Chim↑Pomが手掛ける「にんげんレストラン」の全貌

エキセントリックかつダイナミックな表現方法で、人々の日常にセンセーションを巻き起こし続けるアート集団Chim↑Pom。そんな彼らによる2週間限定のレストランが新宿・歌舞伎町にオープンした。再開発に伴い取り壊しが決まった、旧歌舞伎町ブックセンタービルの3フロアを用いて開催される。10月13日に行われたレセプションイベントの様子を潜入レポート。

by MAKOTO KIKUCHI; photos by Kisshomaru Shimamura
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19 October 2018, 6:19am

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建物の中に入ると、甘くて強い、どこかノスタルジックな匂いが嗅覚を刺激した。「この匂いはなんだっけ」と思いながら、人と人の隙間を縫うようにして進んでいくと巨大なこげ茶色の棒が目の前に表れる。体重計に乗せられたそれを見て「ああ、そうかチョコレートか」と妙に納得していると、同じように体重計に乗った女性がその巨大な塊に舌を這わせるようにして舐め始めた。アーティストの関優花による「≒」と名付けられたインスタレーションである。作家の体重とチョコレートの重量が同じになるまで舐め続けるというものだそうだ。一心不乱にチョコレートを舐め回している姿を眺めているうちに、何故だか他人のセックスを覗いているかのような背徳感に近いものが押し寄せてきた。

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一階に設置されたバーカウンターの脇には、食券販売機が設置されている。「千円札の天ぷら」と記されたボタンに気を引かれながら、横に置いてあったメニューブックに手を伸ばす。にんげんレストランのメニューには、死刑囚が執行前に選んだ最後の食事「Last meal」より一般公開されているものを再現したものが含まれている。下記はメニューからの抜粋である。

Last meal "ジュディー・ベノアノ"・・・・・・・1000円
蒸しブロッコリー4個、アスパラ2本、トマト4本、いちご4個、紅茶。

ジュディー・ベノアノ (1944〜1998)
殺人の罪で電気椅子の刑。多額の保険金殺人によりフロリダ州初の女性死刑囚となった。
刑務所収監後は他の囚人相手に聖書の勉強会などを指導。
「純白の椅子に座って法の裁きを受ける準備はできました」と言葉を残した。

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階段を上って二階へと進むと、今度は一階とはまた違った匂いがほのかに漂ってくる。くり抜かれた床部分からは一階の様子を見下ろすことができる。チョコレートを舐め回す関優花とそれを眺めているようなそうでないような距離を保ちつつ談笑を続ける客達。それはどこか渋谷駅前のビルの大きな窓からスクランブル交差点を見下ろして人間観察をするときの感覚に近い。部屋の奥の壁は一面窓ガラスになっている。そこからは歌舞伎町らしいネオンの光が差し込み、窓際で餌をつつきながら歩き回る二匹の鶏を薄暗く照らす。二階に上がった時に感じた匂いの出所はここだったのか、とまたもや少し納得をして顔を上げた。床に大きく空いた穴を挟んで反対側にあるトイレのドアが開いたままになっている。中にいる女性は便座に座って携帯電話をいじっていて、顔が液晶画面に少し照らされている。しばらくして伊東宜明によるパフォーマンスが始まった。作家が聴診器で自らの心音を聞きながらそれと同じリズムで肉の塊を叩き、スピーカーを通して聞こえてくるその振動音が会場に響く。

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階段を上がった3階の踊り場には仏像「稲岡展示居士」が展示されていた。西尾康之制作による、即身仏を目指して痩せ細ったChim↑Pom稲岡をモチーフにした作品である。一階に戻ると今度は大食いアイドルのもえあずが、アスパラガスが乗ったプレートを前に笑顔で「いただきます」と声をあげているところだった。先述したジュディー・ベノアノの「Last meal」である。吸い込まれるようにして彼女の口の中に入っていくアスパラガスを大勢の人達が眺める。その横で関優香は相変わらず脇目も振らずにチョコレートの塊を舐め回し続けていた。

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Chim↑Pomエリイの夫、手塚マキが会長を務めるSmappa! Groupに所属するホスト達による「シャンパンコール」ならぬ「人間最高コール」が始まると会場の熱気が一気に高まった。レセプションイベントも終盤に差し掛かったころ、Jan and Naomiのライブが始まる。マイクや音響器具を通さず、アコースティックギターと生の歌声のみで演奏がスタート。五感をこれでもかというほど刺激され興奮状態にある客達もだんだん静かになっていき、聴覚を研ぎすませてその音に耳を傾け始めた。

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会場を出ると、たまたま通りかかった観光客らしき人達が「NINGEN RESTAURANT」という看板を見ながら「新しいレストランがオープンしたのかしら」と話しながら去っていく。ロボットレストランの誕生により、風俗業と観光という二つが大きな存在感を持って介在する街、歌舞伎町。そこに現代アートという全く異なるジャンルを持ち込んだChim↑Pomが、この2週間を通して私達に一体何を見せてくれるのだろうか。街全体の空気さえも作品の一部としてしまうChim↑Pomらしいプレゼンテーションに感動を覚える。会場に向かう途中、「お姉さん、ホスト、探してます?」と声を掛けてきたあのキャッチの男性が、いつかふらりとにんげんレストランを訪れることがあればいいのに、と思いながらその場を後にした。

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「にんげんレストラン」
会場:旧歌舞伎町ブックセンタービル3フロア
会期:2018年10月14日(日)~2018年10月28日(日)
営業時間:PM2:00~PM9:00

https://nngn.jp/

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