Meguro, Tokyo © Chikashi Suzuki, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

曖昧と確信:鈴木親インタビュー 後篇

6月2日まで天王洲のKOSAKU KANECHIKAにて個展『晴れた日、東京』が開催されているフォトグラファー鈴木親にインタビューを敢行。後篇は、911の前後で変わったファッション写真業界の動向、それまで避けてきた「色気のある写真」を撮るようになった理由について。

|
maj 21 2018, 9:10am

Meguro, Tokyo © Chikashi Suzuki, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

天王洲のKOSAKI KANECHIKAにて開催されている個展『晴れた日、東京』を記念して、行なった本インタビュー。前編では彼が写真家になった経緯などを聞いた。後編で語られる言葉からは、彼のインスピレーションや写真へ対する想いなどがうかがい知れる。i-D Japanでもレギュラーコントリビューターとして活躍する彼が今まで撮りおろした作品たちととともに、ご覧あれ。

〈鈴木親インタビュー 前篇〉はこちら

——写真に対して難しさを感じたことはありますか?

911後はみんなしんどかった気がする。忘れられないけど、みんなギャランティが下がってね。その前までは俺とかにもキャンペーンの仕事がくるような感じだった。そういうチャレンジみたいなことが911の前にはたくさんあって、モデルもスーパーモデルの時代から変わってもう少し個性とかに着目するようになっていたけど、911が起きてもっとわかりやすい表現になっちゃった。例えば、広告の仕事だと「写真の質が良くなくてもとりあえず出せ」ってなって。じゃあ、その埋め合わせをどうするかとなったときに、セレブリティになっていくと思うんだよね。911後もそこにフィットできたカメラマンはちゃんと活躍できたんだけど、その後、マーク・ボスウィックとかアンダースとかはあんまりやってなかったよね。最近戻ってきているような気はするけど、そういう曖昧なところを撮ってるカメラマンはすごくやりづらかったと思う。オレももう普通の仕事はやめようかなと思ったことは何回もあった。思った通りのことができないし、だったらやる意味がないなって。実際一年ぐらいは仕事みたいにはやってなかった。そのあいだ自分にそっくりな写真が日本の雑誌に載るようになって、でも自分は選ぶからあんまり儲からないっていう……そんな時期はあったかな。

——最近はそういったことは解消できていますか?

この時代にこれだけ似たのが出てきてるってことは、逆にいうと影響があると思っていいのかなと。じゃあ、「こういうのがいいから撮ってみよう」と思う人がもっと意識的になったほうが良いなと思って、インタビューに答えるようになった。なんか……器用に似たようなものは撮れるじゃないですか。ヴィヴィアン・サッセンの写真でモデルが鏡をもって道に立っている、モデルはそこに映り込み面白い反射で撮られている写真とかは、もともとウィリアム・クラインの古い写真がおそらくインスピレーション。もともとある何かを探し当てて自分なりに昇華させる方が断然意味のある写真に仕上がるはず。こんだけ情報が回っているのだからこそ、表現者は敏感になるべきだと思っています。

【from i-D Japan No.3】 KOHH WEARS JACKET YOHJI YAMAMOTO. NECKLACE AVALANCHE. BELT UNDERCOVER. JUMPER AND TROUSERS MODEL'S OWN.

——この展覧会について伺いたいですが、開催するきっかけとなったものはなんですか?

アーティストの佐藤允くんが金近さんを紹介してくれました。展覧会の話をもらってすぐに最近の写真を送ったんだけど、「スナップじゃなくて、写真集にあるような写真がいいです」といわれました。じつは昔の写真とか見返すのは好きじゃないから、面倒だなと。でも実際には見返すうちに自分でも時代性のある写真は、今のムードとも合致してるなと納得できた。

——花のシリーズを今回の展覧会に出そうと思ったのはなぜですか?

こういうものってデジタルの方がいじりやすいから、一回フィルムで撮るのをやめてたの。別にデジタルでできるし、と思って。だけど、プリントを見直して仮データを作ろうとしたら、暗すぎてフィルムを全然スキャナーが拾えないの。だからやっぱりまだプリントの方がそこの部分は優れてるというか、まだ人間の目の方が優れてるって実感した。やっぱり暗いところから弱い光を拾うっていうのはすごく難しいというか、その曖昧さにはなんか日本っぽさも感じるし、強い光じゃないっていうのも良いのかなと。だからフィルムでやる意味みたいなのも、そこで一回認識ができたというか。

——すべての写真のタイトルに地名がついていますが、その理由は?

タイトルつけるのが面倒くさくて、撮影場所をタイトルにつけた(笑)。

【from i-D Japan No.5】 RIHO WEARS ALL CLOTHING NOIR KEI NINOMIYA.

——いろんなフォーマットのカメラを使って写真を撮っていると思います。たとえばサムライに対しては、どういった魅力を感じていますか?

最初は学生の頃に、お金がないから使ってた。意図的に使おうと思ったのはみんながデジタルになってから。フィルムらしさみたいなもの考えると、コンタクトシートも見なくなったでしょ。あれと一緒でハーフ版ってのは見なくなったフォーマットだし、エディトリアルのときは精度が悪いから使いたがらないというかね。沢渡朔さんは昔、粒子を入れるためにわざわざハーフを使ってた。だけど今はもう違うから。じゃあ、ハーフだったらそのまま自分で画面構成考えてって。やっていて一石二鳥だと思ったのは、例えばファッションの撮影でスタイリストさんが組んできた服を全部写してほしいというときに、全部綺麗に写そうとすると素立ちみたいなことになるじゃない? それか、歩いているかね。でもハーフだったら、横位置二枚でぶった斬れるでしょ。だけど全部映る。一枚に写ってるから、それで成立する。あとあとで組み替えられないから、らしさも出るし。

プリントについての再認識もありました。製造中止になってしまったフィルムにはその頃自分が好きだった特徴っていうのがちゃんとあったんだなとか。プリントすることにより、より芸術性を高めるということが認識できた。

SOSUKE WEARS T-SHIRT LOUIS VUITTON

——2000年代始めの頃はネガを使用していますが、最近はポジを使っていますね。いまの世の中の流行りとは違う動きをするようになったのはなぜですか?

いちばん大きいのは、『Purple』でヌードとジュエリーでやってくれって言われたときのこと。(安藤)サクラちゃんがモデルをしてくれてうまくいったんだけど、そのあとヌードとかセクシーとか多分撮れないなと思って。そんなときに、学生のときに読んだユルゲン・テラーのインタビューを思い出した。彼は最初たぶんモノクロの、ヨゼフ・クーデルカみたいな写真だった。それからどう脱却したのかっていうと、それに書いてあったのは、ニュートンの真似をしてみたら脱却できるんじゃないかって思ったみたいなんだよね。それを置き換えたら、日本だったら荒木さんでしょ。だから荒木さん何を使ってるんだと思って、調べたら全部ポジでやっていた。だからとりあえずポジで全部やってみようかなって思ったら、案外その色気というか湿気っていうか、日本の色……退廃的な湿気みたいなものがポジの方が映りやすくて、生々しく映るというか。

【i-D Japan No.4】 GUAMA WEARA ALL CLOTHING Y'S.

——それまでは色気からかけ離れている印象があったのですが、あえて避けているような感じだったんでしょうか。

避けてた、嫌いだった(笑)。

——なぜ避けていたものにあえて向かっていったのですか?

写真でいちばん強いのは、時代性がないもの。その方が写真として成立する。例えばヌードのポートレイトって時代が関係ないじゃない? その“服が写ってるけど、そっちに近い”ものをやってみようと思ったのがきっかけかな。

でもオリヴィエの依頼がいちばん大きかったかも。最初言われたときは「え!?」ってなって、まず最初にいちばんセクシャルを感じない人は誰だと思ったらサクラちゃんだったから、彼女を撮った。それでサクラちゃんに聞いてみたら、ちょうど事務所を辞めている時期で「私は良いけど、お父さんに聞いて」って言われて、奥田さんがいるところに聞きに言ったわけ。んで「娘さんをください」みたいな感じで会いに行って(笑)。でもすごく気まずくて、挨拶だけして結局切り出せなかった。だけどモモちゃん(安藤モモ子)がやった方がいいって言ってくれて、結局撮影できた。そのときに足りない部分は何かって考えたけど、撮ったときに違和感もあんましなかったから、これはこれで楽しいんだなって。でもセクシーにしようと思って撮ったことは一回もない。現場で笑える写真のほうがセクシーになる気がする。

鈴木親展「晴れた日、東京」
会期:2018年4月21日(土) - 6月2日(土)
時間:11:00〜18:00(金〜20:00)
休廊日:日、月、祝
会場:KOSAKU KANECHIKA
住所:東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 5F