映画監督・宮崎大祐「トム・ハンクスのように、この小さな島を住みやすく楽しく変えていくしかない」【離れても連帯Q&A】

映画監督の宮崎大祐が聞いた、ハリルホジッチ式の"コロナ対策"とは? シリーズ〈Keep Distance in Solidarity 離れても連帯〉第四弾。

by Sogo Hiraiwa and Daisuke Miyazaki
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15 April 2020, 11:00am

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によって、日本ではいま、多くの文化施設が休業を強いられ、感染防止対策として、あるいは政府による“自粛の要請”によって。また「ステイ・ホーム」や「ソーシャル・ディスタンシング(距離をとること)」が求められ、人と人とのコミュニケーションはいまだかつてなく制限されています。

こうした中でわたしたちには何ができるのでしょうか。文化を維持するために、好きな人や場所を守るためには何が? 離ればなれであっても連帯するには? この"非日常"が続く春を忘れないためには? さまざまなジャンルの第一線で活躍している方々にアンケートを実施し、そのヒントを探ります。

今回は『VIDEOPHOBIA』『TOURISM』『大和(カリフォルニア)』などを手がける映画監督・宮崎大祐が登場。

KEEP-DISTANCE-IN-SOLODARITY

──新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、今あなたが属している業界や産業はどんな打撃を受けていますか? 応援・支援するにはわたしたちに何ができるでしょう?

宮崎:映画の撮影というのはある場所を多人数で密閉していわゆる「三密」の状況を作ることを前提にしているので、撮影行為自体が非常に難しくなっています。もしまた映画館が開かれる日がくるならば、僕たちの映画を見にお近くのミニシアターまで足を運んで下さると幸いです。サブスクが当たり前になりレコードが売れなくなった時代にミュージシャンはライブで生計を立てるようになりました。僕のような零細映画制作者も同様で、オンラインではなく劇場で作品を見ていただいて、ネットで話題にしていただいて、ようやく次の映画を撮れる可能性が生まれてくるのです。

──自宅待機以降に新しく始めたこと、もしくはポジティブな影響・変化がありますか?

宮崎:ポジティブかどうかは分かりませんが、ここ数年アウトプット過多だったので、いままでためこんでいて処理できていなかった映画やドラマ・古典文学などをゆっくりとインプットする時間にしています。

──コロナのビフォー/アフターで、変化した自分の考え方や、社会への認識があれば教えてください。

宮崎:自分の中に備えていた様々な距離感が変わってしまったように思います。例えるなら、今までは大きな海に浮かぶ中規模の島々を自由に行き来しながら生きているつもりでした。そしてその動線が大きな海にささやかな影響を与えているというような実感もあった。それがコロナ後、もう海はほとんど見られないのかもしれないという予感と、たまたま与えられたこの小さな島の中だけでずっと生きていかなければならないのかという無力感に襲われています。とはいえそうなってしまった以上、『キャスト・アウェイ』のトム・ハンクスよろしく、どうにかこの小さな島を住みやすく楽しく変えていくしかないのですが。

自分が携わる下部映画産業に関して言えば、コロナの影響で今後一段と在宅オンライン視聴が主流になり、劇場と制作者にとっては冬の時代になると思います。「三密」である映画祭もオンライン型へと移行し、審級や権威も失墜していくでしょう。このような急激な変化を前にして、感情的・美学的なイデオロギーだけを掲げて騒いでいても仕方がないので、政治・経済的な面から見て既に破綻しかけていた日本の下部映画産業についていま一度総括・検討すべきかと思います。ご覧のようにもはや国はまったくあてになりません。ではそこでどういうリアリスティックな手を打つべきか、考えたいです。

──自宅隔離中の人に試してほしい、オススメの行動やコンテンツを教えてください。

宮崎:真夜中の散歩ですかね。今の真夜中すぎは平時よりも更に静かなので、自己対話に没頭できます。それと定期的に太腿を動かしていると気分がクサクサしないような気がしますね。

最近ドラマ版の『ウォッチメン』を見始めました。接続と断絶が繰り返されるストレスフルなコロナ・デイズを忘れるくらいの狂暴性とニヒリズムで、一時的な現実逃避をするのにオススメです。

──2020年2月の自分に伝えたい・教えてあげたいことは?

宮崎:やっぱり世界はたまたま今の形になっているだけで、次の瞬間どうとでも変わり得るんだよ、その不確かさのいい面にだけフォーカスして諦めずに生きなさい、と。

──コロナ禍で人間の「良い面」も「悪い面」も浮き彫りになりました。あなたが見聞きしたなかで、忘れたくないと思う、印象的な出来事やエピソードがあれば教えてください。

宮崎:都内のそこそこ大きな企業で働いている友人が、上司から来たというコロナ対策のメールを転送してくれたのですが、そこには「1対1でウィルスに負けなければ、最後には勝てる」などと記してあり、ハリルホジッチ監督のことが懐かしくなりました。

──自分の今の気持ち・気分を音楽で表すとしたら?

宮崎:The Caretakerの「We don’t have many days」。(終わりから逆算して規定する生なんて嫌だけど、そう思わざるを得ない非日常ですよね)

──コロナ禍が落ち着いた後、日本の社会にはどう変わっていってほしいですか?

宮崎:難しいですね。あの3.11でも何も変わらなかったんだから、どうせ何も変わらないでしょと言いたくなりますが、何事も諦めてしまったらそこで終わりなので、ゼロでない限り、また言います。「身近な人と自分の生活を大事にしながら、もっと積極的に社会に、政治に、人に働きかけていきましょう」コロナ後、社会における人と人との距離は今までよりもずっと開くでしょう。でも、その分大切な人たちとは今までよりももっとくっついて下さい。仕事上の付き合いなどはオンラインで充分だと思います。わざわざ都心に出かけて打ち合わせする必要もない。これからはその「接続」と「切断」をうまいこと使い分けていかないといけないと思います。一方でやはり自分がいま生きているこの世界に働きかけることをやめないで欲しい。「いまは政治家よりもインフルエンサーの方が社会的影響力が強い」なんていうニヒリストもいるでしょう。しかし、自分の生活環境と未来を変えるには身近な人々に日々働きかけたり、しっかりと選挙に行くというのが一番手っ取り早い。いざとなったら国家がどれほどのパワーを持っていて、同時に何の役にも立たないかは今回のコロナ禍で世界中の人々が目撃していたはずです。だからこそ、どうか小さい世界と大きな世界の両方を大切にして下さい。どちらか一方だけだと我々の目は容易にふさがれてしまいます。グローバリズムや資本主義、西洋中心主義、現代医学や生命倫理等々、世界中の人々が今まで何の疑いもなく信じてきたものがあっという間に霧散したこの数ヵ月だったと思います。そこで、子供や老人・女性には優しくしようとか、人にタダ働きさせちゃダメだよとか、人間であれば誰もが同意できる基本的なところに改めて立ち返って、社会を再建していってもらえればと思います。というか、僕も皆さんと一緒に再建する気満々です。

最後に、コロナを機に理不尽で不合理な昭和はおわり! 昭和のおまけの平成もおわり! 理性的に、倫理的に、能動的に、ああだこうだ言いながらも、ともに生きよう!

宮崎大祐 Twitter @gener80 Instagram @daisukemiyazaki_official

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