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カンザスからクチュールへ:ジェレミー・スコットの半生

自身がアメリカンドリームを手にするまでのドキュメンタリー映画も撮られているジェレミー・スコット。彼と仲良しのポップスターたち、MOSCHINO、そして自分の半生を映画で見るということのシュールさについて本人に話を聞いた。

by Courtney DeWitt
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10 August 2016, 12:33am

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毎シーズン、様々なアメリカ企業の看板を引用することで知られているJeremy Scott。マクドナルドのスマホケースからバービーのドレス、コカコーラのセーターにいたるまで、極めて"アメリカン"な企業をモチーフとした作品の数々。これは、"絵に描いたようなアメリカ"であるアメリカ中西部出身のジェレミーならではの感性とその賜物である。本当のアメリカに皮肉と真心を込めてアプローチしているのだ。

1997年、ジェレミーは自身のレーベルを立ち上げてファッション界に参入した。その名はすぐに知れ渡ることとなり、また彼が拠点としていたロサンゼルスもファッション界で注目されることとなった。しかし、それだけの成功を収めていながら、彼がカンザスに住む男の子からポップカルチャーを代表するデザイナーになるまでの道のりは、意外なことにあまり語られていない。彼を追ったドキュメンタリー映画『JeremyScott: The People's Designer』を観れば、ジェレミーが辿ってきた道のりが決して平坦なものではなかったのが分かるだろう。

この映画は、彼がファッションに興味を持ち始めた頃から、排他的なパリ・クチュール界に参入しようとした試みや、MOSCHINOでクリエイティブ・ディレクターに就任するという夢のような話が舞い込んだこと、そしてハリウッドが彼の派手なデザインに熱狂している現在までを追っている。i-Dは、映画で語られる彼の半生について、ジェレミー本人に話を聞いた。

映画はカンザスに始まり、MOSCHINOのクリエイティブ・ディレクターとなった現在までを追っています。スクリーンに映る自身の半生を見るというのは、感情的な体験ではありませんでしたか?カタルシスを感じる体験でしたか?
自分の半生を追う映画にしようと思ってつくったわけじゃないんだ。服作りに関する映画になると思っていたから、できあがった映画が「子供の頃の僕から現在の僕になるまで」という内容にまとめられていて驚いたよ。
これはドキュメンタリーで、台本があったわけじゃないから、できあがった映画を観ていて「ここはこう言えばよかったな」と思うシーンはいくつもあった。自分の映りが悪くて目を反らしたくなるシーンもね。それでも僕のメッセージが明確に伝わる映画になっているし、観客が少しでも何かを感じてくれるなら、それが映画として最高の出来上がりだと思う。

この映画には、エイサップ・ロッキーやリアーナ、カニエ・ウェスト、スージー・メンケスといったセレブリティが次から次へと登場しますね。彼らとは友達なのでしょうか?
彼らは僕の人生に深く関わっている人たちなんだ。仕事上だけの関係じゃなくてね。苦しい時は一緒に泣いて、お互いの成功を心から喜びあう仲なんだ。あまり知られていないけど、リアーナやケイティ・ペリー、マイリー・サイラス、カニエ、ロッキーにしても、みんな僕がデザイナーとしてある程度成功した後にデビューしたんだよ。彼らとはデビュー当時から一緒に仕事をしてきてるんだ。

撮影にあたり、「どこまでをフィルムに収めても良い」という線引きはあったのでしょうか?
撮影は2年間に及んだんだけど、その間、撮影クルーが僕の寝室に入ってくることもなければ、「朝起きたらキッチンにいた」というようなことも一度としてなかったよ。主に僕の仕事だけにフォーカスしていたんだ。とはいえ、仕事をしている時間が生活のほとんどを占めているんだけどね。だからあまり1人でいるところを撮られることはなかったんだ。
最もパーソナルな撮影は家族との撮影だった。家族とは仲良しだから、違和感はなかったけどね。四六時中カメラで追われるんだって考えるのは怖いことではあったけど、撮影クルーがいることはすぐに気にならなくなった。結局いつも通りの生活にカメラだけ付いてきたって感じだったよ。

Jeremy Scott on the cover of i-D's 35th birthday issue.

映画のあらすじやトーンに合わせるのはどのような体験でしたか?編集には関わりましたか?
編集にはほとんど関わらなかった。ただ、映画に登場する過去の写真が、それぞれのシーンで語られている事柄にマッチしているかどうかは確認したよ。監督のヴラッドが、僕のクリエイティビティを映画で伝えたいって話を持ちかけてくれたときから、彼にすべてを任せてきたんだ。誰かを信頼するならとことん信頼して、すべて任せる!これが僕の信条!

あなたはブランド同士のコラボレーションを始めた草分け的な存在ですが、ハイブランドがファストファッションラインを出す文化についてどう感じていますか?MOSCHINOとしてハイストリートブランドとコラボレーションをする可能性はありますか?
僕はこれまで多くのコラボレーションを手がけてきた。特にadidasとはずいぶんと長くコラボレーションをしてきている。adidasや、最近一緒に商品を出したベビーカーのCybexとコラボレーションをしたのは、彼らがそれぞれ特化した専門知識をもっていて、自分のクリエイティビティを新しいかたちにしてアウトプットできるから。スニーカーからスポーツウェア、ベビーカーにいたるまで、僕も彼らもクオリティ面において絶対に妥協しなかった。外部のブランドと組むときは特に妥協しないようにしているよ。

Photography Jeremy Scott

多忙な生活を送っていますよね。ゆっくりして花でも摘みに行ったり、バケーションに出かけたりという時間をつくれるとは思えないスケジュールですが、仕事以外に充てる時間は持てているのでしょうか?
花を摘みたいと思ったことは一度もないね!僕はこの仕事が楽しくてしかたがないし、自分が与えてもらっているチャンスを心からありがたく思ってるんだ。でも旅はたくさんするよ。この前のクリスマスはカリフォルニアで過ごしてね。どこにも行かずすべて近場ですませる休暇にしたんだよ。アユールヴェーダのスパに行って体を休めて、新しい年に備えたんだ。

今後、ファッションビジネスに関わりを持たない生活を想像できますか?
全くできないね。ファッションは常に人生の一部だったし、ずっとファッションに強い興味を抱いてきたからね。来年は自分のレーベルで初めてのコレクションを発表してから20年になる。でもまだやりたいことがたくさんあるし、相変わらず仕事は楽しいよ。好きなことを追求する。それこそが人生のあるべき姿だと思うんだ。幸せこそが真の成功だと思っているからね!

Credits


Text Courtney DeWitt
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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