MAIKA WEARS All CLOTHING COURREGES.

「音楽業界の枠は壊れてきてる」マイカ・ルブテ interview

Netflixで全世界配信中のアニメ『キャロル&チューズデイ』に楽曲提供し、活動の舞台を拡大し続けているシンガーソングライターのマイカ・ルブテ。彼女が肌で感じている音楽業界の変化から家族観まで、幅広く語ってもらった。

by MAKOTO KIKUCHI; photos by Lorenzo Dalbosco
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28 January 2020, 2:00am

MAIKA WEARS All CLOTHING COURREGES.

2012年よりソロのシンガーソングライターとして活動するマイカ・ルブテ。2016年にはアルバム『Le Zip』をリリース、その後さまざまなCM楽曲などを手がけ、現在NetFlixで全世界配信中のアニメ『キャロル&チューズデイ』ではシベール役として楽曲提供をするなど、その活動の幅はますます広がりを見せている。これまで繰り返し使われてきた「日仏ハーフのシンガーソングライター」という肩書きは彼女を説明するのには窮屈すぎる、とすら思う。

マイカ・ルブテと出会ったのは2016年の夏、とある取材でのことだった。「Don’t Trash Your Vote(選挙権をムダにするな)」と書かれた薄いブルーのキャップを被って、ウェーブのかかった髪をくしゃくしゃとしながら気さくな笑顔で「はじめまして」と挨拶をしてくれた彼女を、いまでもよく覚えている。

3年後、髪をバッサリと短く切って彼女は、渋谷WWWのステージに立っていた。2017年8月に行なわれた最新アルバム『Closer』のリリースイベントだ。前売チケットが即完売だったというその日のイベントは、誰がどう見たって大成功だった。髪を振り乱して最前列で踊る人、曲に合わせて歌詞を口ずさむ人、感動して涙ぐむ人……。会場に親密さが溢れる。アルバムタイトル、「クローサー(closer)」にこれほどふさわしいライブはない。

その年の暮には、リリースイベント会場で限定販売され即完売した『Closer』の12インチレコードが発売となり、またそれを記念して新たにミュージックビデオ「Snappp feat. New Optimism」が公開されるなど、マイカ・ルブテの勢いは止まらない。いつもワクワクを届けてくれる彼女は、一体次に何を見せてくれるのだろう。

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All CLOTHING COURREGES.

ーーこの3年間で、音楽家としてのキャリアにもライフステージにも様々な変化があったと思うのですが、内面での変化はありましたか?

外的な環境はどんどん変わっていっています。もともと変化が多い人生だったんですよね。親の転勤で引っ越すとか。今はまわりの環境に振り回されることがなくなったから、自分でえらんだ環境で生きていられる。自由に動けるっていうか。本当に信頼できるパートナーに出会えたこともすごく大きいです。これまではずっと内向的だったんだけど、「そのままでいい、等身大でいい」って思えるようになりました。

ーーアニメの挿入歌を通じてマイカさんを知ったという外国人の友人がいました。

『キャロチュー(キャロル&チューズデー)』をキッカケにして私の曲をディグって聞いてくれている人もいて。YouTubeやInstagramでコメントをもらったりすることが増えました。すごくやってよかったなって思っています。

ーーフランス語の歌詞ですよね。

あの歌詞は私の父が書いています。今まではフランス語の歌詞も自分で書いていたんですが、今回は自分のことを歌うわけじゃなかったから。父はすごく詩的なことを書く人で、めちゃくちゃ繊細な人なんです。

ーーそう言えば、マイカさんのご家族についてあまり詳しく聞いたことがなかったかも。

父はもともと銀行員で、あまり自己表現をせずに自分をちょっと押し殺してきたというか、そういう部分があるんです。それでも何かですごく突出していたりもする。ある意味極端な人なんですけど。子供の頃はそんな父とどう向き合えばいいのか分からない時期もあったけど、今は一緒に暮らしていないし、良い距離感があるので、今回は私から彼に歩み寄って歌詞を書いてもらうことができました。60歳を過ぎたおじさんがあんな女の子のドロドロした部分をかけるって、すごいことだと思うんです。長年の本人の痛みを押し殺したときの苦しさがあるから書けるのかもしれない。

ーーそういう家族間でなにか突っかかりがあるときって、温泉にいって一緒に背中を流し合ったりして、拭っていくものなのかなと思うんですけど、マイカさんの場合はそれがきっと音楽だったんですね。

そうかもしれません。父は私のなかで独特の存在で、影響が大きかったから。私も彼のそういう心の動きを見てからか、感情の振り幅が大きい部分があって。ウチは父と母がすごく両極端で、意見が全然合わないことが多いし、考え方が真逆なんです。父は心配性で、母は楽観的。家族ってカオスじゃないですか。子供からしたらそれが社会の縮図で。だからその混乱を発散させる音楽があってよかったなって思う。

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ーー2020年、やりたいことは?

今は日本語の曲をつくっていて、洋楽/邦楽って括りをなくしたボーダレスな音楽にしていきたいと思っています。私ってもともと浮いてるんですよね、ハーフだし。どんな型にハマろうとしてもはみ出ちゃう。疎外感っていうか、そういうのが小さいときからずっとあって。しょうがないんですよね。でも、それって結局は自分がどう捉えるでしかないから。音楽業界の枠って壊れてきてるでしょう? メジャーレーベルがいままでやってきたことが通用しなくなってる。 個人に響けばそれが正解。そんな音楽をずっとつくっていきたい。

ーーマイカさんが特定のコミュニティに属していないというのはすごく分かります。リリースイベントのあとの打ち上げでも、あれだけ違うフィールドの人達が集っても居心地がいいのが印象的でした。

それは他の人にも言われたことがあります。風通しがいいねって。幸い私のまわりには優秀な人達がたくさんいて、いつも助けてもらってる。人って群れになるとさ、途端に「自分はどうなの」っていうのが薄れて、大きなもので括られて、「何派」とかができるじゃん。わたしは個人としか向き合いたくないし、個人として向き合ってくれる人しか信用しない。自分がそれでいいと気づいていれば、同じ考えの人と出会えるし、そういう人にいてもらえてよかった。

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マイカ・ルブテ『Closer』12インチレコードはWATER RECORDSから発売中。

Maika Loubté Official HP

Credits


Photography Lorenzo Dalbosco
Styling Maya Watanabe
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