Photography Jeff Hahn

「ありのままの自分で美しい」19歳の歌姫 ゾーイ・ウィーズ

パンデミック中にメガヒットを生み出した19歳のドイツ人シンガーソングライター、ゾーイ・ウィーズ。メンタルヘルスやビューティー・スタンダードについてのリアルな体験を語った歌詞が話題だ。

by MAKOTO KIKUCHI; photos by Jeff Hahn
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04 June 2021, 3:16am

Photography Jeff Hahn

ゾーイ・ウィーズは2002年生まれ、ドイツ・ハンブルク出身のシンガーソングライターだ。幼い頃に抱えていた重度のてんかんの症状についてを歌った曲「Control」は、昨年3月にリリースされて以降インターネット上で大きな話題を呼び、現在Spotifyで累計1億5千万以上の再生回数を記録。今年1月には「カープールカラオケ」のホストとしても知られるジェームス・コーデンの冠番組に出演するなど、世界的スターへの道を着々と進んでいる。

3歳の頃からピアノやギターを弾き始めたゾーイが、本格的にプロの道を志すようになったのは2017年。ドイツの音楽オーディション番組「The Voice Kids」に出演したときだった。ジェシー・Jの「Get Away」をカバーしたその映像は、ドイツ国内で大きな話題となった。「あのときはまだ13歳だったし、周りにチームがいたわけじゃないから、とりあえずやってみようっていう気軽なノリだったんだ」と彼女は話す。

Zoe Wees_London Press Shot 2 (Photo by Jeff Hahn).jpg

生まれて初めてテレビ番組に出演した13歳の頃から今に至るまで、ゾーイの活動を支え続けてきたのは、他でもない、彼女の母親だ。「私は父親のいない家庭で育ったんだ。お母さんはとても強い人で、いろんな意味で私をサポートしてくれた。必要とするときはずっと側にいてくれた。母無しではここまで上り詰めることは出来なかったと思う。彼女が私を強くしてくれたんだ」

自身が抱えるアングザイエティ(不安感)についてオープンに歌った楽曲「Control」がリリースされたのは、欧州にパンデミックの波が押し寄せる直前だった。その時期を振り返って「奇妙なタイミングだった」と彼女は語る。「家でひとりで過ごす時間が増えた人達は、新しくて、意味が込められていて、悲しくて、尚かつ救いになるような音楽を求めていた。だからあの曲がこんなに爆発的に支持されたのも私的には納得なんだ」

彼女の楽曲はすべて自身の体験に基づいて書かれている。今年一月に発表された「Girls Like Us」は、周囲の女の子と自分を見比べて自信を失っていた頃の自分のことを歌った曲だと言う。YouTube上で一千万回以上再生されているこの楽曲のMVでは、彼女が化粧を落とし素顔を見せるシーンも挿入されていた。

「周りの女の子達はみんな、見た目が良くて、常にメイクをしていて、綺麗なロングヘアーで、背が高くて痩せてた。他の人達が異様に彼女達を持ち上げるのを見ていて、自分がとても醜くて、不十分なように感じられたんだ」と彼女は話す。「この曲ではあなたはひとりじゃないと伝えたかった。自分が一人ぼっちで、価値がないように見えても、本当はそうじゃない。実際に比較するべきなのは、周りの人じゃなくて、昨日の自分。自分自身と臆することなく向き合って、もっと自分に集中するようにして欲しい。ありのままの自分でめちゃくちゃ美しいんだから」

ゾーイのアイコニックなカラフルな三つ編みのツインテールが生まれたのも、ちょうどこの「Girs Like Us」のMV撮影の時だという。「ヘアスタイリストが『いつもと違うのをやってみない?』と提案してくれたの。もうそれがすごく気に入って。それ以来カラフルなヘアばかり選んでいる。地毛だけじゃ外を歩くのも嫌なくらいになっちゃった(笑)」お気に入りのカラフルな髪は、自信を与えてくれるのだと彼女は言う。取材中にZoomの通話画面越しに見える彼女の髪はピンクのエクステを編み込んだブレイズだった。

「黄色とか緑とかの髪色で、カラフルな服を着て派手なメイクをして出かけると、街で視線を集めることも多い。他と違うってことが、ここだと受け入れてもらえない。上の世代の人は特に。でも私は自分が他の人とは違うというのは承知していて、人に見られるのってそんなに悪い気はしない。知らない人達にどう思われるかなんて気にしなくていい。私のことを知ってくれたら、派手な髪色もそんなに悪くないなって思ってくれるかもしれないし」。そう言うとゾーイはこう続けた。「誰かが私を見て『あの赤い髪いいな。自分もやりたいな』って思ってくれたらすごくいいな。そういう誰かに影響を与えるような人になりたい」

「私にとって2020年は人生のなかでいちばん素晴らしい年だったけれど、多くの人にとって悲しい年だったのも事実。たくさんの人が亡くなった。だからそれについての歌を書いたんだ」。先月リリースされたばかりの楽曲「Hold Me Like You Used To」は、昨年亡くなった彼女の曾祖母のことを歌った曲だ。「全てのことを当たり前に思っちゃいけない。今目の前で起きてるこの会話だって大切に、楽しまなきゃいけないんだ」