世界中の音楽ファンが絶賛、ラジオアプリ「Radio Garden」とは?

世界のラジオを網羅するアプリ「Radio Garden」。ラジオカルチャーの今をリサーチ。クリエイティブユースから愛されるロンドンのNTS、ブリストルのNoods、ミラノのReheem、韓国のSeoul Community Radioがコロナで激変したシーンの現状、音楽コミュニティ、インターネットラジオ表現の歴史と未来について

by Saki yamada
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12 March 2021, 8:19am

今年1月、ブライアン・イーノのインタビューで絶賛されていたアプリ「Radio Garden」をダウンロードした。グーグルアースのように地球図がクルクルと回転させると、ラジオ局を意味する緑色の点が現れる。久しぶりの世界旅行気分を味わった。その後は、クラブシーンで盛り上がりを見せるインターネットラジオを検索し、お気に入り登録した。海外ではクリエイティブな若者層を中心にラジオが表現の場になっている。そこにはDJはもちろん、アーティストやリスナーなど、音楽ファンが集いそれぞれのコミュニティを作っている。それがヨーロッパを中心にアメリカや南米、アジアなど全世界に広がっている。そこでは新たなジャンルやカルチャーが生まれているのだ。

例えば、2000年代初期にイギリスのインナーシティから生まれたグライム。都市部に住む労働階級のユースの間で発展したこの音楽は、Rinse FMのような海賊ラジオ局(正式な放送免許を持たず放送のこと)を中心にアンダーグラウンドで広まった。自分の楽曲を海賊ラジオ上でシェアし、コミュニティを作り、経験を積んでいく。こうして誕生したDizzee Rascal、Kano、Wileyといった若きプロデューサーは、後にメインストリームで活躍するまでのアーティストへと育った。「UKにおいてラジオは大きな役割を果たしてる」とブリストルのNoods Radioのレオンは話した。イギリスでは多くのDJやミュージシャンが番組を持っていたり、特別プログラムに参加したり、時には周年パーティをラジオ上で開催して世界中のファンと一緒に祝っている。「ラジオはアーティストが一緒に表現していける場所。みんながアイデアや音楽を消耗するだけでなくコレクションとしてシェアできる心の拠り所だよ。新しい音楽を発見できるし、それ以上に友情を育める。彼らがアーティスト、プロデューサー、デザイナー、リスナー…誰であろうとね」。

イースト・ロンドンのダルストンに位置するNTS Radioのステーションは、世界中からアーティストや音楽ファンが集まるアイコニックなスポットだ。現在はパンデミックの影響でステーションは閉鎖し、リモートでラジオを運営している。NTSはラジオへのフラストレーションを感じたメンバーが2011年に設立した。それは地上にある様々な音楽にとってのホームを作り、リスナーが発見した曲と音楽への情熱を繋げるためだ。音楽を聞けるプラットフォームはストリーミングカルチャーの発展に伴い続々と増えているが、NTSはLA・上海・マンチェスターにも拠点を置き、よりグローバルなラジオへと成長している。

しかしより若い世代や音楽ファンの多くがSpotifyのようなサービスで楽曲を再生し、アルゴリズムで流れてくる選曲に耳を傾けている。こうした時代でのラジオの役割とは果たして何かという問いに、NTSのウィルは答えた。「キュレーションが全てだよ。中にはアルゴリズムがオススメするプレイリストや音楽で満足する人もいるけど、昔ながらのラジオのスタイルに戻ってくる人もいる。より深く音楽に夢中な人はアルゴリズムよりも人に信頼を置く傾向がある。尊敬している人がホストを務めるラジオ番組では、彼らが求めている知識やテイストに出会えると信じている」。

パンデミックによる影響は、インターネットに拠点を置くラジオにとっても深刻な問題だ。「この時期にたくさんのメディア・プロジェクトが生まれて、ブロードキャストはこれまで以上に違った表現が必要とされている。コミュニティとの関係性を続けるためにより質の高いコンテンツを作らなければいけない」と語るのは、ミラノのRadio Reheemのファウンダーであるマルコ。Reheemのステーションはイタリア初のデザイン・ミュージアムであるトリエンナーレ・デザイン美術館の一角にあり、常にアートと隣り合わせだ。3月には都市や国、文化的シーンとして発展が望まれるヘテロジニアスなオーディオ・シリーズ「Traveling Without Moving」をスタートさせ、よりオルタナティブなオーディオ表現を開拓している。音楽とアートが混じり合うブリストのNoodsがその環境でコミュニティを築くように、ラジオはミュージシャンだけで成り立つわけではない。そこには音楽のアイデアをより膨らませることができる確かなリスナーがいる。「僕らはみんなを一緒にしたいんだ。エゴは求めてないし、何かエクスクルーシブなことをしようともしてない。レベルの違う、確かな耳と情熱を持った人たちと働きたいだけ。DJになる必要はないし、ショーを続けるためのアイデアと音楽への愛があればいいんだ」。Noodsのレオンの言葉は、資本主義的な社会で奮闘する全ての音楽好きに贈られている。

ヨーロッパがこうした勢いを見せる中、アジアでもラジオ・カルチャーは盛り上がりを見せている。韓国のSeoul Community Radioはコロナ以降、これまで関わりのなかった音楽以外のコミュニティとのコラボレーションが増えている。3月には旅行サイトのTrippinと提携したり、Tommy HilfigerのデニムラインであるTommy Jeansの支援を受けVR展示会を開催するなど、ラジオの域を超えたチャレンジに挑んでいる。「コミュニティを大きくしていくためには、いつでもたくさんの奉仕や忍耐が必要だ。それが刺激的なコンテンツを生み出してリスナーを成長させて、自分のフィードバックになる。今年チャレンジすることが、今後の未来とどう繋がっていくのか想像するだけでワクワクする」と、ファウンダーのリチャードは話した。音楽コミュニティにおけるラジオは音楽以上のものを作り出している。ソーシャルメディア、ビデオ、チャットなど様々な生活のインタラクションが混ざることで形成されるプラットフォームは、人々のコミュニケーションのベースとなっている。

インターネットラジオはもはやローカルではない。世界中にホストとリスナーがいて、フレンドリーなコミュニティがある。「オンラインラジオの美しさは、君が動かなくとも君自身がその場所になりうることだよ」というNTSのウィルの言葉を思い出しながら、Radio Gardenに浮かぶ地球図を眺める。オーディオだけで構築されたシンプルなアプリケーションだが、そこには世界中で暮らす人々のラジオとオーディオへの愛が込められているような奥深さがある。それがRadio Gardenがこの何とも表現しがたい美しさを放つ理由だろう。

LISTEN TO THEIR SHOW ON RADIO GARDEN

NTS Radio (London, UK):http://radio.garden/listen/nts/wT9JJD4j

Noods Radio (Bristol, UK):http://radio.garden/listen/noods-radio/TdAjNy_3

Radio Reheem (Milano, Italy):http://radio.garden/listen/radio-raheem/ogo4U86L

Seoul Community Radio (Seoul, South Korea):http://radio.garden/listen/seoul-communtiy-radio/wdzphL4D

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