Advertisement

ヘリゼン・グアルディオラが語る、『ゲットダウン』道場

Netflixの大人気ドラマ『ゲットダウン』で、ヒロインのマイリーンを好演しているヘリゼン・グアルディオラ。現在20歳、女優でありミュージシャンでもある彼女が、バズ・ラーマンがドラマの準備にあたり作った70sを体感する“道場アパート”や、自身初となるソロアルバムについて語った。

by Alice Newell-Hanson
|
24 April 2017, 11:50am

ヘリゼン・グアルディオラは、アニメ番組『アドベンチャー・タイム』のコブコブ星王女ランピーのモノマネが大の得意だ。異星の生物が独特の訛りといたって現代的な地球言葉で話すさまを完コピしている。「声マネが得意なの」と彼女は言う。「バズの真似も完璧よ」

ヘリゼンとわたしは、土砂降りの雨のなか、ニューヨークの街をゆっくりと車で移動している。彼女を一躍スターの座へと押し上げたNetflixドラマ『ゲットダウン』のシーズン2公開に際してパーティが開かれた翌日のことだ。前夜、遅くまでパーティを楽しんだヘリゼンは、リラックスした可愛い一面をのぞかせる。彼女が「バズ」と言ったのは、『ゲットダウン』の製作・監督を務めたバズ・ラーマンのことだ。この2年間、彼女が多くの日々をセットでともに過ごしたバズを、ヘリゼンは愛とユーモアをもって完璧に真似ることができる。

多彩な声のレパートリーを持つ彼女ではあるが、ヘリゼンをスターにまで押し上げた声は、なんといってもマイリーン・クルーズ——ペンテコステ派教会の神父である厳格な父の監視下で、飽くなき野心を胸にきらびやかなドレスの世界に憧れる少女——として彼女が『ゲットダウン』で聞かせる、魂のこもったゴスペルの声だろう。70年代末のサウス・ブロンクスを舞台に、きらびやかな世界が広がる『ゲットダウン』だが、そこに響くマイリーンの声は、ダンスフロアに流れはじめた「I Feel Love」のビートにまるで光が射すように響くドナ・サマーの声を彷彿とさせる。

ヘリゼンはパフォーマンスの世界に育った。初めて舞台に立った記憶は、彼女が5歳のとき、彼女の父であり、キューバの血を引くレゲエ・ミュージシャンでもあるフアン・カルロス(Juan Carlos)のコンサートで歌ったときのものだそうだ。「もうひとつ鮮明に覚えているのは、カナダのレゲエ・フェスティバル」と彼女は続ける。「わたしは9歳で、お父さんと一緒に4,000人の観客を前に歌ったの。これまでで一番緊張したパフォーマンスのひとつだったけど、最高に気持ちいい経験でもあった。自分がいかにステージに立つのが好きか、あのときにわかった」

小さな頃からキャリアを始めていたことが、彼女にとって女優デビュー作となった『ゲットダウン』で功を奏した。オーディションではアリシア・キーズの「Fallin'」を熱唱したそうだ。「舞台に立つ恐怖は、子どもの頃すでになくなっていた」と彼女は言う。「いまでは興奮に震えることはあっても、怖くて震えるということはない。『ゲットダウン』の撮影は大きなチャレンジだったけど、やってよかったわ。多くを学べたし、演技の奥深さを知ることができたから」

撮影を前にバズ・ラーマンは、俳優たちの役作りに役立つだろうと、彼が呼ぶところの"道場"を作り上げた。マンハッタンの東側に位置するクイーンズはグレンデイル地域——そこに建つアパートに、彼は70年代末のニューヨークを再現したという。「70年代の家具やターンテーブル、鏡なんかが置かれていたわ」とヘリゼンは話す。「ダンスを練習するための鏡ばりの部屋や、ブロンクス訛りを教えてくれる部屋、DJを学ぶ部屋もあった——70年代ニューヨークを肌で感じて学べる場所だったの」。ラーマンはめくるめくリアルな映像世界を作り出す監督として有名だが、『ゲットダウン』はその真骨頂ともいえる作品だ。

しかし、ヘリゼンは『ゲットダウン』が舞台とする時代のヒット曲には影響を受けてこなかったそうだ。ヘリゼンは自ら曲を書き、独自の音楽を追求してきた——そして、『ゲットダウン』の撮影が始まるはるか前から制作を続けているというアルバムを、今夏にもリリースする予定だ。「わたしの音楽の何とジャンル分けするかは、リスナー次第ね」と、彼女の音楽ジャンルについて訊いたわたしに彼女は答える。「そうね、オルタナティヴっていうか、エレクトロニックというか……官能的かな」と、彼女はようやく的確な表現を探し当てる。

関連記事:『ゲットダウン』が私たちに教えてくれること

『ゲットダウン』の音楽は、ドナ・サマーやアース・ウィンド・アンド・ファイアー、グランドマスター・フラッシュ、アフリカ・バンバータらの影響を受けて作り上げられているが、ヘリゼンの音楽は、彼女が「クラシック」と呼ぶ音楽の影響が色濃いそうだ。「レッド・ツェッペリン、ザ・フーといったバンドと、ドゥーワップやレゲエといったジャンルの音楽にもっとも親しみを感じる」と彼女は淀みなく話す。「最近までは新しい音楽ばかり聴いてきたんだけれど、少し疲れてしまって。リフレッシュする必要があった。香水の香りをたくさん嗅いでいたら、コーヒー豆の香りが恋しくなる——そんな感じ。わたしにとって昔の音楽は、そのコーヒー豆のようなもの」

ザ・ビートルズも彼女の音楽に大きな影響を与えたそうだ。ジョージ・ハリスンにもっとも親近感をおぼえるそうだが、リンゴ・スターにも弱いという。「リンゴってすごく控えめ。ドラマーとして控えめにしてきたのに、シングルを出しちゃうなんて最高じゃない?『リンゴも歌えるの?』って!ビートルズは全員が本物のミュージシャン。わたしの音楽には『Lucy In The Sky With Diamonds』的なサウンドも感じられるはず」と彼女は続ける。「魔法みたいな音楽が作りたいといつも思っているわ」。地元のマイアミと、引っ越し先のロサンゼルスで育ったヘリゼンは、『White Album』期のビートルズが要素を多く取り入れたインド音楽を聴いて育った。彼女が書くメロディには、その影響が色濃く現れている。

ヘリゼンの母ヴェニス・ピンク(Venice Pink)は、ヨガ講師にして栄養士でもある。そんな母のもとで育ったヘリゼンは、生まれてから現在までベジタリアンの食生活を貫いている。彼女の家族は最近になってオレゴン州へと引っ越したそうだ。雨のニューヨークで対面を果たしたヘリゼンは、その2日後にオレゴンに住む家族のもとへと帰っていった。「ユージーン郊外に暮らしているの。裏庭は林になっていて、鹿も現れるのよ!思い立ったらすぐに大自然の中へハイキングに出かけることもできるし、ちょっと車を走らせて海へ行ったりもできるの」と彼女は言う。「美しい場所。自由になれるの」

キラキラなメタリックのディスコ・シューズ、ラメ、そして豪華パーティの世界を謳歌するマイリーン・クルーズとは対照的に、ヘリゼンは、バンドTシャツとジーンズという格好で太平洋岸北西部アメリカの大自然を感じるのが好きなのだそうだ(彼女は『トワイライト』のファンでもある)。ニューヨークで渋滞にはまり、身動きが取れなくなるなどということは、彼女が望むものではないのだ。

とはいえ、彼女はグラマラスな世界を嫌っているわけではない。番組最終回でマイリーンが履いている、サイドに大きくスリットが入ったマゼンタピンクのスカートや、彼女がヒーローと崇める伝説的サルサ・ミュージシャンのセリア・クルーズのスタイリングなどを美しいと感じるそうだ。わたしたちを乗せた車が再び動きだすと、同じく隣で渋滞に身動きが取れなくなっていたタクシーのバックミラーを指差して、ヘリゼンは嬉しそうな声をあげる。そこには、何かキラキラと輝く飾りが揺れている。「見て!あのペンギン、キラキラしてて可愛い!」

『ゲットダウンパート2』は、現在、Netflixでストリーミング公開中

関連記事:ヒップホップ誕生の瞬間を描いた『ゲットダウン』

Credits


Text Alice Newell-Hanson
Photography June Canedo
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.