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      fashion Yuuji Ozeki 7 April, 2017

      doubletが、初夢から一夜明けて見えたもの

      今シーズンの東京ファッションウィーク、doubletのショー会場は一種異様な空気さえも纏っていた。ダントツの熱気と緊張感に包まれたコレクションの感触や今後の展望について、デザイナーの井野将之に話を訊いた。

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      まずショーを振り返ってみて
      今回は、気持ちを分かち合える仲間たちとショーを開催することが出来たということが一番の思い出です。チームのモチベーションが観客の皆さんにも伝わったのではないかと。とりあえずショーが終わった当日は、モデルやスタッフ20人位と一緒に朝まで飲んでカラオケ行って......って感じでしたね。帰宅してもショーの熱が冷めないままフワッとした気分に包まれて、ショーの映像を何十回も見返して。夢うつつのような状態でしたね。その日の夜は喪失感、終わってしまったという気持ちで一杯でした。このまま寝たら夢から醒めちゃうんじゃないかっていう、なんとも言えない気持ちになってしまって。そしたら丁度スタイリストのデミ・デムさんからも同じような内容のメールが届いてました。

      キャスティングした27人のモデルとリアリティ
      ピリピリしたムードが漂うものではなく、皆が楽しかったというショーにしたかったんです。幸い、お互いがリスペクトし合えて、納得がいくまでアイデアを出し合って高めていける、熱い人たちに恵まれた状況の中でショーを作ることができました。ビジネスとしてスタートした人間関係の筈でしたが、いつの間にか一つのチームと纏まっていましたね。
      国内での展示会終了直後からキャスティングとモデルオーディションを同時に進めていたのですが、中々しっくりくることがなく難航しました。モデルの選考にあたって重視したのは、モデルのパーソナリティです。個性あふれる面々をキャスティングした一番の理由としては、こと、日本の文化はカテゴライズしジャンル分けすることに慣れ、個性の際立っている人はレッテルを貼られて周りからの風当たりも強い、なんてことが多いと思います。しかし、その人たちには強い意志と、なびかないあふれるエネルギーがあると思っています。その一人一人の生き様を反映したような熱気とリアリティのあるその人にとって嘘ではないスタイルをファッションショーという舞台で表現したかったのです。
      待ち時間にどのような面持ちで過ごしているのかを観察していると、隣のモデルと他愛もない冗談で盛り上がれる人なのか、ずっと独りでヘッドフォン越しに音楽を聴いたりして内に籠るタイプなのか、ショーは皆で力を合わせて作る共同作業ですから間違いなく前者を選びます。あとはSNSアカウントのチェックしたり、モデルたちにお気に入りの私物を持参してもらいました。そうすることで彼等の個性がとても良く解るんですね。例えば、水面を走るボートの上に「ミスセブンイレブン」と書かれた、意味不明なデザインの缶バッヂを持ってきてくれたモデルや、何処に売ってるんだ!?っていうぐらいの厚底のファイヤー柄ブーツとか、個性的な物を持ってきてくれたモデルたちに凄くキュンキュンしちゃいました。逆に普通の流行りのスニーカーを持ってこられたりすると、何故か気持ちが萎えました......。

      ©doublet

      また、持参してもらった私物はショーでも実際に着用してもらいました。彼等が身に付けていた私物をそのまま使うっていうのは"嘘"じゃないんです。僕のブランドの服に対して違うブランドの服を合わせているという意識は全く無くて。そこで明からさまなことをしちゃうと、"良く見せよう"とする発信する側のエゴが前面に出てきてしまう気がしまうので。抵抗は無いです、"嘘"じゃないから。それを含めて僕が作っているという風に皆さんに取られてしまうのだから、その上で見当違いなことをしていたら勿論イヤですけどね。自分の作ってる服でもそうですが、できるだけ本物の古着のような、誰にでも既視感のある服に対してひねりを加えるというスタンスで作り込んでいきたいです。態とらしく造った物・繕ったことに対して、人は過敏な拒否反応を示すと思っているので。

      若き日に影響を受けたファッションとカルチャー
      高校生の頃は東京への憧れが強かったせいか、Christopher Nemeth や 20471120など、いわゆるデザイナーズ・ブランドを着ていました。雑誌「FRUiTS」が全盛期だった当時、東京の服飾専門学校に入学してみると面白い人たち沢山居て、彼等と仲良くなる度に多感な時期の真っ只中にいた僕は強く影響を受けました。SEX PISTOLSをオマージュしたパンクバンドを組んだ時は、スタッズのついたレザージャケットを着て逆立てた金髪のヘアスタイルにしたり、「さらば青春の光」に触発された時は、モッズ・スタイルを気取ってみたりしていました。その時々に聴く音楽の種類によって、その都度着る洋服のテイストやアクセサリーも変わっていくんですね。メロコアだったらスケボー、ミクスチャーやヒップホップだったらBMXだったりと、いずれも中途半端ではあったけど、思い入れもそれぞれに、それなりにありますし、一通りストリートファッションは通ってきたという自負はあります。今覚えば、熱し易く冷め易い青春時代でした。DOUBLETのデザインをしている時、当時自分がしていた格好を思い出すんですよ。その頃の思い出を自分が培ってきた経験や取引先工場が持つ高い技術力を結集させて、また新たに作り上げたらどんな風になるだろう?ってね。

      NOと言わない姿勢、師匠 三原康裕の教え
      否定することは簡単だけど、肯定の先に向こうから出てくる一言が、結果を良くしてくれることがあるかも知れないと思っちゃうんですよね。昔から完璧な設計図を書いた状態で人に物事を頼みたくないなと思ってて。70%ぐらいの状態でお願いした方が、向こうとの話し合いが持てるし、意図していない面白い方向に転ぶことがあるので、それを大切にしています。100%の状態を求めると、出来上がったものがイメージと違った場合に、どうしてここが違うんですか?というネガティブな会話からスタートせざるを得ない。このブランドを始める前、三原さんの下でアシスタントをしていた時の影響もありますね。彼は工場に行くときにアイデアを準備していかない為、その場で僕だったり工場の人たちとの会話を通じてデザインを詰めていくんです。その頃からものづくりは作り手の協力がなければ何も作れないなという気持ちが芽生えて、独立してからはより一層強くなったかなと。三原さんを見ていて、どんな時でもギリギリまで諦めない姿勢とかも身に付いた気がします。結果的にその方が良いものを発表できると思いますし。

      ドラマ「未成年」から展開されていく、90'sレイヴのファッションショー
      今期は、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件が発生して世の中が大混乱だった95年当時、放映されていたドラマの「未成年」からインスパイアされたコレクションを提案しました。様々なパーソナリティをもつ高校生たちが抱える、若さゆえの世の中に対する反発や葛藤を表現してみたかったのです。ルックブックに写っているモデル達は、校舎の屋上に佇む様子なども含めて、いしだ壱成や香取慎吾、河相我聞といったドラマの主要な登場人物に重ね合わせています。
      東京ファッションアワードを受賞した暁には、支援によりインスタレーションかランウェイショーを開催することができるので、受賞者として今回はショーを開催することにしました。ショーの二ヶ月ほど前、既に展示会で関係者の皆さんにはコレクションをお披露目しているので、また同じ服がただ歩いているだけというショーを見せる訳にはいかなったし、展示会後から進歩が無いと思われたくなかった。何よりファッションショーはエンターテイメントだと捉えていて、ショーでしか表現できない雰囲気や臨場感を伝えたかったです。

      ©doublet

      手狭な会場と完全指定の座席制
      今回はPR担当者を含め、我々にとって初めてのショー開催ということで手探りの状態からスタートしました。東京で行われるファッションショーの多くは招待客の着席位置が先着順で曖昧だったり、招待客の知り合いや友達なども意外と簡単に観覧することが出来たり、海外のショーとのギャップを感じていました。どうせやるならば思い切って、僕たちがdoubletのショーを見てほしい、気持ちを届けたい、という人だけに限ったショーを開催しようとまず考えたんです。結果的に全席指定のシーティングの方式を採用しました。僕らは東コレ特有の弊風も知らないし、偏見なども無いので、それを実行することがどれだけ難しいことなのかよく分かりませんでした。結果的に上手くいったので、今思えば何も知らない素人が作ったショーだったことが返って良かったんだなって。また、もっと広い会場でやれば良かったのではないかという声もあったのですが、前から5列目ぐらいの位置にお客さんが座った場合、モデルとの距離が遠過ぎて服がきちんと見えないんじゃないかと感じたので、敢えて小さい会場を選択しました。

      インビテーションに描かれていた招待客の似顔絵
      スタッフの皆がインターネット上で顔写真を探してきてくれて、それをメールで送ってもらってひたすら描いていく感じ。画力は上がったと思いますが、普段デザイン画やスタイル画の類は描かないです。思いついたアイデアをスケッチ替わりに書き留めておく程度ですね。

      なぜあのようなショーにしたか
      今回、一番表現したかったことは、カテゴライズされ区別され他人と比べることではなく、同じ人などいない、人の数だけのそれだけの自由なオリジナルであるということです。それは似顔絵付きの招待状から始まっていて、匿名的に招待状を送るのではなく、目や口や鼻の数は一緒でもみんなそれぞれ異なる顔や髪型、スタイルがあるということを招待状というショーのスタート地点で表現しようとしました。写真とは違い、似顔絵という表現の中では、格好良いとか格好悪いとかではなく、その人らしいかどうかが一番大事な判断ポイントになってきます。それがショーにおいて大事なことでした。
      ファッションは決まり事などなく自由であり、人の数だけそれぞれの着こなし、スタイルがあると信じています。画一化され個を否定するのではなく、個を認めることによって、カテゴライズされない、自由なオリジナルがあると。それがファッションって楽しいってことに繋がると思っています。見てくれた人に、それが少しでも届けばいいなと思ってのショーでした。

      自身が過ごした90年代と現在のトレンド
      若い子に、ファッションに対して貪欲な人が増えてきている印象です。当時の文脈を知らないからこそ目の前の物だけを見て素直にカッコいいと思える感性と今の流れが丁度クロスしている時代なんじゃないかなと。逆に彼等が90年代のカルチャーに触れることで起きてくる変化もあるだろうし、またその次の世代にとって90年代はダサいものになっているかも知れないし。時代の流れと若い子たちのエモーションが、どこまでのバランスで反映されてマーケットとして形成されていくか興味深いですね。自身のブランドをやる上では、そこまでトレンドが大事であるとは考えていません。ただ、無知であることは良くない、危険だなと思っています。その上で、知っているからこそ、それをユーモアに遊ぶことが出来たり、適切な距離感を保てるのではないかと感じます。

      海外での展開
      はじめてパリで行った海外での展示会は案外評判が良かったです。服に対するリアクションが楽しそうで、日本のバイヤーよりも素直な印象を受けました。ディテールを説明する前に、既に理解している。海外のバイヤーは服を理解するスピードが早いですね。欧米はアートなどの下地があるからのでしょうか。次回は海外でショーをしたいです。

      doublet-jp.com

      関連記事:doublet 17AW シュルレアルを着たリアル英国に上陸したdoubletの井野将之

      Credits

      Photography Shun Komiyama
      Text Yuuji Ozeki

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      Topics:fashion, fashion interviews, doublet, masayuki ino, demi demu, tfw, aw17

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