僕らはただの“箱”:AmPmインタビュー

Spotifyでの再生数650万回以上。驚異的なスピードで人気を獲得した日本人覆面クリエイティブユニットAmPmは、右脳と左脳を絶妙に融和させ、新時代の音楽の楽しみ方を提示する。

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31 augusti 2017, 8:53am

日本人であるということ以外、AmPm(アムパム)は謎のベールに包まれている。シロクマの覆面をつけた二人組のように見えるが、実はデュオではなく、不特定多数によるクリエイティブユニットを自称している。
2015年3月、デビュー曲『Best Part of Us』をリリースするやいなや、音楽配信サービスSpotifyで驚くべき再生数を記録。さまざまなジャンルのアーティストとフィーチャリングしながら、トレンド感あふれるキャッチーなサウンドで世界中のリスナーを魅了している。
メジャーレーベルに属さず、AmPmのほとんどのリスナーは海外。この稀有な新鋭アーティスト集団は、マスメディアに依存することなく、クリエイター自らがマーケティングを担うという独自のプロモーションで、世界のアーティストたちと肩を並べている。覆面に隠されたAmPmの素顔に迫った。

はじめに、 AmPm 結成の経緯を教えてください。
右:僕らは二人で音楽とデザインを企画・制作する会社をやっているのですが、今の会社を立ち上げる前、僕は洋服の販売員をしていて、彼は人材会社で働きながらDJをやっていたんです。最初はお客さんと店員さんの関係だったんですけど、ある日彼から「『音楽の甲子園』をやりたい」という相談を受けて。二人で日本各地のミュージシャンやクリエイターたちに会ってリアルな声を聞く、という旅に出たんです。そんな流れで、2015年の3月にとりあえず作ったのが『Best Part of Us』です。

音楽の制作はどのように行なっているのですか?
右:トラックメイカーの仲間たちとコミュニケーションをとりながら作っています。初めて聞いた人でもサビをすぐに口ずさめるとか、小説を読んで頭に映像が浮かぶように、音楽を聞いてその世界観が映像で浮かび上がるような曲作りを意識していますね。ジャンル問わず色々な音楽を聞くので、トレンドを加味しつつ、新しい音入れるようにしています。

経歴的にはファッションが専門分野だと思いますが、音楽に軸足を置いた理由とは?
右:今はAmPmは音楽ですけど、これからはファッションもやりたいし、AmPmという"メディア"として発展できればと思っているんです。ミュージシャンのスタイルってファッションにつながるし、そこからカルチャーが生まれる。音楽って目に見えないものだけど、だからこそ聞いてくれる人に感動を与えられるし、気持ちを揺さぶる力が強いと思うんですよ。

お二人のルーツ・ミュージックは?
左:僕はフランキー・ナックルズ。僕はソロ名義としても、ソウル、ジャズ、ハウスをベースに音楽をやっているんです。会社員時代も昼は会社、夜はクラブに入り浸って、若かったので毎日一人でAmPmしてました(笑)
右:僕はビートルズがものすごく好きでした。高校生の時、ポール・マッカートニーのライブに苦労して行きましたよ。初めての海外旅行がロンドンだったのと、ファッションと音楽が結びつきやすいアーティストが多いので、イギリスの音楽はジャンル関わらずよく聞きますね。

世界的にも覆面アーティストは増えているようですが、覆面をかぶるメリットとは?
右:今は便宜上二人でやっていますが、AmPmが別に僕らである必要もないんですよ。頭脳としては僕らだけど、中身は変えてもいいなと。「We are creative unit」って名乗っていて、二人とは言ってないんですよ。フランチャイズ化して同刻に違う場所でライブをする、とかもできる。僕らはただの"箱"なんです。
左:次は覆面も変えちゃいますし(笑)

バックグラウンドが見えないというデメリットもあるのでしょうか? 例えばゲットー出身だったらそれも武器になるし、逆にボンボンでも(笑)
右:徐々に知っていってもらえばいいかなと。僕らの曲ってヴィジュアルで聞かれていないし、余計な情報で曲のイメージを変えたくない。ちなみに僕ら、全然裕福じゃないし、身銭を切って音楽をやっていますよ(笑)
左:ルックスで認知されると、良くも悪くも色がつきますよね。ミュージシャンとしては色が必要なんだけど、プロジェクトとしては色はない方がいい。だけど「今これが売れてるからこれやろうよ」っていうスタンスは絶対にとらない。単純にいいと思えることをやり続ける。「これ、全部パクリじゃん!」ってなったら、クオリティにこだわってるミュージシャンたちとは連携も難しくなるし。僕はミュージシャンたちが結果的にハッピーになってくれれば、それが一番うれしいですね。

ビジネスとしての戦略と、作り手としての純粋なクリエイティブ。ジレンマもありますか?
左:ありますね。やっぱりミュージシャンは自分の我を出したいもの。僕は現場の人間なのでミュージシャンの意思を最優先するタイプだけど、どっちかだけでもダメなんですよね。

今の AmPm は、描いているヴィジョンのどのあたりにいますか?
右:スタートラインちょい手前、ですかね。今はSpotifyの再生数650万回取れていますけど、アメリカのトップ・ミュージシャンには2日で抜かれちゃう数字です。ありがたいことに海外アーティストとのコラボの話もきているので、どうせやるなら同じ土俵で結果も求めていきたい。ただ、どんなものづくりにも通じることですが、マーケットありきでものづくりをしたら終わりです。日本国内はまだまだテレビなどのマスメディアの力が大きいので、僕らの活動が業界そのものの仕組みに小さな風穴を開けるきっかけになれたらうれしいですけど。

右脳と左脳、ロジックとエモーションというか、お二人が対極的で面白いですね。
右: 対極だけど意見がぶつかり合うこともなくて、足りない部分をうまく補っている感じなんですよ。
左:僕は好き勝手やってるだけです(笑)

今注目しているトレンドは?

右:最近だとエキゾチックな曲が気になりますね。 左: AmPmのSpotifyの8月のプレイリストは、アフリカっぽいリズム系が多いですよ。実は僕らの次の覆面はちょっとそっち系。

左:トレンドカルチャーという枠の中で活動しているので、やっぱりその波に乗る必要はある。でも、もはやジャンルでは縛っていないんですよ。今のファッションも、ストリートやモード、色んなスタイルがミックスされてジャンルではなくなってますよね。

お二人のインスピレーション源は?

右:僕はひたすら音楽ですね。曲を聞くと色々なものが見えてくるんです。今って、ファッションも音楽もぼやっとしてる時期なんですよ。例えば2015年前後は、EDMのアヴィーチーなんか顕著で、カントリー調の曲をデジタルで上げていくみたいなアプローチが流行りましたよね。今はそういうビッグトレンドがなくて悶々としている状態。それが突破される時は、不謹慎ですけど、国家情勢を揺るがすくらいのテロないし戦争みたいなことが起きる時なのかなと。例えば同時多発テロやイラク戦争みたいな、先進国に衝撃を与える事変がないとなかなかビッグトレンドって生まれないのかもしれない。だから僕らも、常にアンテナを多方面に張っていますよ。

左:僕のインスピレーションは完全に人ですね。国籍問わず、どんな人でも。僕のベースであるハウスミュージックも差別から生まれた音楽ですし、僕は音楽を通じてみんなが仲良くなれる場所で育ったので、人を体感しながら今の時代を読んでいます。ここまで継続してやってこれたのも、出会った人々のおかげ。僕は最近、新潟と東京の2拠点で活動してるんです。東京にいれば最先端のものに触れられるけど、ものづくりの原点を田舎の農家さんに聞きにいくことも大事。それは地域活性という側面だけじゃなく、僕らの活動にもいい刺激になってます。

そんなお二人が幸福を感じる瞬間ってどんなとき?

右:僕は年に一回の忘年会です。そこにすべてを集中させています(笑)。毎日上がったり下がったりでは疲れちゃうので、年に一回の忘年会のために頑張る。一年間、苦楽を共にした仲間たちと飲むお酒は格別ですよ。それにみんなが楽しく飲めていれば、それは仕事のモチベーションを保てている何よりの証拠ですから。仕事と遊びの境目もなくて、総じて"生きてる"って感じです。

左:僕はイベントとか音楽の現場で人とつながる瞬間ですね。ジャズやロックやハウス、ジャンル問わず年間で200くらいイベントをやっているので、毎日テンションが上がってますよ(笑)