20年目に東京で:TOGA 2018SS

TOGAの20周年を祝福すべく駆けつけたゲストたちは、夜の国立新美術館に誘われた。12年ぶりの東京での、一度きりのショー。そこには、回顧するのではなく、現在進行形のTOGAの姿があった——。

by Tatsuya Yamaguchi; photos by Shun Komiyama
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18 October 2017, 1:02pm

2017年10月17日(火)午後8時。偉大な建築家、黒川紀章が設計した最後のミュージアムである国立新美術館を会場に、TOGAは20年間の「感謝の気持ち」を込めたショーを開いた。最低限の照明だけが灯る巨大建造物の入り口に向かって、800人以上のゲストが列をなす光景はどこか異様な気配であった。国立新美術館のコンセプト「森の中の美術館」に習えば、シルバーの招待状を片手に、深い森の奥に、すっと導かれていくように。

暗闇と化した美術館に、水が激しく流れる音(これは雨音だろうか?)と、耳を澄ますとヒールが地面を打つ音が聴こえる。まもなくして、煌々とした光を背に、長いエスカレーターからモデルが降りてくる。月の光が照らしたようなランウェイを初めに歩いたのは、片方の肩を大きく露わにしたイレギュラーシャツ、ハイウエストでわずかに裾広がりのパンツ、そして、あえて付け加えるなら「女性性」をまとったメンズモデルだった。過剰表現ではなく、このファーストルックが今回のショーのディレクションをすべて物語っていたのかもしれない。デザイナーの古田泰子、そしてショーのスタイリングを手がけた北村道子によって表現された、性のボーダーレスだ。去る9月にロンドンで発表されたウィメンズコレクション——テーマは「HOLES, SUITS, CRUMPLED」だ。

Paul Freegardによって、曲調が転換されていく。Nina SimoneやArca、Moderatなど一貫して、どこか劇場的でロマンチックなサウンドに包まれながら、ウィメンズを着たメンズモデルと、鋭い技巧により変形されたブリティッシュ・テーラリングを着るウィメンズモデルが現れる。多くの対比を通して、服がすでにステレオタイプなジェンダー感から解き放たれた、TOGAにしかない性別を内包しているのだと宣言しているようにも思えた。例えば、プリーツスカートに空いたレッグホールから伸びる「肌」は「第三の皮膚」と呼称されていた。そこにきっと、古田の身体への現在進行形の眼差しが、すっと立ち上がってきているのだ。

ここはロンドンではなく、東京だ。いま、ここにしかない、アウラをまとったショーは、黒人公民運動に力を注ぎ、その唯一無二の歌声で歴史に名を刻む伝説的黒人ジャズ・シンガー、Nina Simoneの「I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free(自由になりたい)」で終幕を迎えた。——ところで、ショーのオープニングとフィナーレで聴こえた、少しく足早なヒールの音は、立ち止まらず、次のクリエイションに歩みを進める、古田泰子の足音のようだと空想した人はいるだろうか。