Imagery via TikTok

パンデミック下の新たなTikTokトレンド、『フォレジング』について

正しいキノコのとり方や釣りの方法など、自然とともに生きる暮らしを発信するTikTokerたちに、フォレジングに興味を持ったきっかけや醍醐味、活動するうえでの課題を訊いた。

by Edna Mohamed; translated by Nozomi Otaki
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06 September 2021, 2:02am

Imagery via TikTok

昨年にパンデミックが始まって以来、現代の田舎暮らしの幻想がSNSを席巻している。コテージコアやキッチュなかぎ針編みなど、ロックダウン中に時間にゆとりができ、ゼロから作品づくりに挑戦したひとも多いはずだ。SNSで脚光をあびるこれらの美学のトレンドの根底には、現実逃避が存在する。誰もが屋内で過ごし、孤立せざるをえない今、外の世界がこれほど魅力的に思えたことはない。自然はあらゆるファンタジーを描くキャンバスとなり、現状の対極に位置するものとなったのだ。

家にこもって料理に勤しむひとが増えるにつれ、田舎のファンタジーは、当然ながら食に対する考え方にも影響を及ぼし始めた。ヴィーガニズムや菜食の台頭をきっかけに、家庭料理が重視されるようになった。ヴィーガン協会(The Vegan Society)の調査によると、2014年は15万人だった英国のヴィーガンは、2019年には60万人へと4倍に増加している。このトレンドに伴い、代替肉をはじめとする代替タンパク質業界の売上は2020年、史上最高額となる31億ドル(約3400億ドル)を記録。また、2021年5月のヴィーガン協会の別の調査によると、「COVID-19のパンデミック以降、英国人の4人にひとりが動物性食品の消費を減らし」、気候に優しい投資や消費へと移行したという。

あらゆるニッチな流行の発祥の地であるTikTokでは、再生回数1400万回を超えるハッシュタグ〈#foragingtiktok〉から、スライスすると青色に変わるキノコから潜在的に有毒な植物への注意喚起まで、森で発見した宝物を披露するコミュニティが誕生した。

 TikTokユーザーのメーガン・ハウレットは、14万人以上のフォロワーを有するアカウント@thegardencottageを運営している。彼女の最も人気のあるビデオは、24万回以上再生された〈witches egg(魔女の卵)〉と呼ばれるキノコの採取動画だ。このキノコの見た目はゆで卵にそっくりで、その名のとおり、秋のハロウィンシーズンにのみ収穫できる。メーガンのビデオのテーマは、6月のワスレナグサや7月のパイナップルウィードといった森で見つかる季節の食べ物から、採集の必需品であるバスケットやノート、摘みたてのラベンダーやカモミールから作るボディバターの簡単なレシピまで、多岐にわたる。 

現在フルタイムのフォレジャー兼ワイルドクラフター(※野生の植物を採る人)として活動しながら、フォレジングについて教える講座を計画中のメーガン。英国イーストサセックスのミッドハーストという小さな町で暮らす彼女がフォレジングに興味を持ったきっかけは、祖父母だった。

「兄とわたしが退屈しないように、わたしたちが小さい頃、祖父母はブラックベリーやスローベリー、海岸でのフォレジングなどに連れていってくれました」とメーガン。「ふたりはフォレジングという言葉は使っていませんでしたが、あれはまさにフォレジングでした」

今でこそ大人気アカウントとなったが、もともとはフォレジングのコンテンツを投稿する予定はなかったという。23歳の彼女が単なる趣味として始めた活動が、主にパンデミックのおかげで仕事へと繋がった。

 「パンデミック中に(アニメーションの学位を取得して)卒業し、内定ももらっていましたが、取り消しになってしまいました。途方に暮れて、人生で何をやりたいのかわからなくなりました」と彼女は回想する。

 「菜食についてのInstagramアカウントを持っていたので、TikTokを始めたとき、森のことを取り入れた菜食の動画を投稿したんです。『ああ、そういえば、1月にはこういうものが採れるよ』という感じで。そしたら、みんな気に入ってくれて」

メーガンのコンテンツの中心にあるのは教育だが、SNSのフォレジングの世界では、これは珍しいことではない。実際、オンラインのフォレジャーたちは、知識と教育を通して、この趣味やライフスタイルをより身近なものにすることを重視している。

 「たとえばセリ科など、特定の植物については投稿しないようにしています。ドクニンジンなど有毒な植物があるので」とメーガンは例を挙げる。「私たちは地域的なエディビリティ(※食用になること)と世界的なエディビリティの違いをもっと意識するべきです。同じ見た目だからと、ひと括りにすることはできません」

 さらに、英国は米国に比べて食用キノコの種類が多いため、採集可能な種類を周知するさいも注意が必要だとメーガンはいう。フェンスの近くや沿道に生えるセリ科の毒草、ドクニンジンは、パースニップの根やパセリの葉、アニスの種などと間違えて摂取すると中毒を起こす。勘違いして食べると、最悪の場合は死に至る。

 同じく23歳のTikTokユーザーのローラ(@foragingfaerie)は、同様に英国の野生生物を愛し、ヒナギクからバームを作るビデオの再生回数は11万回を超える。しかし、彼女とメーガンの違いは、フォレジングの知識を家族から教わったのではなく、独学で身につけたという点だ。

「裏庭にイラクサがたくさん生えていて、何かできないかなと思ったんです。レシピを見てイラクサのスープを作ってみたら、すごく美味しくて。もっといろんなものを作ってみたくなりました。そこで本を何冊か買って、近所を歩き回ってみたんです」

ローラにとって、若いフォレジャーの増加のきっかけは、自力で何かをやってみたいという思いと、現代のネット生活に対する抵抗だという。「若い人たちは、絶えずあらゆる場所で直面するテクノロジーから距離を置こうとしています。それはつまり、自分の力で挑戦し、発見し、何かを創り出すということ。庭で見つけたものからも何かを作ることができるんです」

これを踏まえ、有色人種の自然との触れ合いの少なさを是正しようとする団体が増えている。たとえば今年7月にシェフィールドで設立された〈Peaks of Colour〉は、毎月ピークディストリクト国立公園でハイキングを開催している。ハイキングやウォーキングの他にも、自然とのつながりを取り戻すために都市農業を推進する団体もある。

 フォレジング・コミュニティの広がりは、英国だけにとどまらない。TIkTokアカウント@aananadventureを運営する19歳のアンジャネーヤは、テキサスで海洋生物学を学ぶ大学生で、祖父母を通してフォレジングを知った。

 「ときどき祖父母と一緒に釣りに行きました。自然の中で、または釣りをしながら、祖母はココナッツや野生のアマランサス、食べられるフルーツを指さして教えてくれました。そのことについて深く考えたことはありませんでしたが、高校で2年間生態学の授業をとったとき、淡水系について、特にヒューストンの小川を中心にしたプロジェクトに何度も取り組みました。それで水辺の植物をテーマにしたことをきっかけに、興味を持ち始めました」

メーガンと同様、アンジャネーヤもTikTokで自らの情熱を発信し、エビをとるビデオは2万5000回以上再生されている。「フォレジングのビデオはTikTokですごく反応が良いです。身の回りの植物を採取しながら、魚やエビを自分で捕まえるのは、海洋生物学者である僕にもぴったりです」とアンジャネーヤ。「ビデオを見る人も喜んでくれるので、一石二鳥ですね」

しかし、アンジャネーヤは成長するにつれ、この趣味は地元ヒューストンやコーパスクリスティであまり人気がないこと、そして特に自分自身のような若者や有色人種が少ないことに気づき始めた。そこで彼は、iNaturalistやWikipedia、ForagingTexasなどのサイトを参考に、食用になりそうな植物を自力で調べ、その栄養価を確かめた。

 「有色人種の若者である僕には、釣りはあまり関係のない趣味だと思っていました。でも、今は釣りの醍醐味を知り、満喫しています」

 「僕自身、最高の漁師やフォレジャーであるとは言えないかもしれませんが、自分で学べることはたくさんあります。祖父母と何度か出かけた以外は、誰かに教わる機会はありませんでした。独学で身につけなければいけないことばかりでしたが、その価値は十分にあったと思います」

 「もっと多くの若者、女性、有色人種やLGBTQ+の人びとに、アウトドアの活動を楽しんでほしいし、より環境に配慮した未来を実現するために、自然と自分を切り離して考えないでほしい。そのためには、サステイナブルなフォレジングを学ぶ以上の方法はありません」

 フォレジングや釣りのような趣味は、一般的に有色人種の人びとと結びつけられることは少ないと指摘するアンジャネーヤは、自らのプラットフォームを通して、より多くの人びとに野外での活動を楽しんでもらえるよう努力している。

 他に有名なフォレジングTikTokerが、若者がフォレジングに触れるきっかけをつくるロールモデルとなっているアレクシス・ニコール(Alexis Nikole)だ。彼はアフリカ系の伝統を大切にしながら、あらゆる年代の有色人種の人びとがフォレジングの何たるかを学び、環境に配慮した食料生産への関心を高められるように働きかけている。

ウェブメディア〈Bon Appetit〉のインタビューで、アレクシスは「(アフリカ系クィアのオンライン・フォレジャーである彼女が)フォレジングやアウトドア、生物学、植物学、歴史に夢中になることを期待されるタイプじゃない」と説明し、この分野に関する彼女の知識を疑われることも多いと語った。しかし、フォロワーから身の回りの自然について教えてくれてありがとう、という感謝のメッセージを受け取ると、やりがいを感じるという。

知識を受け継ぐことは、メーガン、ローラ、アンジャネーヤ、アレクシスの全員に共通する究極の目標だ。この目標は、フォレジングがより身近に、わかりやすく、広く受け入れられるように努力する新世代のTikTokフォレジャーたちの活動と核となっている。気候変動の問題が切迫性を増すなか、自然について学べばもっと自然を大切にできると理解することは、今までになく重要になっている。

この趣味からかけ離れたイメージを持たれていようと、フォレジングへの敷居を低く、誰にとっても身近なものにしようと努力する新世代のフォレジャーは、私たちの先頭に立って地球を敬い、そこから享受するべきものを学んでいるのだ。

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