僕がプリンスに教えてもらったこと。

プリンスの逝去を受け、i-Dのファッション・フィーチャーズ・エディター、アンダース・C・マドセンが、ポップの巨匠を追悼する。

by Anders Christian Madsen
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22 April 2016, 1:17pm

ファッション批評家の私には、偉大なミュージシャンの逝去について書く資格などない。なにがプリンス(Prince)の音楽を彼の音楽たらしめたかを見極めることもできなければ、それを語るだけの言葉も持ち合わせていない。

語れることと言えば、10代だった私が、当時「ゴールデンファイブ」と呼んでいた不動のスーパースターにプリンスも入っていたということくらいだ。マイケル・ジャクソン、マドンナ、デビッド・ボウイ、マリリン・マンソン、そしてプリンス。この人選に異議を唱えるひともいるだろう。しかし、彼らには共通点がある。まるで魔法かと見まがうほど、素晴らしい個性の持ち主ということだ。奇抜な格好をしたレディ・ガガやケイティ・ペリー、ニッキー・ミナージュが、「変わり者と馬鹿にされる」と悩む若者たちに「あなたたちはそのままで美しい」とエールを送る30年前。プリンスと他の4人のスーパースターたちは、彼らの格好や行動、歌の内容などをまだ受け入れる態勢すらなかった世界に、果敢に立ち向かった。自らの容姿やその意味について、彼らは決して語らなかったが、当時の若者たちはそこに大切なことを読み取った。いまの若者が現代のスターたちに感じるのと同じように。

小柄なからだに、エキセントリックな髪型、フルメイク、ハイヒール、そして闘牛士がはくトレロよりもさらにタイトなディスコパンツに身を包み、本名の一部をとって、プリンスと名乗った。自らをプリンスと呼ぶ彼をいぶかしんでいた人たちは、その超常的な音楽を聴くやいなや、ことごとく降伏していった。プリンスは、音楽史に一時代を築いた。そして、自身を偽らずに自己表現をするパフォーマーたちの道を切り拓いたのだ。ジェンダーや人種などの壁が崩れようとしている、変化と革命の風吹く現代。プリンスはその風を30年前から呼び込んでいたということを、私たちは改めて胸に刻んでおかなければならない。彼はモーツァルトやストラウスに匹敵するほどの素晴らしい音楽を、私たちに届けてくれた。そして、自己表現と個人の自由に革命をもたらした。容姿はセクシュアリティとは無関係で(彼は以前「ヒールを履くのは、女の子たちが喜ぶから」とまで語っている)、服装を釈明する必要など誰にもないのだと私たちはプリンスから学んだのだ。

きらびやかな80年代が去り、90年代にミニマリズムが世界を席巻したとき、プリンスの個性はより鮮明になった。マイケル・ジャクソンやデビッド・ボウイ同様、プリンスが生まれ持ったエキセントリシティは、簡素を良しとするカルチャーとした当時のスタイルに相いれず、その存在感はそれまでに以上に浮き立った。私がプリンスをはじめとする「ゴールデンファイブ」に打ちのめされたのはこの頃だ。70年代や80年代へのノスタルジアではない。「順応しないで、"自分自身"でありたい」という彼らの在り方に感動したのだ。きらびやかな輝きの乏しい時代、彼らは異星人とでもいうべき存在となり、輝かしい姿を現わしては、私たち地球人を魅了した。

プリンスが他界して数時間が経った今、Instagramは、ボウイとプリンスを続けざまに失った悲しみに溢れている。きっと、明るく輝く一等星−−マイケルももちろん含んで−−こそ燃え尽きるのが早いということなのだ。彼らのような巨星の光は、徐々に消えゆくようなものではない。爆発によって一瞬にして無くなるしかないのだ。プリンス、マイケル、そしてマドンナは、全員1958年に生まれ、地球上最大のスーパースターとなった。ダイアナ妃が他界した後、この3人を超えて有名な者はこの世に存在しなかった。ローマ法王や各国大統領でさえも彼らを超えることはない。なぜなら、人類が急速な進歩を遂げていた変革の時代、彼らこそがモダンカルチャーを動かしていたからだ。彼らはタッグを組むこともあった。マドンナのアルバム『Like A Prayer』で、プリンスは共演だけでなく、プロデュースや共演、共作も行った。また、アルバム『Bad』ではマイケルとの共演も予定されていた。彼らはお互いを尊敬しあい、お互いを守り続けた。「まだマドンナがいる」と、私は自分に言い聞かせている。マドンナが今後、1958年組のほかふたりの遺志を胸に、旗を振り私たちを導いてくれる、と。

今後数週間、数ヶ月にわたり、私たちはプリンスの音楽を讃え、「Little Red Corvette」に合わせて踊り、「Nothing Compares 2 U」に泣き、「Purple Rain」のコーラスを声が枯れるまで歌うことだろう。しかし同時に、「Sexy MF」や「Get Off」を聴いて、今日私たちが謳歌している自由を手にするために、彼が負ったリスクに、あらためて感謝するべきだろう。そして、プリンスのようなアーティストが現れる時代が再び訪れることを祈ろう。奇抜さと派手さが、ポップスター工場のミーティングから作り出されたものではなく、あくまでも超人的な才能を持った人間の自己表現である時代。溢れんばかりの才能が輝く、そんな時代が再び到来することを。私の人生が始まる以前に、プリンスは私の人生を変えてしまっていた。そんなふうに、彼は世界を変えてしまったのだ。プリンス、新たな世代をパープルレインへと導きたまえ。

Credits


Text Anders Christian Madsen
Photography Herb Ritts, Prince, 1991
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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