そのDJに気をつけろ: ペギー・グー interview

数多の音楽フェスから引っ張りだこのDJ・プロデューサーのペギー・グー。2018年1月にリリースした「It makes you forget(itgehane)」は、言語の壁を越えた心地よいサウンドで世界中に彼女の名を轟かせた。DJという道を選んだ理由や「韓国人DJ」「女性DJ」と呼ばれることについて、本人に話をきいた。

by YOSHIKO KURATA; photos by Yoko Kusano
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08 January 2020, 2:47am

彼女にとってDJはやっと見つけた天職なのかもしれない。ペギー・グー(Peggy Gou)と20分も話しているとそう思えてくる。14歳で母国・韓国を離れ、ファッションの勉強をしに渡英。スタイリストやエディターへの興味を持ちつつもぼんやりしていた毎日に雷を落としたのは、音楽との出会いだった。「24時間眠らずに毎日やりたい!って強く引き寄せられるものを感じた。もちろんファッションも興味があったけど、DJやプロダクションを勉強するようになって、やっと心の底から目覚めたと思えたの。それで毎日スタジオに通いつめるようになって、案の定、単位は落としたんだけど。ロンドンにいる理由なんてないと思って、すぐベルリンに拠点を移した。最初は友達も全然いなかったし、レコードショップで働く毎日になぜここにいるんだろうって悩んだ時期もあった。だけど、いまとなっては、ベルリンは私の夢を叶えるのに本当にたくさんのことを教えてくれた最高の場所だと思ってる」

以前のインタビューでは、幼少期に歌手を目指していたと話しているが、その夢もあえなく、大勢の観客を目の前に号泣するという挫折体験と共に終わったという。それから10年以上経った2018年にリリースした「It makes you forget(itgehane)」が世界中にPeggy Gouの名前を広めるきっかけとなった。聴く者の耳に心地よく入る韓国語のリリックは、親友であるmaktoopが担当している。言語の壁を越えて曲をつくることについて訊いた。「最初は自分の歌唱力にも、韓国語を聴くリスナーの反応も不安だった。だけど、みんな歌詞を理解しなくとも好きになってくれたみたい。音楽は言語を理解するかどうかじゃない、愛と同じで言葉では説明できないけど内側で感じるものなんだって気づかされた。たとえばインドでこの曲をかけると、みんなあやふやだけど歌い始めてくれる」

彼女が飛躍していくなかで、プロフィールには必ず「女性DJ」「韓国人DJ」という言葉も付いてくるようになった。一方で本人は、以前ボイラールームでの公開インタビューで「女性のDJ」と呼ばれることを好まないと明言している。「なんで「女性」と「男性」を分ける必要があるの?っていつも思う。私は何に対しても男性ができることなら、女性もできると信じている。女性だからって特別扱いは無用。私生活でもボーイフレンドに奢られたくないし、依存せずに平等な関係でいたいと思ってる。それにいつでもボスでいたいしね(笑)」。この圧倒的なパワフルさを支えているのが、彼女のInstagramにも度々登場する母(通称:グー・ママ)だ。娘として、ひとりのDJとして成長を見守ってくれている母について彼女は「親友みたいな存在」と語る。「なにか問題が起きたときには、決して私の責任でなかったとしても、私の間違いを指摘してくれる。ロンドン時代はあれこれ心配したり教育として厳しくされたけど、今ではいちばんのサポーターでありファンね。彼女の趣味は私の名前をググること。最近Instagramも始めたんだけど、唯一フォローしてるのがわたし! だから時々、もうやめてよっていうくらい彼女から通知が来るの(笑)」

ペギーに夏のスケジュールを訊いてみると、8月は8日間連続でそれぞれ違う都市で(なかには同日移動で2本出演もある)プレイという過密っぷり。底をつくことを知らないそのバイタリティはどこから溢れ出るのだろうか? 「元々、外に出て人に会うのが好きだったから、生まれつきこういう性格なんだと思う。仕事がなくても自分で予定をつくっちゃう。親友からは”エナジー・ヴァンパイア”って呼ばれてる。オーディエンスからエネルギーをもらってる感覚ね。友達は1時間会うだけでもめちゃくちゃ疲れてるけど(笑)」

彼女の魅力は、音楽と隔たりなくファッションを楽しむ姿にもある。ヴァージル・アブローが手がけた初となるLouis Vuittonのショーでは、「Dazed&Confused」のInstagramをジャックしてガイド役に。つい先日、SSENSEとのコラボレーションも果たした。しかし、かつてはその“奇抜”なファッションのために「あいつは音楽に真面目じゃない」と揶揄されたこともあったそうだ。そのため本来の自分を封じて、白Tシャツとパンツというシンプルスタイルでプレイをしていたという。アジア人や女性であることに悩んだ時期もあった。しかし、それも遠い過去の話だ。「やっぱり好きなことでハッピーでいたいと思った。ファッションが好きなことも、アジア人、女性であることも前はコンプレックスだったけど、いまは私の個性だと思ってるし、それが自信になってる。何があっても、いまはすべてプラスに働いてる」

「DJという仕事を選んだかぎり、リスクを自分で取りにいかなきゃいけないときもある。急に不安になるときもあるから自分のモチベーションを維持する方法をトレーニングしてるところ。でも、なにか壁に突き当たったとしても、必ずその向こう側にいけるって考えてる。最終的に、すべてが私の選択肢になる。なかなか一筋縄でいかないことを知りながら、この仕事を選んだのも私の選択だしね」。そう、ペギーは自身の選択によってその地位を築いた。そのことは、ただそれだけで私たちを勇気づけてくれる。「私もみんなと同じ人間だし、私ができることはあなたにもできる。まるで私が特別かのようには言いたくないし、一生懸命努力すれば誰でも勝ち取れる。それだけよ」

この記事は『i-D Japan No.6』フィメール・ゲイズ号から転載しました。

Credit


PHOTOGRAPHY YOKO KUSANO
TEXT YOSHIKO KURATA
PEGGY WEARS ALL CLOTHING MODEL’S OWN

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