「アラブの遺産のために立ち上がるには、自分は〈白人すぎる〉気がした」ジジ・ハディッド interview

妊娠と愛娘カイの子育てについて、そしてふたつの文化を橋渡しする存在になるとはどういうことか、スーパーモデルのジジ・hディッドが率直に打ち明ける。

by Osman Ahmed; translated by Nozomi Otaki
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17 June 2021, 1:48am

本記事はi-D The New Worldwi-De Issue, no. 363, Summer 2021に掲載されたものです。注文はこちらから。

 スマホにニューヨークの番号が表示されたとき、私はきっとi-Dのエディターの誰かだろうと思って電話に出た。しかし、その相手はまさかのジジ・ハディッド。「(インタビューを)今やるのはどう?」これこそが、ジジという女性だ。確かに彼女は世界で最も有名な女性のひとりだが、みんな大好きなバタークリームケーキのように甘く、よそよそしさとは無縁の存在だ。はっきりと本音を語り、世間一般の26歳と同じように好奇心旺盛で、野心に満ちている。

 昨年9月、彼女はゼイン・マリクとのあいだに娘カイを授かり、スーパーモデルからスーパーママとなった。インタビューを行なったのは、メーガン妃とヘンリー王子が複数の人種にルーツを持つ子どもをもつことの大変さを打ち明けたオプラ・ウィンフリーによるインタビューが大きな話題を呼んだわずか数週間後。それはジジのキッチンの引き出しにあるカラフルなパスタと同じくらい、私たちが気になっているトピックだった。

 ──昨年、あなたが初めてi-Dの表紙を飾ったときにもインタビューをしました。それから大忙しの1年でしたね。

 前回の表紙を撮影したときは、間違いなく妊娠してる、って確信してた。わかってたから、ファッションウィーク中に母に来てもらった。朝のつわりを乗り切ったり、ショーの手伝いをしてもらうためにね。あの表紙の撮影が、実家に帰る前の最後の仕事だった。

 ──このような大変なご時勢に妊娠を知ってどう感じました?

すごく不思議な感じ。ファッションウィーク中は特に変な感じだった。実はかなり具合が悪かったんだけど、ファッションウィーク中は病欠で休んだりできないから。何ともないようなフリをしなきゃいけない。誰かの誕生日パーティーがあってお酒を勧められても、「ああ、今月はお酒を飲まないようにしてるの」って断ったり。みんなが酔っ払ってからこっそり抜け出していた。

 ──今思うと、とても賢い選択でしたね。あなたの仕事は世間の目にさらされる機会も、移動も多いですから。ロックダウンと母親になったことで、生活にどんな変化がありましたか?

 コロナは多くの人びと、家族、生活、仕事に大きな悲劇をもたらしたけれど、妊娠と出産、赤ちゃんと過ごす時間を体験できたことは、このタイミングで希望を与えてくれたから、うれしくもあり悲しくもある。結局、自分にはリセットが必要だったんだと思う。仕事に復帰するまではできるだけベビーナースやシッターの手を借りずに育てたいという、望んでいた方法で子育てをする時間ができたから。

 ──今では誰もがこの状況に適応し、これまでのやり方を変えようとしています。それはスーパーモデルにも当てはまりますか?

 これから先、自分が望むものについて考えさせられた。誰だって仕事と生活を続けていかなきゃいけない。ファッション業界で夢が全部叶って「次は何をしよう?」と思ってる私には、もう表紙もキャンペーンも必要ない。むしろ、そういう仕事は、それが人生やキャリアの転機となるようなニューフェイスに託したい。どこなら次の世代に道を譲り、別のものにエネルギーと時間を割けるかな、って。この世界に関わることではあっても、創造性を存分に発揮できるような、まったく違う何かに。

 ──ロックダウン中はよく写真を撮っていましたよね。次のステップとして、他にどんな道を考えていますか?

 この業界のクリエイティブな仕事が大好きで、舞台裏に携わるのもすごく楽しい。自分のブランドに関しては、まずデザインのアイデアを考え、それを自分の名前を付けて世に送り出したいと思えるような、ニッチなところに絞り込んでいく。ひとりで何かに向き合うって、すごく自由になれることだと思う。

 今は自分がどんな環境を望んでいるのか考えてる。母親になったから、例えば同じオフィスやスタジオに通ったり、週何日かだけ出勤して、同じスタッフや同じ人たちと働いて、仕事中はカイが遊べる小さなプレイルームがあるところ。毎日違う国、違うセットで違うフォトグラファーと働くより、もっと落ち着いた環境がいい。


──親になるということに、どんなふうにアプローチしていますか? もちろん、直感的な部分もあるとは思いますが、複数の人種にルーツを持つ子どもを育てるには、それとどう向き合っていくのか、積極的に考えなければいけないことが多いですよね。

パートナーとふたりでじっくり考え、話し合った。これは私たちにとってすごく大切なことで、同時に私たち自身が体験してきたことでもある。私たちの両親はどちらも独自の遺産があるから。私たちは複数の人種にルーツを持つ第一世代で、その第一世代の体験は「なんで私が橋渡し役なんか!」って感じだった。両親は経験していないことだし、そのことで力になってくれたわけでもなかった。これは、私が今までの人生でずっと考え続けてきたこと。

自分の中のアラブの遺産のために立ち上がるには、自分は〈白人すぎる〉気がした、というか、そう思わされたこともあった。自分が人種的にどこに所属するのかを模索しながら生きている。自分が何者か、何を持っているかということは、自分が思うままに行動するに足りるものなのか、って。

同時に、自分の中に流れる白人の血の特権を利用しているんじゃないか、と思うこともある。私が自分のこの部分について代弁する存在になっていいのか、十分に体験していない、知識の足りないことについて語っていることにならないか、とか。わかる?

 ──よくわかります。

 カイも成長したら、自分は異なるエスニシティの橋渡し役になれる、もしくはなりたいと思うようになるかもしれない。でも、私たちがそれを彼女に押し付けたりはせず、対話の場を持ち、彼女がそれを出発点にどうしたいかを考えていけたらいいと思う。彼女からどんな考えが生まれるのか、それに何かを補足してあげたり、質問に答えたりするのが今からすごく楽しみ。

 

──明日はあなたの誕生日ですが、何か予定はありますか?

 えっと、まず私は『Cake Boss』(※米国のリアリティ番組)の大ファンなの。10歳の頃から彼を見ていて、去年誕生日ケーキをつくってもらったときは泣いちゃった。自然と涙があふれてきて。去年のテーマは巨大なベーグルケーキだったけど、今年はそれに続いて、巨大なくさび形のチーズみたいなケーキをつくってもらうつもり。

 ──食べ物の話になりましたが、パスタがお好きですよね。去年あなたがデザインしたアパートを見ていたときに気づいたのですが、あの真っ青なパスタは一体どうなっていたんですか?

 (番組のための)パスタの引き出しに入っていたパスタは、保存できるようにのりのような素材でできてる。これをつくるのに協力してもらったのが、この女の子(@saltyseattle)。

 彼女はパスタを自作できるキットを売っていて、自然由来の染料でパスタに色をつけている。あの青色はスピルリナかな。赤はビーツで黄色はターメリック、というように全部自然由来の色なの。彼女は色をつくる方法についての本も出してる。何年も前からインスタをフォローしてて、ずっと彼女の作品を手元に置くのが夢だった。毎日眺めてて、すごく気に入ってる。ときめきを与えてくれるから。

 ──いちばん大切なことですね。今年はときめきの年ですから

 ほんとにそのとおり。

 本記事はi-D The New Worldwi-De Issue, no. 363, Summer 2021に掲載されたものです。注文はこちらから。

 

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Credits


Photography Daniel Jackson
Styling Alastair McKimm

Hair Bob Recine.
Make-up Diane Kendal at Julian Watson Agency for Zara Beauty.
Nail technician Honey at Exposure NY using Londontown Lakur in “Crowning Crumpet”.
Photography assistance Jeffrey Pearson.
Digital technician Karen Goss.
Styling assistance Madison Matusich and Milton Dixon III.
Hair assistance Kabuto at The Wall Group.
Make-up assistance Jamal Scott.
Producer Rebekah Mikale.
Casting director Samuel Ellis Scheinman for DMCASTING.
Model Gigi Hadid at IMG.

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