見えないものの可視化「FUTURE NATURE」:YOSHIROTTENインタビュー

「今やりたいことを思いっきりやりました、それをどうぞ楽しんでください」

by YOSHIKO KURATA; photos by KO-TA SHOUJI
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27 March 2018, 11:45am

正直YOSHIROTTENとは何回か話してみたり感じ取ってみたりしない限り、ミステリアスなイメージのままで終わっていただろうと思う。幸いなことにも「GASBOOK33 YOSHIROTTEN」を執筆するにあたり度々話を聞いたり、彼の大型個展「FUTURE NATURE」に向けての4ヶ月という制作期間に様子をみたりしていたことで彼の頭の中のほんの一部が分かるようになってきた(まだまだ未知のイマジネーションがそこには潜んでいるとも感じる)。彼はグラフィックアーティスト、アートディレクターという肩書きを持ちながらも、それら言葉にとらわれずに幅広く国内外で多忙に活躍してきた。そして年を重ねるごとに彼の妄想を実現できる力も規模も大きくなっていることを感じる。今回の展覧会「FUTURE NATURE」の会場・TOLOTは実際に数字にすると400坪というから並大抵のアーティストでは立ち向かえない広さだろう。すべてはYOSHIROTTENの仲間となにかを制作すること、人を楽しませることが好きな気質から成り立っているように思える。圧倒的な新しい景色を見せる個展「FUTURE NATURE」についてレセプションの余韻に浸りながらその翌日に話を聞いた。

——今回の個展「FUTURE NATURE」を開催するにあたり、制作はどのくらいのスピードで進んでいったの?
制作期間 約4ヶ月に対して200個くらいはグラフィック作ったかな。毎日10個以上作るって決めて、1個ずつに時間をかけるというより出来るだけ速度を大事にして、最終的にメディウムごとに精査してアレンジして詰めていった。

——ある程度鍛えられてないとそこまでのスピード感でグラフィックを毎日作り続けるのは苦しそうだね。20代の頃のデザイン制作への関わり方はどのようなものだった?
専門学校卒業後、デザイン会社「ポジトロン」に勤めてた。その傍らで自分もTAKAKAHNと音楽ユニット「YATT」としてパーティのオーガナイズをしたり、イベントのフライヤーデザイン制作も行ってたよ。平日はデザイン会社、週末はイベントという日々を送ってる間の時間をぬって、お金にならないものでも常に作品は作り続けてた。同時に友人と一緒にZINEを作ったりして、名刺代わりにポートフォリオのような感覚でイベントで会うひとたちにZINEを配ってた。それで誰かが僕の作品を気に入ってくれたりして、実際にそういう経緯から「BOYS NOIZE」のジャケットデザインの仕事は決まった。過去になにかデザイン賞を取ったりしたことはないけど、自分の遊び場で会う様々な人には作品をできるだけ積極的に見せてきたかな。

——今回のレセプションでも来場者800人越えという数字よりも様々なジャンルの人が集まっている、楽しんでいる様子は滅多にない光景だったと思う。
「今回は展示自体が『現象』になったらいいんじゃない?」とある人に言われて、確かに「今やりたいことを思いっきりやりましたよっ、それをどうぞ楽しんでください!」というような気持ちでやりきりって、みんなの記憶に残る、心を動かす展示になればいいなと思ってた。20代の頃からお世話になってる先輩たちからも「本当に10年間やり続けるとこうなるってことを改めて感じました」と連絡をいただけたり、友達からも勇気をもらったって言ってもらえたり、あのときの熱気を800人以上の人と共有できて嬉しかったな。

——初期作品では当時影響を受けていたパンクの記号が見受けられたけど、次第に自然の記号を強く感じるようになってきたよね。「見えないものの可視化」といういままでのコンセプトから派生して、今回の展覧会では人間に不可視な新しい光が入った景色をどのように形にしてるの?
今回の展覧会では、それら景色を展示するだけではなく、いかに外(可視光線以外の世界)に持ち出すか考えた。例えば1つめの部屋「光の記録」では、1977年に米NASAが打ち上げた無人宇宙探査機「ボイジャー2号」に搭載された円盤「ボイジャーレコード」へのオマージュとして「FUTURE NATURE盤」を制作してる。宇宙に向けて放たれた「ボイジャーレコード」に地球人についての写真や記号が記録されたように、この展覧会に纏わる要素を記号化し記録した。他にも描いている景色は、そういうふうに地球外の場所に地球の情報をヴィジュアルとして持っていってるところにインスピレーションを受けて制作を始めた。

——「宙の窓」と「記憶の彼方」については、4年前の個展「PUDDLE」の時覗き込んでいた景色に、鑑賞者が入り込むような感覚を体感できるよね。
「宙の窓」は、「光の記録」で制作された作品が宇宙に放たれて飛んでいる最中の風景を複数の視点から描いたもの。飛行船の窓からの景色か、コックピットのモニターに映った映像なのかもしくは作品を受け取った宇宙から地球におりてくるときなど、僕たちとは異なる視覚からみた景色を映した。静止画のようにごく僅かに変化する景色は、僕たちの考える時間の概念とは違う次元で動いていて。その空間の中で僕たちが時間を認識できるのは、会場が赤色から黒色に変わる瞬間—太陽とすれ違った瞬間のみ。そして、それらの窓から見る景色に入り込めるのが「記憶の彼方」。レセプションでは「そういう世界に訪れた人々」という情景も作りたかったから、その景色に包まれている来場者を記録することも作品の一部だった。

——“宇宙”や”地球外”というワードが出てくるけど、決して一般的に私たちが認識してるそれらの分かりやすいモチーフは使わないよね。それが「いままでに見たことのない景色」を創ることへの意志にも繋がると思うんだけど、自分の作品に一番影響しているものは?
僕のアートワークに影響しているものは、ゲームからでもなくポストインターネットでもない。自然の太陽、月、山、水などもとからある巨大で圧倒的なものが変化したり、なにかそこにぶっ刺さってあったり、色が変わってたりする光景や想像に一番興奮を覚えるんだよね。

——今回の展覧会を開催してみて、今後展覧会を開くならどのような妄想を膨らませてる?
今回の展示をなにか自然と絡ませたミステリーサークルのような規模で実現したいと考えてる。そうなってくると、もはや地球上がキャンバスになるんだけど(笑)。その展示をグーグルマップの衛星で記録してオンラインを介して世界中誰でも観れる展示にしたいな。でも、もちろんちゃんと現地に行くって鑑賞者の心も動かすような作品も作りたい。あとはグーグルマップだけではなく、個人で使える衛星も持てたら面白そうだよね。世界同時多発で自然の中に展示を行って、そこに人が訪れている光景、雨が降っているときの状態など自然偶発的な変化も交えて展示を記録していきたい。

YOSHIROTTEN Exhibition 「FUTURE NATURE」
会期:2018年3月10日(土)- 3月29日(木) ※会期中無休
時間:11:00-19:00 (入場時間は18:30まで)
会場:TOLOT heuristic SHINONOME
住所:東京都江東区東雲2丁目9-13
入場料:1,000円(ポストカード付き) ※未就学児は無料

「FUTURE NATURE Night Version」
3月22日(木)〜29日(木)までの1週間、18時~21時限定でオープニングレセプションで行われたインスタレーションを再現したスペシャルプログラム「Night Version」が披露されます。

GASBOOK 33 YOSHIROTTEN
本展の開催と同時に、GASBOOKからYOSHIROTTEN二冊目となる作品集を出版。会期中会場にて販売中。

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