The VICEChannels

      fashion Anders Christian Madsen 19 May, 2017

      マリア・グラツィア・キウリが語る、Diorクルーズ・コレクション

      今週木曜、カリフォルニアのカラバサスで、マリア・グラツィア・キウリによる初のDiorクルーズ・コレクションが披露された。そこには、画家ジョージア・オキーフと“女性の開拓者”の精神が溢れていた。「デザイナーたちはそれぞれのメゾンが培ってきた伝統を現代的に解釈し、それまでとは異なる女性像を提案できる」

      マリア・グラツィア・キウリが語る、Diorクルーズ・コレクション マリア・グラツィア・キウリが語る、Diorクルーズ・コレクション マリア・グラツィア・キウリが語る、Diorクルーズ・コレクション

      マリア・グラツィア・キウリがDiorのアーティスティック ディレクターに就任して、今夏で1年になる。フェンシング着にフェミニズムを表現し、オートクチュールではおとぎ話さながらのガウンを見せるなど、さまざまな世界を巧みに描く彼女を、ファッション界は興味深く見てきた。この木曜、彼女がファッション界をいざなったのは、カリフォルニアのカラバサスだった。そこで、彼女の輪郭が明確になった。ロサンゼルスの丘の向こうに太陽が沈むころ、マリア・グラツィアは西部の荒野に立てたテントの下で、彼女にとって初となるDiorクルーズ コレクションを披露した。摩天楼も、ランドマークとなる塔もない、素朴な風景のなかでマリア・グラツィアが描いたのは、女性の開拓者の姿だった。彼女はこれまで、Valentino時代から現在にいたるまで一貫して、道を切り開く女性を自身の服に打ち出してきたが、今回のコレクションには、これまでより鮮明にそのルーツが描き出されていた。人間のもつフェミニニティ(女性性)を、古典的で民族的ともいえる世界観に落とし込み、断固たる決意が感じられながらも、同時に繊細さとはかなさが溢れていた。

      「カリフォルニアというと、広大な空間を思い浮かべるでしょう?」と、ショーの前にバックステージでマリア・グラツィアは言った。彼女はいつもどおりたくさんの指輪をつけていて、彼女がジェスチャーを交えて話すときには小気味良い音を立てる。「ロサンゼルスというと、オスカー授賞式やレッドカーペットを思い浮かべるひともいるだろうけれど、この地に暮らしたいと考えるひとの多くは、自然豊かな環境に惹かれるんだと思う。レッドカーペットが象徴するような人生もあれば、それとは異なるスタイルの生活もある。クリスチャン・ディオールは1947年にカリフォルニアを訪れています——そんな歴史もあり、今回のコレクションでは、そのようなカリフォルニアを見せたいと思いました」。マリア・グラツィアがカリフォルニアを初めて訪れたのは、もう数十年前のこと——まだ子どももおらず、夫とふたり、車の旅に出たのだそうだ。そこで彼女はアメリカを見た。「それは、まったく別のアメリカでした。都市だけを見ても、アメリカを理解することはできません」。カラバサスは、アメリカの魂ともいうべきものを見せてくれる場所だった——それは過去10年間にわたり『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』で描かれてきたアメリカにはないものだ(ちなみに、カーダシアン宅はショーが行なわれた場所からそう遠くない場所にあるが、彼女たちが招かれることはなく、会場に見られたセレブリティは、女優アンジェリカ・ヒューストン、歌手のリアーナ、そしてアフター・パーティでパフォーマンスを披露したソランジェ・ノウルズといった面々のみだった)。

      2018年Diorクルーズ コレクションは、画家ジョージア・オキーフの作品と、彼女の服装を題材として作られた。ほとんどヴィクトリア朝風と形容して良いであろう禁欲的な服装を好んだオキーフ——その精神は、マリア・グラツィアが描いた"開拓者の女性"の世界に見事に表現されていた。それがオキーフの風景画に見る色彩で描かれ、そこに、Diorのデザイナーに就任して以来マリア・グラツィアが作り出してきた自然モチーフが、パターン、刺繍、宝石の装飾で配された。それは、地に足ついたグラマラスともいうべき世界観だった。そして、派手な生活への渇望と、シンプルさを求めるニューエイジ的発想が共存するカリフォルニアという空間ほど、それを見せるのに適した場所はないように思えた。朝には丘の上までハイキングをし、昼にはボトックスを打ちに街へ出る——そして夜には美味しい抹茶ミルクシェイクを飲んでリラックス——ロサンゼルスは、コントラストの街だ。「それがここのリアルな生活。有名人が豪華なドレスを着てレッドカーペットを歩くのを見た次の日には、そんな雲の上のような存在のひとたちがスニーカーを履いてヨガセンターに向かうところを目撃したりする」と、マリア・グラツィアは言った。それこそは、彼女が今回のクルーズ コレクションをカリフォルニアで見せた理由のひとつだった。

      「これまで女性は、他人によってその存在を定義されてきました。それを変えなきゃ。いまこそ女性たちが自身の存在を、求めるものを自ら打ち出していくべきです」とマリア・グラツィアは言った。「この議論はファッション界にとってもとても重要なもの。デザイナーたちはそれぞれのメゾンが培ってきた伝統(ヘリテージ)を現代的に解釈し、それまでとは異なる女性像を提案できるのですから。ときにはブランドの伝統を現代的に解釈しようとしても、それが女性のライフスタイルに合わないこともある。簡単な例を挙げると、これまでのDiorのジャケットすべてがボタンを閉めて着ることを前提にデザインされている。いまの女性はボタンを閉めませんよね。前を開けることを前提としてジャケットをデザインしなきゃ。そういう視点でデザインをしなければ意味がない。現代ファッションは、そうした要素を現代的な言語に翻訳していかなければならないと思います。決して簡単なことではないですけどね」。クリスチャン・ディオールならではの美しいテーラリングをカントリードレスにあてがう——それは、リスクを伴う決断だったに違いない。しかし、発見を夢見たマリア・グラツィアが描く開拓者の女性の世界観は、そんなリスクを負ってでも作り出す価値のあるものだった。

      「シャーマンのような女性」と、マリア・グラツィアは今期のクルーズ コレクションで描いた女性像を説明する。「自然と呼応する女性を感じてもらえたと思います。わたしはそうした存在を信じています。信じないとしても、私たちは直感となにを欲しているかに敏感にならないといけない。それはすべての女性にとっても良いことだと思います」と言って、彼女は笑った。「そして、すべての男性にとっても、です」それはマリア・グラツィアがDiorのデザイナーに就任した昨夏以来、一貫して掲げてきた信条だ。カリフォルニアの砂漠に夕暮れが訪れ、夏物のフラットシューズを履いたゲストたちがブランケットにくるまり、集まってくる羽虫を手で払いのけるなか、ショーは進んでいった。休むことを知らないかのような急速なペースで動き続ける現代のファッション界にあって、女性が女性自身の心に耳をかたむける光景など、ほとんど見ることがない。2018年Diorクルーズ コレクションのショーには、その光景が圧倒的存在感をもって、あった。Diorでの過去1年間でマリア・グラツィアは自らのペースを死守しながら、デザイナーとして邁進してきた。彼女のあり方を、心からありがたく思う。

      Credits

      Text Anders Christian Madsen
      Photography courtesy Dior
      Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

      Connect to i-D’s world! Like us on Facebook, follow us on Twitter and Instagram.

      Topics:fashion, fashion reviews, dior, christian dior, california, la, calabasas, cruise, collection, maria grazia chiuri, georgia o'keefe, news

      comments powered by Disqus

      Today on i-D

      Load More

      featured on i-D

      More Features