ミスターストーンアイランドと呼ばれる男 カルロ・リベッティ

日本初となるストーンアイランドの旗艦店が南青山にオープンした。35年以上もの歴史を見守ってきたクリエイティブディレクターのカルロにインタビューを行なった。

by YOSHIKO KURATA; photos by mayumi hosokura
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19 October 2018, 8:38am

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腕にはたくさんのミサンガ、右手には水色のヴェポライザー。i-Dの取材と伝えると、すぐさま笑顔でウィンクをするお茶目なクリエイティブ ディレクター、カルロ・リベッティ(Carlo Rivetti)。9月14日、南青山にオープンした日本初となるStone Islandの旗艦店は、むき出しのコンクリートによるソリッドな印象を放つなか、カルロが話し始めた瞬間からその場は、彼の陽気さに包み込まれていった。ここ数年、老舗ブランドがミレニアム世代からクリエイティブを拝借することで埃を払い落とそうと躍起になっている。相性が良ければ、本当の意味でのニュージェネレーションを創り上げられるわけだが、一方で気紛れな若年層のトレンド感に困惑する危険性も孕んでいる。重厚な歴史を背負うStone Islandもまた、ミレニアム世代からも近年注目されている。しかし、カルロ曰く、トレンドを追わないポリシーと新しいものに寛容的な気質という相反なる化学反応がここには在るようだ。

——このタイミングで日本へ出店しようと思ったきっかけは?
実は戦略的な意図は考えていないけど、いつも今だと感じたタイミングで、新店舗をオープンしているんだ。それに、このショップがあることを理由に日本に遊びにこれるからね(笑)。

——コンクリートをメインにしたソリッドな店内建築について。
建築で日本と言えば、コンクリートが思い浮かんだ。だから、わざとコンクリートはむき出しのまま。床にはダイヤ型に加工された大きな石とスチール材、天然オーク材、アルミニウム、ファイバーグラス、カーボンを敷き詰めた。各国にあるすベてのStone Islandのショップの内装は違って、それぞれが各都市のカルチャーへリスペクトを表した造りになっているんだ。

——日本のカルチャー、ファッションをどのように感じている?
もともと日本の文化は好きなんだ。2001年頃まではよく来日してたよ。食文化、神社、京都・奈良など様々な日本の文化を体験し、個人的にイタリアと日本はどこか似ているように感じてる。

ファッションだと、東京の人々の関心や服装が昔とは違うものになったよね。2000年代の東京は、みんな全身同じブランドで固めていた。ある女の子は全身バーバリーを着てたりしてたけど、今じゃさまざまなブランドをミックスしてスタイリングしてるよね。消費者たちがファッションを通して自己表現し、自分たちで変革を起こそうとしてるという熱気が伝わってくる。僕らのようなブランドにとってそういう人々の知識はとても興味深く、重要なんだ。東京は様々な変化を遂げてきたけど、オリンピックも含め、さらにコンテンポラリーな方向に進み始めているように感じる。

——90年代にパニナリ、最近だとSupremeやCentral Saint Martinsの卒業生Randa Kherba との協業。時代ごとのユースカルチャーとのつながりも根付いているように感じます。
パニナリは1992年のことだね。イタリアの紳士服ではなくアメカジだけを纏っていた集団を「パニナリ」と呼んでいたんだ。彼らはストリートウェアしか着なくて、自分たちでブランドを立ち上げる人々もいた。実はそのうちの1つがStone Islandだったんだ。当時の新しいジェネレーションに僕たちのブランドはぴったりだった。でも次第にパニナリの勢いが衰えると共にマーケットも縮小して、イギリスマーケットを狙っていくようになった。そこを起点に、イギリス、ドイツなどの海外進出を始めて、そのおかげでいまだにイギリスとドイツはイタリアに次ぐ売り上げを保っているよ。その二カ国を中心に海外進出をしたことは、今でもブランドの重要な転機だった。なにせイタリアは小さいからね。それでもパニナリは今でも存在してて、ミラノに1店舗だけ、その当時の服装や自転車などを僕と同い年くらいの男性ショップスタッフたちが売ってるんだよ(笑)。これがStone Island誕生のストーリー。そして、当時と変わらず今でも僕たちの顧客は、ブランドの一部になりたいと思ってくれている。若いお客さんも鏡でロゴを確かめて、Stone Islandの一員になった誇りと、僕たちのストーリーを感じてくれるんだ。

——Stone Islandにとってのカルチャーとは?
Stone Islandと顧客、何かしらの接点を持てるもの。時にスポーツから興味を持ってくれることも、イギリスのカジュアルズがブランドアイコンになって問題にもなってたけど。例えば、アメリカであればバスケットボールは、主に男が観るスポーツだとされている、そこから紐付いてテレビでStone Islandを見て好きになる人もいれば、テレビに出ている歌手から興味をもつ人もいる。今日ではナイキやSupremeをはじめに、アメリカでは音楽とブランドがリンクしているよね。カルチャーを誇りに思う集団を「サブカルチャー」と呼ぶけれど、その共通点からうまく仕事につながることだってある。ブランドのDNAとして、クオリティ、パフォーマンス、マスキュリン的価値を表現しているから、設立当時から強い男性像を描いている。いまは、時代とともにひとつの意見に固執するのではなく、変わりつつある光景も面白い。最近では、若年層の女の子たちが興味を持ち始めてくれている姿はとても嬉しいよ。

——ファッションのトレンドを意識的に追わずとも、ニュージェネレーションが常に興味を持つ存在に。
僕たちのスタンスとしては、ファッションを追いかけないこと。遅かれ早かれ僕たちは自分たちの道を信じて進み、時代によってファッションの方から盛り上がってくれることもある。僕自身ファッショニスタではないから、トレンドによって変化を起こすなんてことはしたくないんだ。若い子たちが自発的に興味を持って、僕たちのプラットフォームに来てくれることが嬉しい。

——Stone Islandの代名詞である機能美と驚くべき新素材についてのコンセプトを教えてください。
例えば、冬場にもこもこのジャケットを羽織って仕事に行くのであれば、機能性としてより一層軽さを目指したいと思う。その一方で、デザインによる環境汚染などは引き起こしたくない。そんなことにエネルギーを使うくらいなら、リサイクルできる繊維でデザイン性と機能性を作り上げたい。それは「変化」ではなく「進化」なんだ。

——ここ数年で人間の生活スタイルだけでなく、気候も異常な程に変化してます。未来の環境に対して、Stone Islandが想像する未来の素材や進化などありますか?
新しい生地や開発に投資しないという選択肢もあるけど、僕たちはこれからもその価値を信じていく。例えば、スタートアップ企業から新しい生地を紹介したいと突然電話が来ることだってある。よく僕の年代の人たちは、もう全てやりきりったからって、変化や新しいことに挑戦せずに自分たちの道を貫き通すんだ。でも僕からしたら、なぜチャレンジしないのか不思議に思う。これがまさに僕のアプローチなんだ。僕だけでなくStone Islandのチーム全員が僕の背中を押すことで、常に次のイノベーションを生み出せる。

——新しいことを受け入れることを厭わない人柄から常にブランドへ新しい風を入れている役割なんだと感じます。自身のフィロソフィーとそこから派生するブランドのフィロソフィーを教えてください。
はっきりとは言えないけど。ミラノの大学で講師を行ってる中で、常に若年層の生徒から新しい刺激をもらってる。目の前に見える生徒から、多くのことを学べるんだ。僕がオープンな性格ってこともあってから、ミラノで道を歩いてると気軽にみんな「カルロ!」って友達みたいに話しかけてくれる。基本的に人と話すことは好きだから、そういう環境は大歓迎なんだ。ブランドのフィロソフィーもこの考え方に似てるね。僕はどちらかと言うとファッションよりインダストリアルデザイン寄りの人間だから常にデモクラティックな方向で考えてる。ひょっとしたら今までブランドがラッキーな機会に恵まれるなんてこともなかったかもしれないけど、僕が"Mr. Stone Island"とよばれている限り、ブランドと僕のDNAに幸運を巻き込み続けたいね。

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https://www.stoneisland.com/jp

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