Still from "Lost in Translation."

なぜ私たちは「孤独」が怖いのか? インフルエンサーも悩むやつ

「Z世代(90年代後半以降に生まれた世代)はもっとも孤独な世代」という研究結果が出ており、その原因はSNSとされている。その理由と対処法を、専門家に聞いてみた。

by Alyson Zetta Williams; translated by Ai Nakayama
|
31 March 2020, 9:16am

Still from "Lost in Translation."

人類がゼロ年代で成し遂げたことがあるとすれば、それは孤独感を抱く若者が急増する原因を突き止めたことだろう。その原因とは、SNSやインフルエンサー・カルチャーにまつわるすべてだ。つまり、孤独感を癒すはずのものが、図らずも自分の孤独感の原因となっていたことが判明した。

孤独感は「伝染性で、公衆衛生の脅威」とされてきたが、自分の人気度が数値化され、数千もの〈友達〉や〈フォロワー〉を有することでキャリア形成ができてしまう時代には少々異なった様相を呈している。そもそも、私たちはなぜ孤独を恐れるのだろうか。

「孤独を恐れることは、世代や文化を超えて当たり前にあることです」と断言するのは、SNSの使い方を専門に研究する社会心理学者のエリン・ヴォーゲル博士だ。「テクノロジーのおかげで、Z世代は常に他者とつながることができますが、それでも孤独を感じることはままあります」

サンディエゴ州立大学の研究でも、若い世代は上の世代よりも孤独感が強くなると示されており、また2019年のカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の孤独測定(Loneliness Scale)でも、Z世代は最高値を記録した。

それは、SNSによりニセモノの〈つながっている〉感を抱くことが原因とされているが、孤独感の急激な高まりとSNSの使用については、専門家はいまだに決定的な相関関係を証明できていない。

デラウェア大学のドーン・ファリック助教授は、名声を得ることで生まれる孤独感についてセレブリティが語ることが、それを見た若者たちが自分自身の孤独感を省みるきっかけになっているのでは、という仮説を述べた。

「若者たちは、孤独を感じていること自体に驚き、圧倒されてしまう」とファリック助教授は〈USA Today〉の取材に語っている。〈セレブリティ〉という言葉は、InstagramやTwitterで有名な〈サッドガールズ/ボーイズ(Sad Girls/Bois)〉にも当てはめることができる。

彼らのインターネット上のアイデンティティは、孤独であることを個性とし、それを中心に据えて発展している。孤独感を決定づける要因となるのは、SNSの使用自体というよりも、他者とつながるためのツールの、一番目立つ場所に掲載されるイメージややりとりであるといえよう。

「ある意味では、僕が孤独を感じることは不可能です」と語るのは23歳のネイト・ガーナー。彼のInstagramは、250万人近くのフォロワーを抱える人気アカウントだ。他者ともっとも〈つながっている〉世代の一員である彼は、オンライン/オフライン問わず、誰かとのつながりや他者の存在は、多くのフォロワーを抱えていること、大きな社会的グループに属していることで得られるとされる安心感を必ずしも保証するものではないという。

2018年『New York Post』に掲載された〈200万人のフォロワーがいるけど友達はいない〉という見出しの記事でガーナーは、SNSでのフォロワー数が一気に増えたいっぽう、実生活での友人は急激に減り、自己肯定感も下がった、と吐露していた。

インターネット上でのコミュニティは成長し現実の友人が減る、という状況の不一致は、多くのSNSユーザーが抱く不安感や苦しみの原因となっている。自己実現的予言に囚われたユーザーたちは、自らのコミュニティの拡大のためにアプリやウェブサイトを使用するが、結局はそれらのツールが、そして私たち自身が生み出す制約が、ひととのつながりを求める意欲を制限、抑制してしまう。

「その主な原因はSNSだ、というのが私の説です。SNSが現れる前は、もし家庭内でつらいことがあったり、友人関係や恋愛で苦しんだりしたら、みんな同じだ、って自分に言い聞かせることができました」と語るのは『How To Be Alone: If You Want To And Even If You Don't』の著者、レーン・ムーアだ。

「でもSNSが一般化するにつれて、みんなが完璧な家族に囲まれていて、すべてのひとにすばらしいパートナーや親友がいて、孤独なひとなんていない、と信じるようになった。そしてこう思うんです。『マジか。独りなのも、うまくいかないのも自分だけなんだ』って」

ガーナーをはじめとするインフルエンサーたちをスクリーンで覗いたときは、彼らはムーアが挙げたすべてのものを手に入れているようにみえる。しかし現実は違う。ガーナーは、「SNSのせいでより孤独感は増した」と告白した。

インターネット上のネットワークは活発でも、そのひとが現実世界で送る日常はその限りではない。そのため、現実世界での人間関係を放棄してSNSに〈倍賭け〉し、オフラインよりもオンラインに心地よさを感じるひとが少なからずいる。結果として、タイムラインやフォーラムを通して社会的つながりを確保しようとし、〈現実〉における社会的つながりがいよいよ希薄になり、放棄される。

孤独度はSNSにおけるフォロワーや「いいね」の少なさによって目視できてしまう。それはインターネット上における存在感を、現実世界におけるそれと同じくらい重視する世代にとっては厄介だが、それは〈少ない=イケてない〉からではない。SNSでの存在感を高めてアカウントを収益化することが、弱肉強食のシステムをつくりあげているからだ。

すなわち、フォロワーや「いいね」が多いユーザーは、広告やスポンサー契約などで金銭的利益を得ることができるが、そうではないユーザーは無名という奈落の底で野垂れ死ぬしかない。こうして、SNSにおける孤独への恐怖が、現実世界でのキャリアの成功や収益が得られないことへの恐怖へ敷衍していくのだ。

Instagramで600万人ものフォロワーを抱えるジェイ・アルヴァレスのように、世界で一番透明度の高い水のなかに飛び込むだけでお金を稼げるインフルエンサーたち。その姿を家で眺めるひとたちは、ファンが増えればキャリアの成功へとつながるチャンスを手にでき、ファンが増えなければ失敗、と考えがちだ。

Instagramの平均CPM(1000インプレッション単価)は6.7ドル(約700円)と考えると、アルヴァレスのスポンサードポスト1件につき、4万2000ドル(約450万円)が口座に振り込まれると試算できる。

SNSの王座に君臨する人気インフルエンサーに広告塔になってもらうさいの料金は世間の知るところとなっているが、自らの〈映える〉生活を、何かひとつの商品のイメージを発信するために使うことで何を失うかは、いまだによくわかっていない。

「SNSという場についてあまり語られていない事実のひとつは、インフルエンサーたちが悲しみを抱えて生きているということです」と指摘するのは、インフルエンサー事務所〈Socialyte〉の創業者、ビーカ・アレクサンダー。

タイトなスケジュール、ライバルの嫉妬、収入は不安定で、すべてがコンテンツを永遠に生み出せるかどうかという自らの手腕にかかっている──。そんな状況のなかで、いわゆる勝ち組のインフルエンサーも、現実世界の出来事や人間関係から孤立していくのだ(はたから見れば彼らがそれらを有しているようにみえるとしても)。

社会的支援となる人間関係から孤独まで、さまざまなテーマを掲げた論文200本に当たったアイオワ州立大学のダニエル・ラッセル教授は、社会的なつながりの量ではなく質が、蔓延する孤独感と闘うためのカギだと主張する。

SNSが表象するあらゆるものはいったん置いておいて、フォロワーをむやみに増やすより質の高いつながりを求めるようにすることが、Z世代を襲う孤独への恐怖心に対抗するための手段となってくれるかもしれない。

This article originally appeared on i-D UK.

Tagged:
Instagram
depression
anxiety
Social Media
Gen Z
influencers