Quantcast
Music

ヒップホップとアニメの両思い

カニエ・ウェストの『AKIRA』愛。フランク・オーシャンが影響を受けた『ドラゴンボールZ』。アニメとヒップホップの親密な関係性を探る。

ByEmma Finamoretranslated byYuichi Asami

アニメという芸術は、ラップ界のビッグネームたちに多大な影響を与え、何十年にもわたってヒップホップやその周囲のジャンルに衝撃を与えてきた。アニメ特有の空想的なテーマや、現実逃避の世界観、もしくは現実離れしたヒロイン、サンプリング向きのサントラ……、アニメにはMCやトラックメーカーたちと共鳴するものがあるようだ。

彼らの多く(ほとんどは若い男たち)は、一見すると日本のアニメが扱う文化とはかけ離れているように思われる、黒人や混血をルーツに持つ西洋の都会出身というバックグラウンドを持っている。にも関わらず、彼らはアニメの芸術性や現実逃避の感覚、「自分vs世界」という構図のなかで虐げられている主人公たちに自らを重ね合わせるのだ。

しかし、もともとアニメは人々に希望を与えるものだ。それこそは、育った場所に関係なく、多くのヒップホップ・アーティストが幼少期に求めていたものなのだろう。「アニメは、肉体の向こうにある強さや、死の先にある生、そして目に見えるものの向こうにある光景を現実のものにしてくれる」と南ロンドン出身のMCであるチェ・リンゴ(Che Lingo)は語り、アニメは自身の人生や音楽に大きな影響を与えてくれたと明かす。「それから、情熱と覚悟があれば、より良く強い自分になれて、もっと高みにいける、ということを学んだよ」

「アニメは無限の可能性をもたらし、辛い時期には希望を与えてくれる。それは、アーティストたちが日々取り組んでいることでもある。最良の曲はそうした価値観を共有しているし、そういうところから生まれている。アニメの本質は、そしてキャラクターの性格や彼らによって交わされる会話は、シンプルな感情や意志の交流を誇張するところにあると思うんだ。サウス・ロンドンに住む黒人の少年だった幼少期の俺にとって、社会では感じることが「許されない」であろう感情にまで訴えてきたよ」

自身をアニメのキャラに結びつけるアーティストも多い。彼らはミュージック・ビデオで自らが愛するアニメの主人公へと変貌をとげる。なかでも、カニエ・ウェストが「Stronger」で示した『AKIRA』への愛は有名だ。カニエはそのなかで『AKIRA』のシーンを直接的にサンプリングしている。カニエは主人公である鉄雄と同じバイクに入り、有名なオープニング・シーンへのオマージュを捧げている。

カニエはネット上でもアニメへの愛を隠さない。『千と千尋と神隠し』が『AKIRA』よりも素晴らしいと言われたとき、彼はTwitterで反論をしている。「『千と千尋と神隠し』が『AKIRA』より素晴らしいなんてことはない。ありえないね。悪いな、俺はYouTubeの人気アニメ映画Top10を見てるんだ」

大のアニメファンであるリル・ウージー・ヴァートは一歩進んだオマージュの捧げ方をしており、「Ps & Qs」のMVでアニメ風のキャラクターに扮している。

ウータン・クランのリッザ(RZA)は、アニメのサウンドトラックを制作している。アニメ『アフロサムライ』のサントラである『Afro Samurai OST』には、ビッグ・ダディ・ケインやQティップ(Q-Tip)、ウータンのメンバーであるジザ(GZA)らが参加した。リッザは2009年に発売した著書『The Tao of Wu』のなかで同アニメについて、「アメリカにおける黒人の生い立ちを描いている」と綴っている。

しかしそれも驚くべきことではない。ウータンのクルーはしばしば、アニメの要素やSF、漫画をサンプリングして自分たちの包括的な世界観を創り上げているからだ。こうしたオルタナティブな世界を創る芸術性こそ、ヒップホップとアニメの共通点だ。とりわけメインストリームの端を歩く者、すなわちアウトローな者たちのための世界を創り上げるという点において、アニメとヒップホップは類似している。2071年の太陽系を舞台にしたアニメ『カウボーイビバップ』を例に考えてみよう。宇宙船「ビバップ号」に乗った賞金稼ぎたちの冒険を描いたこのアニメは、ヒップホップと親和性の高いイギリスの〈VICELAND〉とアメリカの〈Adult Swim〉で放送されている。

アニメをサンプリングしてきたのはウータンだけではない。アニメは違った側面でもヒップホップに影響を与えている。例えば、フランク・オーシャンは「Pink Matter」で『ドラゴンボールZ』に言及し、ピンク色をしたヒロインについて次のように歌っている。「この大きくて灰色の物質/先生は訊いた。『君の女性は何?』/『ただの子供用の入れ物?』/ピンクのこと/綿飴みたいな魔人ブウ」

『ドラゴンボールZ』はラッパーに人気で、ダニー・ブラウンは「悟空を吸って、ドラゴンボールのように芽を出す」と「Shooting Moves」でラップし、チャイルディッシュ・ガンビーノは「My Shine」でこう歌う。「ぶっちゃけ、俺は経験したことすべてをラップしてる/俺が言うことすべてだ。俺は悟空みたいなスーパーサイヤ人」。ガンビーノは多くの楽曲でアニメについて言及し、ルーペ・フィアスコともアニメについてのビーフをしている(両者はその後、冗談だったと明かしている)。リル・ヨッティもアニメを語っている。彼は昨年9月にアジア系のヒップホップを中心としたメディア/レーベル〈88 rising〉のインタビューに応じ、『ドラゴンボールZ』やマニアックなアニメ、そして日本文化について語っている。

アニメは音楽面でもヒップホップに影響を与えており、多くのアーティストがアニメ映画やTVシリーズのサントラをサンプリングしている。Das Racistは「Rapping 2 U」で『サムライチャンプルー』のエンディング・テーマを引用しているし、ウィズ・カリファとスヌープ・ドッグは「No Social Media」で『ひぐらしのなく頃に』の主題歌をサンプリングし、チャンス・ザ・ラッパーは「Nostalgia」で、『新機動戦記ガンダムW』のシーンそのものをサンプリングして、ゲームボーイやクリスマスの朝についてラップしている。

ヒップホップを音楽的、テーマ的、そして文化的にアニメに使用する日本人アーティストたちもいる。15歳当時のジョーイ・バッドアス(Joey Bada$$)が、Nujabesの「Feather」について語っている映像がネット上にアップされている。Nujabesは『サムライチャンプルー』のサントラを手掛けた、最も偉大な日本人ヒップホップ・アーティストのひとりである(J・ディラと誕生日一緒でもある)。そして反対に、ヒップホップやアメリカも多くのアニメに影響を与えてきた。『アフロサムライ』『サムライチャンプルー』『TOKYO TRIBE』『パラッパラッパー』『デトロイト・メタル・シティ』など、その影響は、設定や環境、グラフィティ、野球、ブレイクダンス、そしてビートボックスにまで広がっている。

ヒップホップとアニメの普遍的な関係性は、それぞれに好影響を与えてきた。どうか、この関係がこれからも続いてくれますように。

This article originally appeared on i-D UK.