「役立つものだけじゃ息苦しい」:田平一真インタビュー

i-D JAPAN NO.3にて登場したクリエイターたち。今回紹介するのは、第9回沖縄国際映画祭の招待作品『MOBOMOGA』を監督した田平一真。制作資金など参入障壁が高く、映画監督を若くして目指し活動し続けるのは難しいなか、彼が映画で表現したいものとは何なのか。

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jul 26 2017, 1:15pm

映画を撮るまで大学ではどんな勉強を?
宇宙関係の仕事に就職したくて、九州大学で航空宇宙工学を専攻していました。宇宙飛行士の若田光一さんが先輩に当たります。学科では飛行機やロケットの設計を行なう学科だと言う触れ込みだったのですが、機械をいじるばかりでなんだか楽しめなくなってしまって……。当然宇宙工学の仕事は狭き門。バンドでオリジナル曲をやっていましたが、自分は音楽で食べられるほどではない。将来どうするか悩んでいました。

そこからなぜ映像表現の道へ?
20歳のときに「A Take Away Show」というミュージックビデオのシリーズに出会ったんです。Arcade Fireがエレベーターでゲリラ演奏したり、それ以外でも名うてのミュージシャンがゲリラで路上を歩きながら演奏したりするようなドキュメンタリーの音楽映像企画シリーズで、その映像に感銘を受けました。バカみたいですが、その動画を見て自分も映像を撮りたいと思うようになったのです。たまたま大学にはデザインの学科にCMで使えるような機材、カメラがありました。独学で触らせてもらいながら、さらに映画という表現自体にもハマっていって、映像を学べる大学院へ進学しました。

最初は音楽から映像の世界にのめり込んで、どうして映画を撮ることに?
映画は文学や音楽、ファッションなど色々なジャンルがクロスオーバーする総合芸術だと気がついたのです。もともと音楽が好きで映像の魅力に取りつかれましたが、そのことに気がついてから楽曲の魅力を増幅するMVではなく、ゼロからイチを映像で撮ってみたくて。自分がそのとき考えていることを脚本にして『どうでもいいけど』という14分のショートフィルムを作品にしました。映画に出るキャストも友だち、脚本は自分で描くという作業をしました。完成してから制作資金でお金を使い果たしたし、せっかくだからと応募した第8回沖縄国際映画祭の<クリエイターズファクトリー U-25部門>で準々グランプリ賞をいただいて。グランプリを含んだ3作品を今年の第9回沖縄国際映画祭の正式招待作品に選ばれて『MOBOMOGA』を作ったのです。

映画撮り続けているのは賞を取ったからでもある?
はい。まだ映画をとりはじめて、1年も経ってないタイミングでしたが、映画を撮り続ける後押しになりましたね。

映画表現という活動を通じて伝えたいことを、アンケートでは「夢なんてなくていいし、生きているだけで十分ということ」と回答していました。もう少し詳しく教えてください。
よく、小中学校で「努力して夢に向かえば勝ち取れるよ」という旨の話を読み聞かされるじゃないですか。ジョージ・ルーカスの成功エピソードとか。でも僕は「夢を持て」という言葉は好きじゃない。基本的には一握りの人しか夢を掴めないのに、無理に夢を見つけて向かって突っ走っても、もし叶わなかったらどうすれば良いのかと思っています。でも、僕は本当は別に夢がなくてもその日その日を楽しく生きていければいいし、何かやりたいことがあったら、それに合わせて目の前の生活を変えていけばいいじゃん、と思っています。だから「映画監督で食べていく!」と決めるより、いま楽しいから映画を撮っているという自然な気持ちなんですよ。一方で映画業界に一石に投じたいという野心もありますが。

映画『MOBOMOGA』では、「表現の自由」が規制された近未来を時代背景にそれに抗う若者の表現集団を主人公に据えました。
はい。でも、そこまで意味やメッセージ性を前面に出しすぎずに、くだらない瞬間や余白を残した表現を選びました。メッセージは絵像から汲み取ってもらえたらいいなと思うだけですね。この時代は役立つもの、意味のある表現が求められている気がするんですが、役立たないものやバカバカしいものがないと人生面白くないと思うんですよね。

これから田平さんの作品を見る機会はありますか?
そうですね。まだ仕込んでいる段階ですが、東京や各種主要都市でも映画を見られる機会を設けられたらいいなと思ってます。

MOBOMOGA

Credits


Photography Ai Ezaki
Text Hiroyoshi Tomite