいものということも大切にしています。3歳の子供やおじいちゃんが見ても「可愛い」「面白いね」と言ってもらえるものを目指しています。どのようにすれば親切にわかりやすく作れるかを、デザインのベースに持ってきています。マーク・ロスコ、ジョージア・オキーフのペインティングの色使いが好きで、ヒントを得たりもします。そして自然の花が好きです。花のようなデザインで作りたい、それが永遠のテーマになっています。花を模したりもしますが、実際の花の美しさにはたどり着いたことはありません。なので別の要素で花のようなデザインができたらいいなと思っています。

──Sacai、エミリオ・プッチなど様々なコラボレーションをしています。醍醐味とは?

コラボレーションしたいなと思う相手のブランドは、スタイルが確立されていて、そこに自分の要素を組み合わせてより美しいものを作れるかというチャレンジ、自分の持っている要素を超えたものができるのが楽しいです。プロジェクトの最中に発見できたことを、自分のコレクションにも活かせることもあります。楽しいし、勉強になります。

──昨年の東京オリンピック開会式でのMISIAによる国歌斉唱。衣装を手がけた経緯は?

もともと、MISIAさんの関係者に私の衣装を着てもらっていました。

彼女もオリンピックが始まる3ヶ月前ほどに国歌斉唱のオファーがあったようです。スタイリストさんから自分の名前が挙がり、連絡をいただきました。そのときは即答で、「是非やらせていただきたい。」とお伝えしました。デザインから初めて2ヶ月で製作しました。オリンピックでは、世界中のあらゆる言語を話す人が見ることが前提にあります。だから言葉のいらない美しさ、ピュアなものを表現したいなと思いました。ドレスの裾の色は一周すると循環するようになっています。抽象的なんですが、光を表現したいという話になったときに、虹も光の反射によって現れるものなのでそれを表現したんです。

──開会式でMISIAがあのドレスを着て登場したとき、感動しました。とても印象的でハッピーな瞬間でした。やっとオリンピックにコネクトできた瞬間だったと思います。

嬉しいです。コロナ禍での開催だったので、いろんな意見もあったと思います。自分の周りにもアンチオリンピックの方もいましたが、開会式を見た世界中の友達からも良い連絡をいただきました。この少し前に、Vogue Change の企画でジョン・ガリアーノとやりとりする機会がありました。彼が自分を指名してくれたのです。その縁を通じて、アナ・ウィンターとの交流にもなり、オリンピックの件では、彼女から「おめでとう」とメールをいただいたりすることもありました。

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MOTORA SERENA WEARS DRESS TOMO KOIZUMI.

──これからクリエイティブ業界に入って働きたいGenZに対してアドバイスをもらえますか?

自分がオリジナリティーのあるものを作ろうとトライしている中で一番感じたことは、日々触れている情報から自分の思考が作られるということ。なので、取り入れる情報は精査した方がいいなというのがアドバイスです。自分がインプットしたものがアウトプットされると考えているので、人とは違う情報を取り入れたいといつも思っています。自分がよく行くのが、神保町にある古本屋です。例えば五十円で売られている、日本の古いクラフトの本とか、そのままアイディアに使ったりはしませんが、何かのアイディアにつながることがあります。インターネットでの情報は、有象無象にあらゆる質の物があるので、こちら側で選ぶリテラシーをつけないとなりませんね。便利だけども、偶然の出会いは無いような気がします。人との差をつけたいならば、取り入れるものを変えることが必要かなと思います。図書館で、興味のないエリアに行き本を読むと、意外にもそこに良いワードが隠れていたりするかもしれません。

──今後のニュースを教えてください

ここ2年は日本をベースに仕事をしていました。来年の頭には発表する場所を海外に持っていきたいと思っています。前回の3月のショーでは、やりたいことが最大限に表現できたので、悔いなく海外での活動ができるなと思いました。

それと、自分もマーク・ジェイコブスにサポートして頂いたように、後進のデザイナーに少しづつですがアドバイスや、展示する場所の提供などをしています。自分がしてもらったことを、次の世代にも繋げられたらと考えています。

CREDITS


Creative Director Kazumi Asamura Hayashi
Photography Adi Putra
Styling Shohei Kashima
Hair Waka Adachi
Make-up Tamayo Yamamoto
Styling assistance Taku Kato. Tsuyune Mine. Rei Otani.
Make-up assistance Sakura Nishiura
Models Motora Serena. Yamato. Takeru.
Editor Noriko Wada

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