Photography Tasha Tylee

友達が泣く姿を撮り続けた写真家

ターシャ・タイリーの最新シリーズ『Cry Baby』には、心の傷、それを直視する辛さ、感じて認めるということ、涙、友情という人間の普遍的な感情と行動が捉えられている。

by Wendy Syfret
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21 November 2018, 3:34am

Photography Tasha Tylee

大切なひとが涙を流しているのを見るのは、誰に辛いものだ。友人が涙を流す姿を数週間にわたり写真に収め続けたターシャ・タイリー(Tasha Tylee)は、どれだけ辛かっただろう。これらの写真は、グループ展『The Break Up Party』への出展作として制作されたもの。このグループ展の参加アーティストたちには一軒家のなかの一部屋がそれぞれあてがわれ、そこで作品を生み出すことを条件として制作期間が与えられた。

タイリーに割り当てられたのはバスルームだった。「シャワーで涙を流すひと」というテーマに行き着くのには、それほど時間はかからなかったという。タイリーは、近しい関係の知人や友人を呼び、彼らがシャワーを浴びながら過去と向き合う姿を写真に収め始めた。プロジェクトが進むにつれ、タイリーはひとに涙を流させるエキスパートになっていったという。目には見えない心の傷を捉えようという、スイートながら悲しい試みについて、本人に語ってもらった。

———まずはこれを訊かなければインタビューを始められないような気がしますあなた自身は涙もろいですか?
子供の頃は、泣かないようにいつも感情を抑えていました。でも、大人になって、母を亡くしたり、他にも色々な経験をして、泣くこと、感情を外に出すことにはひとを癒やす力があるんだと気づいたんです。そういう意味で、今回のシリーズは自分を表現したという側面がある一方で、友達にセラピーを施すプロジェクトでもありました。今回のプロジェクトを通して、友達をより深く知ることにもなりました。一緒に泣くことでしか生まれない心の結びつきがあるんです。

———ということは、写真に捉えられている涙は本物なのですね?演技はなかったのですか?
ほとんどはリアルな涙です。なかには、泣くことに抵抗を示したひともいたけれど、そういう人たちにはまずタマネギを切るところから始めてもらいました。人前で「泣いて」と言われて泣くのに抵抗があるのは当たり前です。だからまずはタマネギを切って泣いてもらってから、「悲しい記憶を呼び起こすような思い出の曲はない?」と訊いたんです。いったん涙が流れ始めてしまうと——あれは不思議な状況でしたね。目の前で友達が泣いていたら、慰めたり話を聴いてあげますよね?でも私は写真を撮り続けないといけないんですから。

———ひとの悲しい記憶に耳を傾けつづける日々だったようですが、彼らの思い出に共通点などはありましたか?
多くは別れの記憶や、付き合っている相手に言われて傷付いたひと言でした。

———写真の下に手書きで書かれているのは、彼らを傷つけたひと言なのですね。心の傷を直視するよう彼らを仕向けるのは、感情的に疲れる作業でしたか?それとも慣れてしまいましたか?
慣れることはなかったですね。とはいえ、最初の数人の撮影では特に感情的になってしまったように思います。目の前で私の大切な人たちが涙を流している——カメラのこちら側で私も泣いてしまいました。みんな、「なんであたながそんな悲しい顔するのよ」と言っていましたが、「あなたが悲しい顔をするからよ。しょうがないでしょ!」と——。

———被写体はどのようにして選出したのでしょう?
友人もいれば、私が単に惹かれたひと、それから以前付き合ったことがあるひとやただ深いつながりを感じるひと、と様々でした。まだ「作品を完成させた」という手応えがないから、たぶんここからさらにこれをプロジェクトとして突き詰めていくことになると思います。ひとの顔はとても興味深くて——写真に収めたい、捉えたいと思っているひとが、まだたくさんいます。そんな興味深い友達がたくさんいることはとてもラッキーなことですね。

———タマネギを切るところから始まったという撮影ですが、終わりはどのようなものだったのでしょうか?過去を改めて直視し、感情に触れた後の彼らがまた普通の生活に戻れるよう、寄り添ってあげたのでしょうか?
ええ。お茶を一緒に飲んだり、家で映画を見たりして、一緒に時間を過ごしましたよ。もう大丈夫とわかるまで、抱きしめたりしましたね。感情に触れる時間をともにしただけで、あれだけ親密になれるというのは不思議な体験でした。でも、何人も撮影しなくてはならない日もあったりして、そういう日には、撮影が終わったらハグをして別れたひともいました。

———撮影後、被写体の方たちに気持ちの変化はあったのでしょうか?
心が軽くなったひとが多かったようです。なかには悲しい気持ちが続いたひともいたようですが。

———悲しみのエキスパートですね。
そんなことないですよ。ただ、誰もが同じような経験をして今に至っているんだなと、なんだか温かく、心強い気持ちになりました。みんなタフを装っているけれど、内では常になにかが起こっているんだなと。誰にでも、その後の人生に影響するような言葉や瞬間の記憶がある。皆が同じように悲しみを抱えて生きていて、涙は、私たちがみな似ているということを象徴しているなと思いました。

Credits


Text Wendy Syfret
Photography Tasha Tylee
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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