韓国人デザイナー、キミンテ・キムヘキムが夢中になっているもの

ソウルとパリを拠点にするファッションブランドKIMHĒKIM。SNSで話題沸騰中の2022年秋冬コレクションと今後のブランドのビジョンについて、デザイナーが語る。

by MAKOTO KIKUCHI
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25 April 2022, 2:00am

「詩的かつシンプル、ソフトでありながら同時に力強い」。ソウル在住のデザイナー、キミンテ・キムヘキムは、韓国ファッションにおける「シックさ」についてそう語った。彼が手掛けるファッションブランドKIMHĒKIM(キムヘキム)では、トレンチコートや白シャツ、ワイドのデニムパンツなどの王道のファッションアイテムが多く揃う。モノトーンやベージュ、グレーといったミニマルなカラーパレットが特徴のこのブランド。韓服に着想を得た素材やディテールで、現代の〈コリアン・シック(Korean chic)〉をユニークに体現している。「たとえば白と黒の配色のチマチョゴリは、シンプルですがシルエットは大胆。そのコントラストはブランドの美的感覚と大きく繋がっています」とデザイナーは語る。

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ソウルとパリでファッションを学んだ後、ニコラ・ジェスキエール時代のバレンシアガで、4シーズンに渡りインターンの経験を積んだキミンテ。様々な技術を持つ職人が力を合わせて一作品を作り上げるプロセスに感銘を受けた彼は、クチュール並の服づくりが可能な自身のアトリエを持ちたいと思うようになり、2014年にブランドを立ち上げるに至った。

現在ブランドは、ソウルの三清洞(サムチョンドン)地区にメインのスタジオを構える。歴史的建造物に囲まれたこの地には、ギャラリーや美術館、流行のショップが立ち並び、現地の若者たちが多く集う。伝統とクリエイティビティの融合を真髄とするKIMHĒKIMにふさわしいその土地に、強く感化されるのだとキムは話している。

今回i-Dの取材に応じてくれたキミンテは、先月パリコレ公式スケジュールで2022年秋冬コレクションを発表したばかり。ヘアピースを使用した今季のコレクションは、「従姉妹とバービー人形の髪で遊んでいた」デザイナーの幼少期の思い出に着想を得て制作されたという。「obsession no.4」と名付けられたこのコレクションにちなんで、彼が今夢中になっているもの、そして今後のブランドのビジョンについて話を聞いた。

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──ファッションウィークが終わった今、どんな気分ですか?

10日間、陰気くさい部屋での隔離生活が終わったばかり。晴れ晴れとした気分です。 

──今日はなにを着ていますか?

LEJEの黒のスウェットとNEU-INの黒のフランネルパンツ。


──髪をモチーフ にした今シーズンのコレクションは圧巻でした!  どのように制作されたのでしょうか?

アイディアを得たのは、アシスタントと一緒に今季のコレクションのためのフィールドリサーチをしていたとき。ソウルの北部にある古いウィッグ専門店を見つけて、二人で店内をあれこれ探索しているうちに、店主すら存在を知らなかった大量のヘアピースを発見したんです。見た瞬間、「これだ!」と確信して。アトリエに持って帰ってその大量のヘアピースを編み始めたのですが、いざ髪の毛で耐久性のある服を作るとなると、ただ編めばいいというわけにはいきません。特殊な技法を取り入れる必要が出てきます。最終的な技法に辿り着くまで、丸一週間かかりました。

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──「obsession no.4」と名付けられているこのコレクション。キミンテさんは髪のどんなところに夢中(obssessed)なのでしょうか?

髪の手触りが好きなんです。幼少期はよく従姉妹とバービー人形の髪で遊んでいました。従姉妹の髪も編んであげたりしていて、それらは私にとってとても大切な思い出です。今回のコレクションでは、まっすぐな髪やカールのかかった髪、黒や茶色、金など、複数の種類のへアピースを使用しています。様々な形や色の髪に触れながら服を作るのは、すごく楽しかったです。

──「髪」と言えば、キミンテさんの重い前髪が目にかかったアイコニックなヘアも気になります。

ブランドのデザイナーとして人前に立つとき、あまり自分の表情を人に見せたくないんです。私の顔より、コレクションに注目して欲しい。目を隠しながらも美しいヘアスタイルを模索した結果、今の髪型になりました。

──最近夢中になっていることは? 髪以外で。

最近は、健康とスキンケアにハマっています。コレクションと同様に、自分も美しくありたいと思うんです。


──バレンシアガでインターンをしていた頃について、お聞かせください。ニコラ・ゲスキエールのもとで働くのはどんな経験でしたか?

スタジオのなかで、私はいちばんの若手でした。シャイなので、ニコラに直接話しかけるのはいつも躊躇してしまっていましたね。メゾンのデザインスタジオとアトリエを往復するなかで学んだことは多くあります。特にブランド創業者の、クリストバル・バレンシアガが所蔵するアーカイブにはいつも圧倒されていました。

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──KIMHĒKIMのチームについて教えてください。

今年は10人体制で動いています。私が胸に刻んでいる言葉に「早く行きたければ、一人で進め。遠くへ行きたければ、共に進め」というものがあります。チームのみんなには元気付けられるし、一緒にいるとやる気が出ます。彼らの存在意義は、本当に大きいんです。

──環境問題に関心があると伺いました。ブランドとしてどのような取り組みをしていますか?

商品の包装に、リサイクル紙を採用しています。また最近では生分解性プラスチックを使用したショッピング袋も開発しました。アパレル業界では生産や梱包に大量のポリエステルやプラスチックを使用しています。本当の意味でのサステナビリティを実現するためには、リサイクルできないマテリアルを減らしていく必要があると考えています。このささやかな努力が、少しでも環境汚染の改善に役立つことを願っています。

──韓国の芸能界からポップスター達の衣裳制作のオファーが多数寄せられていると伺いました。K-POP産業への進出は視野に入れていますか?

いまのところは考えていません。K-POPを聴くのは私も大好きなのですが、ヴィジュアルの部分では自分が作るコレクションとの大きなズレを感じます。ファンとしてはそれも楽しめますが、そこからインスピレーションを得るのはまだ先になりそうです。

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