Photography Luis Alberto Rodriguez

ケンダル・ジェンナーが語る、プライベートを取り戻すことの大切さ

モデル/リアリティ番組のスターが、カメラに囲まれて育つこと、セラピーとしての読書、パパラッチとの関わりについて、率直な思いを打ち明けた。

by Chelsea Hodson; translated by Nozomi Otaki
|
25 February 2022, 8:00am

Photography Luis Alberto Rodriguez

この記事はi-D The Out Of Body Issue, no. 367, Spring 2022に掲載されたものです。注文はこちら

『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』のシーズン2には、クロエ・カーダシアンが当時13歳だったケンダル・ジェンナーの前で、水の入ったグラスにタンポンを浸す実演つきの〈生理トーク〉を繰り広げる場面がある。カイリー・ジェンナーや他の姉妹たちは、この〈授業〉を茶化すように笑っているが、ケンダルは片手で犬を抱きかかえ、もう一方の手で顔を支えながら、ソファに沈み込んでいる。どんどん縮こまっていく彼女にカメラがより、恥じらいと疲弊の間を行ったり来たりする表情が映し出される。そこで、彼女にもっとリラックスしてもらうため、姉妹はケンダルが生まれたときの映像を見せることにする。カメラがテレビの画面を映し、視聴者も一緒にケンダルがこの世に生まれ落ちる瞬間を目撃する。YouTubeにあがっているこの回のトップコメントは、「今まさにケンダル・ジェンナーが子宮から出てくる瞬間を目撃したという事実が信じられない」というものだ。

今、このシーンを改めて見返すと、他のリアリティ番組と大して変わらないように思えるが、忘れてはならないのは、カーダシアン家やケンダルは、このような番組でカメラの前で育った、初めての若者やティーンエイジャーだったということだ。現在26歳になったケンダルは、ソファと一体化しそうな内気なティーンエイジャーではない。この3年で、彼女は世界で最も稼いだスーパーモデルの座に君臨し、ブランド〈818 Tequila〉を立ち上げ、ネット通販FWRDのクリエイティブディレクターに就任した。今まで以上に華々しく活動する彼女だが、最近は舞台裏の仕事にも励んでいる。それでいて、人びとを惹きつけてやまない神秘的な雰囲気は失われていない。では、誰にも見られていないときは、彼女は何をしているのだろうか。

Kendall Jenner in i-D 367 The Out Of Body Issue
Kendall wears top and skirt BURBERRY. Briefs I.AM.GIA. Earrings (worn throughout) SOPHIE BUHAI and ZOE CHICCO.

ケンダルと電話で話したとき、私は彼女が数日前に2億1300万人のフォロワーに向けて公開したインスタストーリーについて尋ねた。ケンダルのドーベルマン、パイロが彼女の日記に頭をのせ、芝生に横たわっている写真だ。週に1、2回日記をつけることが、不安、パニック発作、さらに「ほんの少しのうつ」を抑えるのに役立っていると彼女はいう。「幸せをアウトプットできる、自分だけの空間を持つことが大切」と彼女は続ける。「それだけじゃなく、怒りも不満も、ストレスも、心底恐ろしいものも、幸せな気持ちになれるものも、ただのアイデアなんかも記録してる」。彼女は物事を言葉に起こし、書き留めて形にすることの力を信じているという。「私たちの思考はものすごくパワフルなの」

昔はよく怒っていた。ネットには私が訳もなくパパラッチに叫んでるビデオも上がっているけれど、その理由が明らかなものもある。今はもっと落ち着いて対処できるようになった。

その記録を誰にも見られないように鍵をかけてしまい込んでいるというので、「本物の鍵をかけているんですか?」と私は尋ねた。「そう、昔ながらの日記みたいに。鍵付きのものを隠して、しまっている。私の日記は秘密でいっぱいなの。絶対に他人には渡せない」。生まれてからずっと詮索や無遠慮な質問と向き合ってきたうえに、本人の意思とは関係なく、常にテレビで私生活を共有することを強いられる彼女にとっては、無理もない話だ。

Kendall Jenner in i-D 367 The Out Of Body Issue
All clothing THE ROW PRE-FALL 22. Boots BOOT STAR LOS ANGELES.

ケンダルが冷静さを保ち、前向きでいるためのもうひとつの秘訣は読書だ。「ちょうど2日前にパニック発作が起きたんだけど、よし、この本を読んで忘れよう、って」。今読んでいるのはコリーン・フーヴァーの恋愛小説『世界の終わり、愛のはじまり』で、親友と感想を言い合えるように同時に読み進めているという。ケンダルによると、読書は「最高のセラピーであり気晴らし」だ。「他の誰でもない、自分だけのためのものを持ちたいの。読書はまさにそういうものでしょ」

この言葉を聞いて、私は少し混乱した。2019年12月、ケンダルがヨットでオレンジのビキニ姿で読書しているところを撮られたとき、さまざまな記事が出回ったのをよく覚えている(なぜかというと、そのとき彼女が読んでいたのが私の本だったからだ)。公の場での読書はごく普通の行為だが、それがケンダルとなれば、大見出しのニュースになる。しかも毎回だ。それにもかかわらず、ケンダルは読書を自分だけのためのものと捉えているという。おそらく、彼女にとっては公の場での行為だとしても、どこか個人的なものがあるのだろう。YouTubeで自分の本の趣味を批判するビデオに出くわしたときのことを、ケンダルはこう語る。「本当に余計なお世話。読書を楽しめたら、それだけで私は幸せ。私にとっては個人的な体験だし、その本を本当に気に入っていたから」

Kendall Jenner in i-D 367 The Out Of Body Issue
Top and trousers NENSI DOJAKA. Shorts R13. Hat GLADYS TAMEZ MILLINERY

誰もが彼女の一挙手一投足に目を光らせているので、新しいことに挑戦するのに気が引けたりはしないのだろうか。「気が引ける」というより「怖い」のほうが正しい、と彼女は答えた。「昔はよく怒っていた」とケンダルはいう。「ネットには私が訳もなくパパラッチに叫んでるビデオも上がっているけれど、その理由が明らかなものもある。今はもっと落ち着いて対処できるようになった。うまく説明できないけど……だんだん慣れるものなのかも」

私も実際に〈ケンダル・ジェンナー VS パパラッチ〉というタイトルのYouTubeのビデオを見たが、その中で、ターゲットの駐車場でパパラッチがケンダルに近づきすぎて、彼女はカメラが顔にあたらないように手で避けなければならなかった。これを見れば、彼女の反応は100%正当化できるだろう。

「若い頃は、自分でコントロールすることを諦め、自分を他の誰かに自由に表現させていた。それが私の仕事だったから。今、その主導権を取り戻している」

周りからの注目の結果、ケンダルは特定の物事を誰の目にも触れない、自分だけのものに留めることを学んだ。トレーナーとの筋トレやピラティス、乗馬、犬の散歩など、運動もセラピーになっている。「身体の調子が良ければ、メンタルの調子もよくなる気がする」と彼女はいう。瞑想もしていて、サウンドヒーリングの効果にも興味津々だ。数年間サウンドバスの個人セッションを受け、今では自分用のツールもあり、ひとりでのサウンドヒーリングの方法を学んでいる最中だという。

Kendall Jenner in i-D 367 The Out Of Body Issue
Top SUPRIYA LELE. Shorts vintage HELMUT LANG courtesy of ARTIFACT NY.

ケンダルが最終的に何でも自分の手でやってみたくなるのは、自称「根っからのコントロールフリーク」だからだ。しかし、モデルとしてのキャリアの中では、自分のそういう側面を抑えなければならなかった。「若い頃は、自分でコントロールすることを諦め、自分を他の誰かに自由に表現させていた。それが私の仕事だったから。今は自分がそちら側に立つことで、ある意味、その主導権を取り戻している。自分のブランドをつくったり、自分の権限を実感することでね。心から楽しんでる。女性として、それから女性主体の家族の一員として、自分のあらゆるツールを活用できるのは最高だった」

モデルとしての人生の第一章を通してエンパワメントされることを学んだケンダルは、818 TequilaやFWRDでの役割を「新たな章」と表現する。「自分はまだ完璧だとは思わないけど、章が進むごとに少しずつ満たされていく」。ケンダルのモデルのキャリアは、さまざまな意味でリアリティ番組時代から自然に形成されたものだった。テレビカメラが別のカメラに変わったのだ。さらに、モデルの撮影現場の外ではパパラッチが待ち構え、仕事の中にも外にもカメラが存在する。常に誰かに見られ、観察されている……。しかし、舞台裏で新たな主導権と権限を得た結果、新しいケンダルが生まれた。それは人生の一部を鍵をかけてしまい込み、その鍵を飲み込むことの大切さを知ったケンダルだ。

「こんなことを言うのは悲しいけど、ときどき自分が何者かを思い知らされる」とケンダルはいう。「自分だけのパーソナルな活動をすることが、自分自身を思い出すための最高の方法だと思う。『違う違う、これが本当の私でしょ』ってね」

Kendall Jenner in i-D 367 The Out Of Body Issue
Swimsuit CHANEL. Top SKIMS. Bra JW ANDERSON. Boots stylist’s studio.
Kendall Jenner in i-D 367 The Out Of Body Issue
Top CHRIS HABANA. Shorts vintage courtesy of Albright Fashion Library. Briefs GONZA.
Kendall Jenner in i-D 367 The Out Of Body Issue
Bikini LUDOVIC DE SAINT SERNIN. Boots STALLION BOOTS.
Kendall Jenner in i-D 367 The Out Of Body Issue
Bikini LUDOVIC DE SAINT SERNIN. Boots STALLION BOOTS.
Kendall Jenner in i-D 367 The Out Of Body Issue
All clothing RICK OWENS. Boots BOOT STAR LOS ANGELES.
Kendall Jenner in i-D 367 The Out Of Body Issue
Bra and briefs GUCCI. Shorts MOUSSY. Boots RANCH ROAD BOOTS.
Kendall Jenner in i-D 367 The Out Of Body Issue
Kendall Jenner in i-D 367 The Out Of Body Issue
Top CHRIS HABANA. Shorts vintage courtesy of Albright Fashion Library. Briefs GONZA. Boots BOOT STAR LOS ANGELES.
Kendall Jenner on the cover of i-D 367 The Out Of Body Issue
swimsuit vintage GUCCI courtesy of Artifact NY, hat GLADYS TAMEZ MILLINERY, boots BOOT STAR LOS ANGELES.

i-D JapanのInstagramをフォローしてケンダルについてもっと詳しく見る。

Credits


Photography Luis Alberto Rodriguez.
Fashion Director Carlos Nazario.
Hair Tina Outen at Streeters using Bumble & bumble.
Make-up Yadim at Art Partner.
Nail technician Marisa Carmichael using ORLY.
Set design Patience Harding.
Photography assistance Harris Mizrahi, Annabel Snoxall and Jeremy Eric Sinclair.
Styling assistance Raymond Gee, Alexa Levine, Ruby Bravo and Terrence Munn.
Tailor Susie Kourinian.
Hair assistance Grissel Esparza.
Make-up assistance Lilly Pollan.
Set design assistance Ehman Xray and Kelly Infeld.
Production Brachfeld.
Casting director Samuel Ellis Scheinman for DMCASTING.

Tagged:
Kendall Jenner