Photography Mitchell Sams

創始者とそのミューズの関係にせまる Givenchy 18-19AWクチュールコレクション

メーガン・マークルのウェディングドレスを手がけたことで注目を集めた、クレア・ワイト・ケラーが、創設者ユベール・ド・ジバンシィとそのミューズ、オードリー・ヘプバーンに賛辞を送った。

by Osman Ahmed; translated by Aya Takatsu
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04 juli 2018, 11:00am

Photography Mitchell Sams

フランスの公文書や史料が所蔵されているフランス国立中央文書館の、生け垣に囲まれた庭園で、昨日、Givenchyがクチュールのショーを開催した。この3月にこの世を去ったメゾンの設立者ユベール・ド・ジバンシィへのトリビュートである、自身2度目のクチュールショーのために、クレア・ワイト・ケラーがメゾンのアーカイブを研究したことを考えると、この場所の選択は理にかなったものだ。

LVMH傘下のメゾンで、その指揮を任されることとなったデザイナーが、その始祖であるクチュリエに実際に会ったのは、クレアだけ。リカルド・ティッシの後を継いだ彼女だが、それ以前にはジョン・ガリアーノ、アレキサンダー・マックィーン、ジュリアン・マクドナルドなどが同ポジションに就任している。彼ら全員が男性であるという事実は別にしても、その誰も、メゾンの設立者に関心を示したり、手間いらずながらエレガントなセパレーツで知られるジバンシィ自身の作品に取り組もうとはしなかった。

今回ついに、ワイト・ケラーがそれを成し遂げてくれた──デザイナーのふくらむ自信を示すかのように。「彼にあって話をしたこと、そして彼が3ヶ月前に息を引き取ったという事実が、今起きていることのように感じられたのです」と、彼女はバックステージで語った。「彼が残したものは、本当に賛美されてしかるべきものですから。オードリーのために彼が何をしたかは誰もが知っていますが、そのほかの仕事は知られていないのです」

ジバンシィはただのクチュリエではなかった。彼はそのキャリアを大きく飛躍させた、個性あるクリエイターだった。ジバンシィにとって、ミューズよりももっと大きな存在だったのがかのオードリー・ヘプバーンだ。彼らは生涯を通じての友人であり、ヘプバーンが望んで彼を仲介者に選んだり、その葬儀では棺の担ぎ手をするほど近しい関係だった。ジバンシィが、大きな目をした彼女を、ヨーロッパ的エレガンスの典型に変えてしまった張本人だということは、世界中で知られている。

そして、ヘプバーンはGivenchyサロンの重要人物であり続けた。ファッション的にも仮装としてもやり過ぎだということから、誰もネタにしない高嶺の花だったのだ。しかしワイト・ケラーが彼女を呼び戻した。しかもショー自体を彼女が歌う「ムーン・リバー」用に仕立て上げて。

しかし、今期のショーはオードリーだけをテーマにしているわけではない。ワイト・ケラーは、ジバンシィのアイコニックな作品も掘り下げている。体を包み込むほど大きなケープ、鋭利で建築的なライン、そして、非対称的でドレープのついたフラウンス・ドレス。彼女は、ジバンシィの遺産(レガシー)をどのように21世紀に蘇らせられるかを考慮しながら、再解釈したという。

どうしたら、今の時代にもこれほどモダンに見える服をつくることができるのだろうか。その答えは素材にあった。硬く、より伝統的な素材が、新鮮に映るのだ。柔らかいフランス製ベルベット、パネルレザーでライニングされた星型のパステルフェザー、打ち伸ばした金属の胸当て、そして全体を貫くすっきりとしたカッティング。きらびやかな装飾が施されながらもシャープなルックスのメンズのオーバーコートに象徴されるように、多くの点において、それはミニマリズムと豪華さをあわせ持つものだった。「あれほどクリーンで建築的なラインを得るのは難しいことでした」と、ワイト・ケラーは話す。「ピュアであることはとても難しいのです」

その場にいた多くの者は、ほのかに80年代の香りを嗅ぎ取った。もっと言えば、80年代のシンセ的レンズを通した、40〜50年代パリふうのクラシックさだ。カトリーヌ・ドヌーヴとデヴィッド・ボウイが出演した1983年の映画『ハンガー』を思い出してみるといい。この作品は偶然にも、ワイト・ケラーの2018年秋冬プレタポルテのインスピレーションにもなっている。直線的なショルダーライン、超シャープなスリット、折り紙のようにきっちりとした折り目が、それを表現している。

メーガン・マークルのためにデザインしたウェディングドレスで世界中を驚嘆させて以来、ワイト・ケラーが今もっとも話題のデザイナーのひとりとなっているのは言うまでもない。今や誰もが彼女に注目し、女優から公爵夫人へと転身したこの女性の真似をしようという未来の花嫁が次から次へと出てくることになったのだ。彼女がそんな人たちに贈ったものは、コクーンシルエットのフードがついた白いシフォンガウン。ショーのなかでもスター級のアイテムだったが、同時に、ショーの最後に登場した、バックデザインが『ティファニーで朝食を』の有名なオープニングを思わせる黒いベルベットのスコティッシュ・ウィドウガウンと、はっきりとしたコントラストを成していた。誰がGivenchyの永遠のミューズであるのかを思い出させてくれる、的を射たコレクションだ。そしてそれはもちろんヘプバーンであり、これからも変わらない。

This article originally appeared on i-D UK.