ピエール・ユイグのSF的ドキュメンタリー

さまざまな制作媒体による表現で、現実とフィクションの関係を探る現代アーティストのピエール・ユイグ。彼の代表作を楽しむことができる展覧会が、6月25日(土)から表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京で開催されている。

by Sogo Hiraiwa
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27 June 2016, 1:00am

ピエール・ユイグ(Pierre Huyghe)というアーティストをご存知だろうか? 1990年代初頭から、インスタレーションや彫刻、フォトグラフィーから映像作品など、あらゆる制作媒体を縦横無尽につかい、現実とフィクションの境界を探ってきた、フランスを代表する現代アーティストである。近年は、ポンピドゥー・センターやメトロポリタン美術館をはじめとした世界屈指の美術館で個展を行い、今日のコンテンポラリー・アートを語るうえでは欠かすことができない存在となっている。そんな彼の展覧会が、6月25日(土)から表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京で開催されている。

ピエール・ユイグは、これまで多くのコラボレーションを通して作品の制作に取り組んできた。その相手は、建築家にミュージシャン、科学者と広範にわたる。彼が扱うテーマも、科学、音楽、哲学、建築、SF、文学など幅広い。その多岐にわたる表現ゆえに作家としての全体像が掴みにくいユイグだが、今回開催される『Pierre Huyghe - Untilled Host』展では、彼が繰り返し作品に取り入れるモチーフや、視点、テーマが凝縮された2本のフィルム作品を観ることができる。

『The Host and the Cloud』(2009-10)は、かつて民芸博物館として使われていた建物で、1年かけて撮影された作品だ。2時間に及ぶこのフィルムを、ユイグ本人は「ある実験」と呼ぶ。フランスで実際に起こった裁判などの出来事を、資料館の職員に扮した役者たちによって再現され、そのいくつもの断面的なシーンが交錯していく。ハロウィンとバレンタインデー、そしてメーデー(労働の日)の3日間には、建物内に観客を入れ、そこで実際に起こった出来事も記録された。

もう1本の『A Way in Untilled』(2012)は、ドイツの公園で撮影されたもので、ユイグの彫刻作品『Untilled(Liegender Frauenakt)/未耕作地(横たわる裸婦)』も登場している。この女性像の頭部は蜂の群れで覆われており、彫刻の周りでは、有機物が腐敗していく。人工物から自然までがフラットに登場し、タイムレスな印象を与えるこの映像には、ナレーションはなく、主役を演じるのは蛍光ピンクの脚を持つ犬だ。

『Untilled Host』展は、フォンダシオン ルイ・ヴィトンがキュレーションを行っている『Hors-les-murs(壁を越えて)』プロジェクトの一環として企画されたものだ。フォンダシオンは、現代アートに特化した芸術機関で、所蔵するコレクションと展覧会を通じて、世界中の人々に現代美術で活躍するアーティストを紹介している。『Hors-les-murs』は、これまで公開されてこなかった所蔵作品を紹介する企画で、ミュンヘン、ヴェネツィア、北京、そして東京を巡回して開催される。

今回展示されている2本の作品は、フォンダシオンが所蔵しているユイグの作品のなかから、アーティスト本人と共に選定した作品だ。同団体の管理責任者を務めるジャン=ポール・クラヴリ氏は、「ゴッホやアンディ・ウォーホルを展示するのは簡単なことです。そのほうが、人気もあるでしょう。しかし、日本の観客やアーティストにとって物足りないものにもなりかねません」と話す。「私たちのミッションは、フランスの現代作家のベストを世界に紹介することです」

同氏は「映像作品はじっくり時間をかけて観てほしい」と今回の展示について語る。「みる時間を鑑賞者が決められる絵画や彫刻とは違い、映像を観て、感じるには時間が必要なのです。それは作者の狙いでもあります。鑑賞に時間をかけることで、そこに作品との関係性が生まれるのです」

本展覧会は、今後さらに注目を集めていくであろうピエール・ユイグの作品を観ることができる貴重な機会だ。会場は、フォンダシオンのフランスチームが調整した映像と音響により極上の視聴空間に仕上がっている。目にも耳にも楽しいSF的ドキュメンタリーをこの機会に、ぜひ堪能してほしい。

Pierre Huyghe - Untilled Host

会期: 開催中 − 2017年1月9日(月・祝)
会場: エスパス ルイ・ヴィトン東京
住所: 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前 5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7F
開館時間: 12:00‐20:00
休館日: 表参道店に準じます
入場料: 無料
www.espacelouisvuittontokyo.com

Photo Credits
A Way in Untilled: (c) ADAGP, Paris 2016
The Host and the Cloud: (c) ADAGP, Paris 2016 for the work of the artist. Photo Ola Rindal

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Text Sogo Hiraiwa

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