フィービー・ファイロが3年ぶりにカムバック

カルト的人気を誇るデザイナーが、自身のブランドをひっさげて3年ぶりにカムバック。このニュースが意味することとは?

by Mahoro Seward; translated by Nozomi Otaki
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14 July 2021, 6:28am

Photo by Bertrand Rindoff Petroff/Getty Images

イングランド代表は負けてしまったが、その翌朝、最高のニュースがファッションファンを待ち受けていた。フィービー・ファイロのカムバックだ。ファッション史に残る劇的なブランド再生を成し遂げたCelineを去って3年、控えめで知的なシックを司るファッションの守護聖人が、ついに戻ってくる。

その間、彼女の復帰をめぐっては常にうわさが絶えず、BurberryからAlaïa、Chanelまであらゆるブランドが候補に挙がった。しかしCelineで10年、Chloeで5年、トップに君臨した彼女は、このたび自身の名を冠した、ロンドン発の「並外れた質とデザインに基づく服とアクセサリー」にフォーカスしたレーベルを立ち上げるという。

 「もう一度自分のスタジオで作業するのはワクワクするし、大きな達成感もあります」とこの英国人デザイナーは声明で語った。「またオーディエンスやすべての人びとと触れ合うのがとても楽しみです。独り立ちして主導権を握り、自分なりに実験することが、私にはとても重要なのです」

ハンドルを握るのはフィービーだが、彼女はこのブランドの少数株主となるLVMHグループ傘下のCelineの元上司たちからも支援を受ける予定だ。彼女が前職で実現した、まさに時代を象徴するような事業再生を考えれば、LVMHが彼女の待望のカムバックを支援したがるのも当然だろう。

 フィービー自身も、この業界最大のコングロマリットと長年にわたって「非常に建設的でクリエイティブな関係」を享受してきたため、「今回の新プロジェクトでもう一度関係を結ぶのはごく自然な流れだった」と語っている。

 フィービーを〈この時代でもっとも才能のあるデザイナーのひとり〉と称するベルナール・アルノーも彼女に同意し、この先に待ち受ける「起業家精神あふれる冒険」で彼女とタッグを組むことへの期待を語った。

 この発表だけでも業界の話題をさらうだけの威力があるが、カルト的人気を誇る業界随一のクリエイターの帰還をめぐり、さまざまな憶測が飛び交っている。多くのファイロマニアは、Celine時代の彼女を定義づけるような成熟、バランス、洗練された官能性を待ち望んでいるが、彼女が驚くべき多才さを発揮してきたデザイナーであることも忘れてはならない。

 例えばChloeでは、シフォンのバンドゥドレスやウェッジソールで、外向的なパーティーガールのセクシーさを演出してきたが、これは最近見落とされがちな要素で、より新しいアイテムばかりに注目が集まっている。ファッションエディターのヴァネッサ・フリードマンが今朝の『ニューヨーク・タイムズ』で述べたように、「ミズ・ファイロのファッション界への復帰が、彼女のこれまでの活躍と同じようなものだと推測するのは間違いだろう」。

あらゆる場所にノスタルジーが充満するなか、フィービー・ファイロがCelineでいち早く打ち出してきたルックの現代的な意義については一考する価値がある。彼女が先駆けとなった控えめなラグジュアリーが、2008年のリーマン・ショック後のファッション業界を席巻したいっぽうで、GucciやBalenciaga、エディ・スリマンのCelineなど、積極的なブランディングや共同ブランディングが今まで以上に広まり、よりいっそう複雑になっている……。そんな時代に、彼女はカムバックを果たすのだ。

ローンチ予定のブランドについて、現時点で明らかになっていることはほとんどないが、フィービー・ファイロは今という時代の潮流の真逆を行き、その流れを一変させるようなマインドを見せてくれるに違いない。例えば、ブランドのロゴにしても、デザイナーの名前がボールドのセリフ体の大文字で綴られている。

ロゴのフォントにそこまでこだわる必要はないだろう、という声もあるだろうが、今は多くのブランドが、病院や企業のような無味乾燥なサンセリフ体に夢中になっている。これはSaint LaurentやBalenciagaのリブランディングから生まれたトレンドで、Burberry、Berluti、The Kooplesなども、すぐに後に続いた。

もちろん、このロゴにフィービーの自身の名を冠するブランドがどれほど反映されているか、ということは、詳しい情報が明かされる2022年1月までは、ただの憶測に過ぎない。しかし、今回の発表でひとつ明らかになったのは、彼女がCelineを去ってから幾度となく問いかけられてきた、〈彼女が置き去りにしたファイロマニアの飢えを満たすのは一体誰なのか?〉という疑問に対する答えだ。

 その答えは、Peter Do、Rokh、ダニエル・リーのBottega Venetaなど、彼女のCeline時代の弟子が率いるブランドをはじめ、同様に〈控えめなラグジュアリー〉を掲げるProenza SchoulerやThe Rowなど、さまざまなブランドによって何度も提示されてきた。しかし今日、私たちはようやく待ち望んできた答えを得た。つまり、フィービー・ファイロの後任を務めるのに、フィービー・ファイロ以上にふさわしい存在はいないのだ。

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