「新しいロシア」を語る4人の写真家

ロシアの新世代クリエイターたちが、アートで“新しいロシア”を作り出す。

by Alex Manatakis
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13 September 2016, 1:01pm

スターリン政権下で起こった社会主義リアリズム運動。そこに生まれたプロレタリアから、90年代西側諸国文化の再解釈に至るまで、ロシアのクリエイターたちはこれまで常に、政治と文化に歪められる現実を主題としてきた。旧ソ連の崩壊から25年を経た今、多くのクリエイターが、生まれ変わったロシアの文化的意義を模索する手段としてフォトグラフィーを用いている。"豊富な文化遺産"というイメージが強いロシアだが、若いロシア人のクリエイターたちは、どうすれば若い世代のロシアを表現できるだろうと考えているようだ。彼らを取り巻く世界が刻々と変化していく現実——それをなんとか理解しようとフォトグラフィーを用いる若き才能たちに、i-Dは話を聞いた。

Gosha Pavlenkno モスクワ

今日のロシアに、なぜフォトグラフィーが重要な意味を持つのでしょうか?
新しいカルチャーを作り出してくれるからだよ。僕たちには新しいカルチャーが絶対的に必要なんだ。僕が思うに、ロシアにはまだモダンカルチャーというものがない。ドストエフスキーやマヤコフスキーといった古い文化的なものはあるけど、僕たちの世代に訴えかけるようなものはないんだ。クリエイティブであるということ——例えばフォトグラフィー——は、モダンカルチャーを形成するための新しい原理を示してくれる。変化というのは、クリエイティビティによって引き起こされるんだっていう原理をね。

クリエイティビティにおいて、ソ連時代から何が変わりましたか?
ソ連が崩壊して、ロシア人は新しい経験を渇望していたんだ。西側諸国の音楽やビデオ、映画、写真、ファッション——目に入るすべてを吸収したんだよ。本当のところ、あの時代のロシアで生まれたクリエイティブムーブメントのすべては、西側諸国を再解釈するということが核にあった。そういったビジョンを通してすべてを見ていたんだ。今でこそオリジナリティが生まれているけどね。

ロシアのフォトグラフィーの未来に見る希望とは?
ロシア独自のヴィジョンというものを築きたいね。例えば、スカンジナビアやイギリス、パリ、イタリアといった土地では、写真を勉強し始めたらすぐにその土地特有のスタイルが作品に滲み出るようになる。ロシアにも、一見してすぐに「これはロシアで撮影されたものだ」ってわかるようなフォトグラフィックスタイルが出来上がるといいなと思うんだ。

@goshapavlenko

Dmitri Pyrahin サンクトペテルブルグ

あなたの作品にはパワフルなエネルギーを感じますが、それはどこから来るのでしょうか?
エネルギーこそは、僕が写真で見せたいもののひとつです。音楽を聴けば体が自然と動いてしまうのと同じように、エネルギーを感じてもらえるような写真を撮りたい。写真を通して、人々にエネルギーを届けたい。でもそれ以上に、僕は写真でエネルギーに変化を生みたいと考えているんです。見る者が持つエネルギーをより良いものに変えて、そのひとをイキイキとさせるような——それがたとえ1分足らずであっても、僕の作品を見ているときにはその人がイキイキしてしまうような、そんなことがしたいんです。

ソ連崩壊で、クリエイティビティにはどんな変化がありましたか?
これは単純に僕の考えでしかないけれど、ソ連が崩壊してから、クリエイティビティには勢いがなくなったように思いますね。ゴルバチョフ時代、ペレストロイカの只中で、ロシア国民は大きな変化を体感していたわけです。抗議運動をしたり、戦ったり抵抗したりね。今では、政治的な意味でロシアはマシな状態にあるし、生活している僕たちもこれといって困ることがない。だからここで生まれる写真には情熱がなくて、つまらないんです。戦ってまで得ようとするものがない。重要な芸術というのは、情熱か痛みからしか生まれないでしょう?

Margarita Smagina サンクトペテルブルグ

あなたは作品を通して現代ロシアの何を訴えているのでしょうか?
ロシアには様々な偏見が存在しています。作品を通して、人々の心を開いていけたらと思っています。私がやっていることは、サブカルチャーを人々に届けるということ。ソビエト・モダニズムと海外のポップス業界がミックスされてできあがっているのが今のロシアのサブカルチャー——ゴルバチョフとエルヴィス・プレスリーなんて、素敵な組み合わせでしょう?

フェミニズムがロシアの創造力に影響を与えたと思いますか?
フェミニズムによって、ロシアでは女性の存在意義が認識されました。それはとても素晴らしいことです。フェミニズムがこの国の文化に紹介されなければ、私は今ごろ工場で働きながらたくさんの子供を育てて——ひょっとするともう死んでいたかもしれません。私はフェミニズムも平等の権利も、平等の就労権利も支持していますが、なんでもそれに結びつけるような狂信的姿勢ではありません。私の作品はすべて、女性とコラボレーションによって制作されています。スタイリストもモデルもメイクもヘアもすべて女性なんですよ。

クリエイティブ・ロシアが抱える最大の課題とは?
ロシアでは最近になってようやくアートが認められたという経緯があるので、今でもクリエイティブな世界に身を置くひとは多くありません。古い世代には、アートを一種の感染症のようなものと考える傾向があって、幼少の頃すでにクリエイティビティの芽が摘まれてしまうんですね。だから、クリエイティブになる勇気がない。勇気のある作り手たちはみな海外へ出ていってしまうんです。

@smaginamargarita

Lexa Kim モスクワ

あなたの作品ではロシアの何を訴えているのでしょうか?
モスクワのような大都市から一歩離れれば、この国には旧ソ連の残像が今でも色濃く残っているんです。様々なサブカルチャーがいまだに息づいている地域ばかりです。少しでも個性的で目立つ格好をしていれば、ここでは批判されます。私は作品を通して、ロシアがとてもオリジナルな存在なんだということを、そしてとても特別でユニークなファッションとスタイルを持っていることを見せていきたい。ロシアの粗野なイメージを払拭して、私たちも世界のファッションの一部なんだということを欧米諸国にも感じてもらいたいですね。

あなたの世代は、ロシアで最初のインターネット世代ですね。インターネットはロシアをどう変えたのでしょうか?
グローバリゼーションで国境はなくなり、ロシアはもはや世界の文明社会から孤立した冷たい存在ではなくなりました。独特の世界観がありながら、誰に対してもオープンな国です。アートのレベルも、世界に引けを取らないレベルに達していると思います。個人的な感覚でいえば、インターネットの登場によってコミュニケーションの限界がなくなり、世界のどこにいてもそれが問題にはなりえなくなりました。インターネットで世界は小さくなって、新しい可能性がたくさん生まれたと思います。

ロシアのクリエイティビティに見る未来の希望は?
グローバルカルチャーの発信源として、ロシアはいまようやくスタート地点に立ったのだと思います。ロシアのアートがとてもオリジナルだからこそ、可能性は未知数。今後どんな風に成長していくかが楽しみですね。

@lexakim

Credits


Text Alex Manatakis
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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