ブルックリンの折衷ビート:ソフィー・タッカー、来日インタビュー

グラミー賞ノミネートなどで注目を浴びるニューヨーク発の男女デュオ、ソフィー・タッカーが初来日。ブラジル音楽や動物からインスパイアを受けたダンス・ミュージックで魅了。自由奔放なステージを展開する2人に話を訊いた。

|
24 July 2017, 8:25am

デビュー曲「Drinkee」が突然、2017年のグラミー賞のベスト・ダンス・レコーディング部門でノミネートを受けたソフィー・タッカー(Sofi Tukker)。ニューヨークはブルックリンをベースとするデュオが、BACARDÍ主催のイベント"Over The Border"ローンチパーティ出演のため来日した。ハウス、ロック、ラテン音楽などの要素を取り込み、英語のみならず、ポルトガル語までを駆使した折衷サウンド。ジュジュ的で中毒性のあるビートに乗せて、異国情緒溢れるダンス・ミュージックを展開する。主にヴォーカルを担当する女性Sofi(自然児そのものといった雰囲気の美女)と、プロダクションを担当する男性Tukker(驚くほどの長身)。一見まるで異なる星で育ったかのような2人に、その接点を探った。

来日するのは初めてですよね?
Sofi(以下S):そうなの、だから楽しくって。昨日から街ブラや買い物をして、この服も東京で買って、この靴もそう。今はちょっと時差ボケ気味だけど、いえ、大丈夫よ(笑)。

日本といえば何を思い浮かべますか?
Tukker(以下T):僕は子どもの頃から、なぜだか日本に興味を持っていて、10歳くらいのときに相撲についての研究発表をしたこともあるよ。去年、「世界で一番行きたい国は?」と尋ねられたときも「日本」って答えていたよ。
S:私は今、Machaにハマっている。日本で言うところの抹茶とは違っていると思うけど、ニューヨークですごく流行ってるの。あちこちで飲めるわ。

ソフィー・タッカーとしてこれまでに訪れた国々で最も印象的だったのは?
S:そうね、やはりブラジルかな。元々私はブラジル音楽や文化に興味を持っていたから、やっと訪れることができて感動したわ。ブラジルでは、オーディエンスが私たちの曲を一緒に歌ってくれて、すごく暖かく迎えてくれたの。

Sofiは元々、ボサノバなどのブラジル音楽を歌っていたそうですね。
S:私が影響を受けてきたのは、オールドスクールなボサノバ歌手やソングライターたち。ジョアン・ジルベルト、カエターノ・ヴェローゾ、マリア・ベターニア。それにフォーク音楽からも大きな影響を受けている。特に好きなのがFiest。彼女の声の使い方やソングライティングに魅せられてきた。Amadou & Mariamなどの西アフリカ、マリの音楽にも興味を持ってるわ。
T:僕はその時々でいろんな影響を受けてきたよ。ヒップホップやラップにすごくハマっていた時期もあれば、パンクだったり、インディロックだったり。そして今はハウス・ミュージックに行き着いたという感じだね。

2人が一緒に音楽制作をするようになったきっかけは?
T:ある日、彼女が歌ったステージのその直後の出番が、僕のDJタイムだったんだ。彼女のバックを務めたミュージシャンも知っていたから、ラスト・ナンバーになったときに、僕が次にかけるオープニング・ナンバーのイントロと重ねてみたんだ。すごくスロウな曲だったけど、どんどんピッチを上げていって、それに合わせて彼女もどんどん速く歌わなきゃならなくて、それが面白かった。それが最初の出会いかな。次の日には、彼女の曲のリミックスを僕が手がけることになり、それ以来一緒に制作してるんだ。
S:そして最初に完成した曲が「Drinkee」だった。それまで友人だったわけではなくて、友情は後から育まれたという感じかな(笑)。

普通とは逆ですよね。「Drinkee」が最初に完成した曲だったというのも驚きですが、いきなりグラミー賞の候補に選ばれました。
T:うん、まったくの想定外だったよ。クールだと思ったし、授賞式にまで招待されるとはね(笑)。
S:私たちへの注目度も一気に高まったわよね。インパクトは大きかった。

Sofi Tukkerのサウンドを言葉で説明するなら?
S:う〜ん、難しいわね。他の人に説明してもらった方が気楽なんだけど(笑)。そうね、踊るための音楽であることは確かよ。
T:僕たち2人のクリエイティビティを掛け合わせたって感じ。まったく異なる方面から僕らは来ているから、その両者がぶつかることで、想像していなかったものが生まれる。どちらかひとつが欠けても成り立たないサウンドだよ。パンクやロック、ラテン音楽の影響もあって……。
S:詩の影響もね。

そう、詩といえば、ポルトガル語で歌われる「Drinkee」の歌詞は有名な詩の一節なのですか?
S:今ではきっとそうじゃないかしら(笑)。チャカル(Chacal)は、知る人ぞ知るって感じの詩人。ブラジルでは現代詩に興味のある人なら、みんな知っている。
T:でも現代詩に興味のある人が、一体どれだけいるか(苦笑)。
S:とはいえ私もそのひとりよ。しかもものすごく興味を持ってるひとりだわ(笑)。

「Drinkee」というタイトルは妙な綴りですが、どのような意味が?
T:僕らが勝手に作った造語なんだ。
S:ブラジル人は、お酒などの"ドリンク"を英語で言うときに"ドリンキー"って発音する。ポルトガル語が大抵そういう感じで語尾を伸ばす発音だから、「Drinkee」って綴ってみたの。

ミュージック・ビデオもカラフルでユニークですよね。
T:僕たちにとっての初ビデオだったから、ソフィー・タッカーの音楽や世界観を上手く伝えたいと思ってね。監督のサム・メイソン(Sam Mason)は僕たちの他のビデオやアートワークも手がけてくれている。
S:グリーン・スクリーンの前ですべて撮影したわ。
T:プラントなどを大量にスキャンして、その映像と合成してるんだ。

あのパッドを吊るした打楽器は?
T:あれはBook Treeって呼んでいる。僕らのために特別に作られた楽器で、パッドの部分は実際の本が使われていて、いろんな音が出るようになっている。ステージでも使っているよ。見えない手元で叩くより、見える形でパフォーマンスしたいと考えたんだ。

EP『Soft Animal』では動物がテーマに採られていますが、あのEPに限ってのテーマなのか、それともグループとして一貫したテーマなのでしょうか?
S:このグループのテーマだと思う。動物的な野性?に回帰するというテーマに魅了されるの。動物は、思考よりも感覚を第一に行動するでしょう。私たちがステージに立って音楽を演奏したり、皆と共有するときには、そういう状況を生み出したいの。その瞬間を楽しみ、踊ったりする、より原始的な状態よね。
T:次のアルバムも今作のような各曲に動物のテーマがあるわけじゃないと思うけど、僕らの楽曲には常にどこかに動物やジャングルといったテーマが見え隠れすると思うんだ。

先ほど、友情は後から育まれたと話されていましたが、2人を結びつけている絆とは?
T:僕たち2人は全然違うタイプだけれど、だからこそ互いに補い合っているという感じかな。僕は、彼女のフリー・スピリットなところに魅かれるよ。
S:幼い頃から欧米あちこちの国に移り住んで、外国人ばかりのいるインターナショナル・スクールに通っていたせいかしら。私は彼のスポーツ狂なところから、学ぶことって多いわ。チームワークやリーダーシップ、それに集中力や時間厳守とかね。
T:彼女はいつも遅刻しがちだからね。あっ、それって日本じゃ最悪なんだって?(笑)。僕はバスケットをはじめ、スポーツなら何でも観るのもやるのも大好き。
S:私はスポーツに興味を持ったことがなかったけれど、彼はどこの国へ行っても、言語が理解できなくてもスポーツの話題があれば誰とでも意気投合できてしまう。それを見て、いつも感心させられるわ。音楽と同様、世界の共通言語ってことよね。

フルアルバムのリリース予定は?
T:まだ確かじゃないけど、そのうち発表できるかな。でも、この1年間たくさんの楽曲を制作してきたから、このあと次々と新曲を発表していく予定だよ。
S:ビデオもいっぱい発表するわ。最新曲「Fuck They」は、Grimesの兄弟(Mac Boucher)と制作しているの。ある意味、新境地じゃないかしら。

Credits


Text Hisasi Murakami
Photography Takao Iwasawa