「教訓的な作品を創るのに興味はない」:ジョーン・ジョナス interview

ジョーン・ジョナスはその作品と存在の両方をもって先を行っている。そして2018年、世界はようやく彼女に追いつきつつある。今春英国のテート・モダンで開催される回顧展に先立ち、われわれはニューヨークの自宅に彼女を訪ねた。

by Charlie Porter; photos by Wolfgang Tillmans; translated by Momo Nonaka
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08 April 2018, 1:10pm

「はじめた頃には、これが50年後にどんな意味を持つのか全くわかっていませんでした」。60年代後半から活動するビデオおよびパフォーマンス・アートのパイオニアで、現在テート・モダンで大きな個展が開催されているジョーン・ジョナスは言う。ジョーンは83歳、いまもなおラディカルだ。

われわれは彼女が1974年から住んでいる、ニューヨークのソーホー地区のロフトにいる。当時ソーホーは荒れ果て、アーティストたちの多くは古い工場に住み着いていた。現在、通りを行けばそこにはアップルストアがある。レンガの壁は白く塗られ、そのひとつには白いビニールシートが掛けられている。これはジョーンの作品に欠かせない要素だ。彼女はしばしばこの前で、彼女自身と背景のスクリーンの両方に映像を投射しながらパフォーマンスを行っている。

「ジョーンはアートフォームの発明者です」。テート・モダンの回顧展のキュレーションを担当する、同館のインターナショナル・アート(フィルム)部門のシニアキュレーター、アンドレア・リッソーニは言う。「彼女は空間をシェアする新たなやりかたを発明してきたのです。彼女はきわめて男性支配の強いニューヨークの環境の中で、フェミニスト・アーティストとしてそれをやってきました。それまでとは異なるパフォーマンスの方法によって、それまでとは異なるパフォーマンスのための空間を生み出しました」。それは厳格なる知性、政治的意図、シャーマニスティックな神秘主義による作品だ。

テート・モダンの個展と同時に、ジョーンの作品の再演を含むパフォーマンスの連続公演イベントも幕を開ける。「Delay Delay」という作品は、テート・モダンの正面、テムズ河の岸辺で連日の上演が予定されている。「うまくいくといいけど」と、ジョーンは言う。「一部は実験です」ジョーンは瞬間のうちに創造する。「はじめてこれらの作品を演(や)ったとき、もう一度演るために記録しておこうとは考えていませんでした」と、彼女は言う。「記録しようと考えたのは、これらの作品がどんなものだったかそのまま捉えることに興味があったから。こんな風にふたたび演ることになるなんて思っていなかった。いまでもそういう考えで自分の作品を記録しているつもりはありません」

Joan Jonas, Double Lunar Rabbits, 2012. Photography Agostino Osio © 2017 Joan Jonas: Artists Rights Society (ARS), New York: DACS, London.

作品は唯一の時間のうちに存在する。「作品をその時のままにふたたび見ることは不可能だと強く感じています」と、彼女は言う。「二度と同じにはなりません。異なるロケーション、異なる空気の中での再演は、作品の記憶(メモワール)の再解釈ですが、作品そのものではありません。決して。現在からそれに近づく必要があるのです」彼女が作ってきた作品は誰でも受け入れる歓迎的なものだ。だがそれは直接的で安易だという意味ではない。「私は、私の作品をこういう風に見ろと人に指示することはしません。十分に時間をかけるべきですが、論理的にわかろうとしすぎてはいけません。そこに入り込み、本当に見て、耳を傾けるのです。その人次第です。別の人間は別の見方をします。私が望むのは、人々が集中し、作品に対して心を開くことです」

ジョーンの作品は20世紀のテクノロジーと共に進化してきた。最初の何本かの映像では、カメラを扱うのに他の人間を必要としていた。「ポータパック(ソニーのポータブルビデオカメラ)を買って、全部自分でできるようになりました」。1970年、日本へ旅行した際に購入したのだ。「ポータパックのテクノロジーは私の作品に強い影響を与えています。つまり、あなたは座ったまま自分自身を見ることができる、またはオーディエンスはあなたとあなたの像を同時に見ることができる、ということです。以来、私はテクノロジーを自分のイメージに関してどう利用することができるのか、どのようにイメージを変容させることができるのかに取り組んできました」

Joan Jonas, Reanimation, 2012. Photography Thomas Müller. Courtesy the Artist and Gavin Brown’s enterprise, New York: Rome. © 2017 Joan Jonas : Artists Rights Society (ARS), New York: DACS, London.

ジョーンは新しいテクノロジーを利用してきたものの、作品の中でそれらに特に言及していないという点はきわめて重要だ。「ポピュラーカルチャーに言及することは全くありませんでした」と彼女は言う。60年代後半、ポップアートの巨匠は映画やテレビや音楽をあたりまえの主題とし、彼女の同時代人の多くもそれに倣った。もしかしたらそれこそ彼女の作品が大衆に気づかれるまでにこんなに長い時間を要した理由なのかもしれない。すなわち彼女にはポップの安易な道筋を辿ることに興味がなかったことが。

「長年にわたって、大きな野外作品は距離と風景とサウンド・ディレイを扱うものでした」と彼女は言う。「Delay Delay」のような作品のことだ。「そしてビデオ作品ではペルソナとアルターエゴとフェミニズムと、カメラのためにドレスアップすることに取り組んでいます」。70年代前半、彼女は女性のアイデンティティについて考察する狙いで、性的な仮面のキャラクター、オーガニック・ハニーを創り出した。彼女の作品は継続して、しかしさりげなく、神話、儀式、ストーリーテリングというテーマを扱っている。「教訓的な作品を創ることに興味はありません」と、彼女は言う。近年、彼女は気候変動について心から憂うようになった。「私ははっきり意見を述べてはいないけれど、密かにそれに言及しています。オーディエンスは理解します。私が大声で説明する必要はないのです」

クリスタルを通して投射される「Reanimation 2010/2013」のように、彼女の映像作品の多くは舞台装置の中に収められている。オズという名の彼女の犬は、イメージの中に繰り返し登場する。ジョーンはしばしば、まず何かを撮影してから、それをどんな風に使うかを考えている。「私はイメージを収集してから、そのイメージの数々をいかにしてひとつにまとめ、意味を成すものにするか頭を悩ませます。しかし、これらの断片を収集することには理由があるのです」

ジョーンと彼女の作品と共に過ごすのはたいへん刺激的だ。それは彼女の知性と、彼女が自分のオーディエンスに期待する知性ゆえである。彼女のまなざしの真剣さと彼女が世界に向ける好奇心、そして憂慮。彼女の80年にわたる、見続けることへの欲望。「現在iPhoneによって起こっていることや、人々が自身をどう見るかにまつわる変化は、とても予測できませんでした。Instagramと情報交換も。とても予測できなかったから、これからも何かを予測しようとは思いません。私は本当にいまこの瞬間から創作しているのです」

Credits


Portrait photography Wolfgang Tillmans

This article originally appeared on i-D UK.

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