Photography Stefano Galuzzi

Plan C デザイナー、カロリーナ・カスティリオーニが考える〈女性と未来のための美学〉

MARNIの創業デザイナーであるコンスエロ・カスティリオーニの長女で、新ブランドPlan Cを父と兄とともにスタートさせたカロリナ・カスティリオーニ。ブランドが描くビジョンを訊くため、初の旗艦店を東京・南青山にオープンした彼女のもとを訪ねた。

by Tatsuya Yamaguchi
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22 April 2019, 9:21am

Photography Stefano Galuzzi

2018年に新たなブランドPlan Cを立ち上げたクリエイティブ・ディレクター、カロリーナ・カスティリオーニに「生活していく中で、プランBだけでなく、いつもプランCを持っているのですか?」と尋ねてみると、「そうね。前向きな性格ですから、たとえ上手くいかないことがあっても必ず道は開けると思っています」と弾ける笑顔で答えてくれた。

その場にいる私たちの表情と、流れる空気を一瞬にして解きほぐすイタリア人女性特有の朗らかさがあった。「私の名前の頭文字ですし、ファミリーネームの意味も、あなたが言うようにAとBに続く第3のプランという意味もあります。もっとたくさんの意味があるし、私たちなりのユーモアも込めているんですよ」と、ブランド名について教えてくれた。

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PLAN C 2019AW Collection

ファミリーネームからお察しの通り、彼女はMARNIの創業デザイナーであるコンスエロ・カスティリオーニの長女である。「2016年10月までずっとMARNIにいましたが、離れてからの1年半は何もしていなかったんです。たしか、ちょうど去年の1月ごろ。父のジャンニ、弟のジョバンニと3人で、次のステップをどうするかの話し合いを始めたんです」。2005年にファミリービジネスに加わったカロリーナは、MARNIでアクセサリーバイヤーやウェブサイトのディレクター、スペシャルプロジェクト・ディレクターなどを歴任してきたが、ウェアコレクションをデザインするのは初めてだ。「家族としてファッション業界の様々な知識をもっていますし、デパートから工場の方々のことまでよく知っています。その繋がりを断ち切ってしまうのはもったいないという思いが私たちにあったのです。そうして、何かの真似ではない“独自のやり方”でファッションブランドを立ち上げることにしたのです

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コレクションの発表は年に2回。ミラノ中心地にあるブランドのショールームを拠点に少人数で取り組み、ショーではなく、そのショールームでプレゼンテーションを発表していくという。「パーソナル」「クリエイティビティ」「インディペンデント」が、Plan Cを紐解く3つのキーワードだ。「決してトレンドに振り回されず、好きなものを着て、自分のテイストや個性を最大限に発揮することを大事にしています」。Plan Cのための初めてのデザインは何だったかと訊くと「ほら、あなたの後ろにあるトートバッグ。ピリーとビアンカという名前がついています。実はこのイラストは、私の娘が自分の兄、つまり私の息子を描いたもの。ですから、Plan Cのデザイン第一号は、私ではなく、娘によるものなんですよ」と笑顔で話す。その姿から、暗示的にPlan Cの目指すところが見えてくる気がした。

今年2月、南青山にブランド初のフラッグシップショップをオープンさせた彼女は、最愛の家族であり、最高のビジネスパートナーとともに東京の街を満喫しているようだった。「日本が大好きなんです。モダンなビルが林立する大都市でありながら、住宅街に一歩足を踏み入れれば小さな家が並び、緑もたくさんある。その洗練されたコントラストが素敵だなと、日本に来るたびに惹かれるのです」。世界各地の中でも、東京を最初のお店を選んだわけは「私たちにとって日本がとても大切なマーケットであるから」と言う。

「日本人女性はとてもクリエイティブな感性を持っていて、私たちが追求している美意識を丁寧に理解してくれるので」。クリーンな店内には、コレクションと共鳴する独特な色彩感覚と形のコントラストが織りなすエネルギーを感じる。まるで彼女が東京の街の魅力を語った言葉のようだ。「店内は、イタリア人アーティストのドゥッチョ・マリア・ガンビと一緒にデザインをしました。最初の出発点は、ミラノの中心地にあるショールーム。そこのコンセプトである“ゲストを自宅に迎え入れるような温かさ”に加えて、ここはお店ですから、イタリアンヴィンテージ家具だけでなく彼が手がけるコンクリートや石といったものを取り入れてコンテンポラリーな要素も取り入れたのです」

色や素材、あるいはもっと抽象的なテイストやトーンの組み合わせの美学が、コレクションだけでなくショップ空間に一貫して流れている。生まれたときからクリエイティブでアーティスティックな環境で育ってきた彼女に尋ねると、「たしかに幼い頃から触れてきたものには大きな影響を受けていますね。組みわせることは大切にしていますし、そこから美しいけど、違った何かを見出そうとしているのです。それは家族というより、ファッションデザイナーとしての母から学んだ部分もたくさんあるのかもしれません。素材の質を重視すること、ソフィスティケートされたものに想像力をミックスすること。そして、他人がどう思うかに傾倒しすぎず、自分の直感に従って自身の感性を何よりも大切にすることも教わってきましたから」

最後にカロリーナに、Plan Cとファッションデザインの未来について尋ねてみた。すると彼女は、「例えば、年間で発表するコレクションを2回に限定することが、環境への負荷を最低限にすることにつながると私たちは確信しています」と明快な口調で話す。そして少し考えた後、「先週、山登りに行ったんです。氷河に覆われている氷雪部分があるのですが、温暖化による影響が明らかに現れているのです。1920年代や30年代よりも、90年代に溶けて無くなってしまっている面積が加速度的に増えている。5年ごとに、距離でいえば10メートルは消えてしまっていると言うのです。その事実を目の当たりにして改めて、環境問題についての危惧がもっと深刻になりましたし、何よりも変化のスピードに恐怖さえも感じたのです。だから、そうですね。持続可能なビジネスのあり方を考えることには、努力を惜しまず追求していきたいですね」

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PLAN C 2019AW Collection
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PLAN C 2019AW Collection
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PLAN C 2019AW Collection