黒人の命のために日本から声をあげる17人に聞いた「BLMから学んだこと」

フォトグラファーの中里虎鉄が撮影した、日本から黒人の命のために声をあげる17人のポートレイトを掲載。i-Dは被写体となった全員にインタビューを敢行、この運動から彼らが考えたこと、学んだことを聞いた。

by MAKOTO KIKUCHI; photos by Kotetsu Nakazato
|
22 June 2020, 4:29am

ここ数週間に渡ってSNSを埋め尽くす「Black Lives Matter」の文字。アメリカのミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイドが白人警官によって殺害された事件を発端としたこのムーブメントが、物理的に遠く離れた日本へ波及するまで、そう長くはかからなかった。

ニューヨーク在住でモデル兼YouTuberのリジー(@cocoalizy)は6月2日、「日本のみんなに知って欲しい黒人差別について」というタイトルでインスタグラムに動画を公開した。アメリカでの黒人差別について日本語で説明するその動画は200万回以上再生された。東京を拠点に活動するスケーターの大作(@deeskkrrrr)は、中目黒の〈BREAKFAST CLUB Tokyo〉で行なわれたパネルディスカッションにパネラーとして参加し、黒人とのミックスであるという理由で幼少期から受けてきた人種差別の体験を語った。その様子はインスタグラムに動画としてあがっている。こうした切実な声は実際に、多くの日本の若者の心を動かした。

東京在住のフォトグラファー、中里虎鉄もそんな声に背中を押されたひとりだ。彼はこのムーブメントを通して「私たちひとりひとりがあるべき姿を発信することで、他の人が差別について考えるきっかけを与えられると気付かされた」と言う。6月6日、外国人に対する警察の不当な取り締まりに反対するデモが渋谷で行なわれたその日、彼のもとには17名の若者達が集まっていた。それぞれがこBLMを象徴する思い思いのアイテムを掲げ、カメラの前に立った。

このプロジェクトに参加した人々は出身地も、職業も、ジェンダーやセクシュアリティも様々。その内の4人は、黒人とアジア人のミックスだ。唯一の共通点として、被写体全員がアジアに人種的ルーツを持つことについて中里は「60年代にアメリカの公民権運動でアジア系アメリカ人が黒人のために立ち上がりアクションを起こしていたことからインスピレーションを得た」と説明する。

「そんなこと言ったって、これは白人と黒人の問題だから」と思う人もいるだろう。そんな人は是非、リナ・サワヤマのこのツイートを読んでみて欲しい(グーグル翻訳でも読みやすい)。白人至上主義のもと、東アジア系アメリカ人にどんな特権がどんな理由で与えられて来たかを知ることができる。「でもこれはアメリカの問題でしょう?」そう思う人には昔見たテレビ番組を思い出して欲しい。流暢に日本語を話す白人男性が、片言の日本語を話す黒人男性を「教え」、笑い者にする番組が人気だったのは何故だろう? 電車で黒人を見かけたら、なんとなくその近くに座らないようにしたことはないだろうか? 黒人差別は日本にも確実に存在する。もちろん、それ以外の差別も。

今回i-Dはこのプロジェクトに参加した17名全員にインタビューを敢行。彼らがこの運動から何を考え、何を学んだのかを語ってもらった。私達はここからなにをしていかなければならないのか、考えるきっかけをもらえるはずだ。

1592645329567-FH010026
Photography Kotetsu Nakazato.

Lisas 22歳

—— 何をしている人?

モデル。

—— 今回の撮影に持ってきたアイテムは?

ケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』のレコード。このアルバムの「Alright」という曲に自分も救われた。ケンドリックはアルバムタイトルについてのインタビューで『過酷な現実から抜け出して、何かポジティヴなことをするのは、さなぎから蝶へと進化することなんだ。殻を破って、なにか美しいものに羽化して、舞い上がる。みんな、それを目指している』と答えていた。

—— BLMの運動に関心を持ったきっかけは?

リアーナのインスタでジョージフロイドさんに関する投稿を見て、気になったので記事を調べて知りました。

—— この運動を通して学んだことは?

声をあげることを恐れる必要はないということ。今回の運動では差別を受ける当事者でない人もたくさん参加して、自分のことかのように一緒に声をあげて活動してくれていた。差別をなくしていくために、声をあげることを恐れない人をもっと増やしていかなければならい。人種差別を無くすことはとても時間がかかるし、それは歴史を変える事であって、一人一人がそれに真剣に向き合っていく必要がある。

1592645535643-FH010015
Photography Kotetsu Nakazato.

Dalen Wang 27歳

—— 何をしている人?

学生。

—— 今回の撮影に持ってきたアイテムは?

中国語で「Black Lives Matter」と書いた。中国の人にも世界で起きていることに関心を持って欲しい。

—— BLMの運動に関心を持ったきっかけは?

白人の警察が黒人に暴力を振うあの動画を見た。そこから運動がどんどん活発になるのを見て、自分でもきちんと調べるようになった。

—— この運動を通して学んだことは?

黒人の差別は僕たちが受ける差別とは違い、命に関わっていることを知った。みんなが生きる権利を守りたい。みんなの力で世界は変えられる。

1592645670308-FH000024
Photography Kotetsu Nakazato.

Kaoru 32歳

—— 何をしている人?

寿司職人。

—— BLMの運動に関心を持ったきっかけは?

自分はLGBTQというマイノリティなので、BLMの運動に限らず以前から差別や人権問題には関心があった。これと言ったきっかけは無いが、゙ニュースでとりあげられていない悲惨な現実をSNSで目にし、より多くの人に興味関心を持って欲しいと思った。

—— この運動を通して学んだことは?

ブラックカルチャー(Hiphopやファッション)が好きでもBLM運動に無関心な人が圧倒的に多い。今後そういう人達の関心をひくにはどうしたらいいのか考えさせられた。

マヨ 26歳

—— 何をしている人?

デザイナー。

—— 今回の撮影に持ってきたアイテムは?

BLMのプラカード。モノクロで角度をテーマに、インパクトのあるデザインにした。

—— BLMの運動に関心を持ったきっかけは?

アメリカに住んでいる友達が心配で状況を把握していたいから。

—— この運動を通して学んだことは?

思っていたよりも無意識に、自分が差別的な考え方をしていたこと。それを素直に認め反省し、自分を見直していきたい。

1592645811651-FH000012
Photography Kotetsu Nakazato.

アモ 19歳

—— 何をしている人?

学生。

—— 今回の撮影に持ってきたアイテムは?

Black Lives Matterをきっかけに、多くの若者達がこの差別問題について学び始めて立ち上がろうしているイメージを描いたもの。これからもっともっと多くの人がこの問題について学んでその考えを発信できたら世界はすこしずつ変わって行くはず。

—— BLMの運動に関心を持ったきっかけは?

ジョージフロイドさんの件で情報が回ってきて、最初は白人と黒人だけの問題だと思っていたがよく考えたら日本でも、殺害までは行かないけど、黒人差別や外国人差別があるから僕たちに関係ない事では無いんだと思ったから。

—— この運動を通して学んだことは?

僕はアメリカにも行ったこともないし、黒人の血は流れていないから、彼らの痛みや苦しみを100%は理解はできないかもしれない。だけど同じ人間として、日本からも一緒に立ち上がってるって示し続けたいと思った。そしてこれをきっかけに日本の差別についても丁寧に話し合っていくべきだと思う。

1592645996074-FH010019
Photography Kotetsu Nakazato.

FiJA 23歳

—— 何をしている人?

シンガーソングライター。

—— 今回の撮影に持ってきたアイテムは?

ブラックカルチャーから影響を受けR&BやSoulを歌う身として、そのリスペクトと、自分も発言をする一人ということを表すためにマイクを持った。ルドベキアと黄色のバラは、花言葉にちなんで「平等」と「平和・希望」の意味を込めている。

—— この運動を通して学んだことは?

当事者意識の低さにより無意識のうちに偏見や差別的な考え方が自分の中にあったこと。

1592646080882-FH010036
Photography Kotetsu Nakazato.

Maya Sato 23歳

—— 何をしている人?

不動産業。

—— BLMの運動に関心を持ったきっかけは?

自分自身黒人とのミックスなので他人事ではないというのと、〈@_lina_nakayama〉と〈@emilymacfie〉 の投稿をインスタグラムで見たのがきっかけ。

—— この運動を通して学んだことは?

それぞれの考えがあるなかで、勇気を出して自分とは違う意見を持っているであろう人にも意見を聞いてみると一方からでは見えない面も見えてくる。

1592646200545-FH010023
Photography Kotetsu Nakazato.

ベイン理紗 20歳

—— 何をしている人?

学生・モデル。

—— 今回の撮影に持ってきたアイテムは?

今背負っているのは、オーストラリアの小学校に通っていた時の指定リュック。ある日お気に入りのキャラクターの靴下を履いて学校に行ったら、上級生の女の子たちがわたしを見て「日本の血が入ってる小さい子は履いてる靴下もダサいね」って言って笑った。日本の小学校に入学してからも最初はこのリュックで通学していて、まわりと違うから白い目で見られた。おばあちゃんが赤いランドセルを買ってくれたときはすごく嬉しかったのに、他の男の子たちは「アメリカ人だ」って言ってランドセルを背負ったままの私を振り回した。今日これを持ってきたのは自分は被害者だと訴えるためではない。「BLMをサポートする意思」と「差別は身近にある」ことを伝えたかったから。

—— この運動を通して学んだことは?

BLMの運動を知ろうとしていくなかで、情報や意見の適した取り入れ方ってなんなんだろうと考えた。ネット署名やSNSでのプロテストで社会がひとつになろうとしている一方、虚偽のニュースや望まない情報が拡散されたことで社会が混乱していた。そして改めて、わたしを一人の人間として接してくれる家族や友達、周りの人がいることの幸せを感じたし、それが当たり前ではないことを痛感した。

1592646335399-FH000017
Photography Kotetsu Nakazato.

西本功貴 29歳

—— 何をしている人?

モデル、看護師。

—— 今回の撮影に持ってきたアイテムは?

命尽きても形や思いは受け継がれる、という意味でドライフラワー。様々な色が混じっているシャツは、゙世界には美しいものがたくさんあるということを表現している。

—— BLMの運動に関心を持ったきっかけは?

テレビでジョージフロイトさんが「息が出来ません」と何度も警察に伝える映像を見て、何が原因で何が真実なのか知るために情報を集めたのがきっかけ。

—— この運動を通して学んだことは?

人の動きや考え方は人それぞれで何が正しいかどうかは、その人自身が決めればいい。でも仲間がいるって心強い。

1592646535426-FH000007
Photography Kotetsu Nakazato.

タニヤ 23歳

—— 何をしている人?

モデル、DJ。

—— 今回の撮影に持ってきたアイテムは?

隣に立っているのは、父方の血が繋がっている弟。それぞれ違う家庭・環境で育ち、6年前に存在を知って初めて会った。最初は不思議な感覚だったが、今彼は僕にとって立派な弟であり大事な家族だ。歴史を辿ればもしかすると他人だと思っていた人と血が繋がっているかもしれない、少なくとも地球という同じ環境で共存してる仲間と言える。1人1人に愛と尊敬の意があれば差別は減っていくんじゃないかと思って、このようなメッセージを考えた。

—— この運動を通して学んだことは?

今世界で起きている問題は人種差別以外にもたくさんある。それらひとつひとつに異議を唱える権利が僕らにはある。これまで遠いように感じていた、もしくは諦めていた社会問題の解決策は意外にも僕らひとりひとりの意識、アクションの中にあることを学んだ。

井桁ジョーダン 21歳

—— 何をしている人?

DJ。

—— 今回の撮影に持ってきたアイテムは?

兄とは生まれ育った環境が全く違う。過ごした時間がどれほど浅くても2人は兄弟として胸を張れる。血が繋がってない友人や知り合いにも同じ事が置き換えられると思った。

—— BLMの運動に関心を持ったきっかけは?

YouTubeでトレバー・ノア が今回の騒動の発端となったジョージ・フロイドさんが殺されたことについて話している動画を見たのがきっかけ。インスタグラムでは〈@blmtokyojp〉の投稿やストーリーズを見た。

—— この運動を通して学んだことは?

日本でも人種問わず沢山の人が現状に不満を持っていて、行動していることを学んだ。

1592646717113-FH010032
Photography Kotetsu Nakazato.

Mayu Takahashi 22歳

—— 何をしている人?

旅をする会社員。

—— BLMの運動に関心を持ったきっかけは?

すべての声に興味を持っていたから。

—— この運動を通して学んだことは?

耳を傾ける事で、思いやりや共鳴感が産まれるということ。聞かれるべくして聞かれてこなかった声が今再び、公になっている。その声に耳を傾けた上で何を学び、話し合い、伝え、どんな人間でいるか、どう行動するかを選択するのは私達だ。この問題が社会レベルでの解決に落ち着いて、全ての傷がたくさんの愛で癒されることを願っている。

1592646817798-FH010029
Photography Kotetsu Nakazato.

池上レイチェル 25歳

—— 何をしている人?

教師。

—— 今回の撮影に持ってきたアイテムは?

自分自身と皆へのリマインダー。黒人のサポートを続け、強く前に進み制度的人種差別や白人至上主義がない未来を作りたい。

—— BLMの運動に関心を持ったきっかけは?

BLMには前から興味はあったけれど行動には移していなかった。今回ジョージフロイドさんの死をきっかけにインスタグラムなどでいろんな情報を見て、私や周りの人が何もしなかったら今の状態が続くと分かった。もっと具体的な行動をやらなあかん。

—— この運動を通して学んだことは?

まだまだ私も知らんことがあって、人生が終わるまで勉強を続けなあかんこと。あと、いろんなサポートの仕方があるということ。

1592647045420-FH000004
Photography Kotetsu Nakazato.

中山 理名 24歳

—— 何をしている人?

モデル。

—— 今回の撮影に持ってきたアイテムは?

「アイデンティティー主義」って〈identitarianism〉のことで、いま私たちはアイデンティティーについて振り返らないといけないときが来ていると思う。多文化主義が民族的なアイデンティティーを作ることを後押しして、私たちを区別させて分裂させて、不平等や貧困をしょうがないって許しちゃっている。それでもグローバリゼーションは止められない。だからいま自分とは違う考え方や見た目の人をお互いに学んで、その人たちと対話して理解を深めて支え合う姿勢と文化が必要。

—— BLMの運動に関心を持ったきっかけは?

ジョージ・フロイドさんが殺された2日後にトニー・マクデードさんも不当な理由で警察に殺害されて、その日からロンドンにいる私の大学の友達がみんな、本当にみんな本気で怒っていて……あれから私も学んで発信していかないとって思い始めた。

—— この運動を通して学んだことは?

一方的な相手のあげ足を取るだけの非難だけではなく、間違えを許せる、謝罪を受け入れる、歩み寄る社会全体の寛容さが必要だなって考えさせられた。あとは、自分の「なんで?」とかモヤモヤした気持ちを掘り下げて、納得いくまで学んで調べ尽くすこと。自分の間違いを認める柔軟さとそれでも折れないちょっとの勇気。

1592647503059-FH000020
Photography Kotetsu Nakazato.

高橋レナミ 25歳

—— 何をしている人?

フリーランス。

—— 今回の撮影に持ってきたアイテムは?

心から大事にしている家族と彼との写真をコラージュした。父は70年代にアメリカに住んでいて黒人の方達と一緒に音楽活動していた。アメリカに留学経験のある兄の周りにも、色んな国籍の友達がいた。そして私の彼も黒人で、ずっと差別と戦ってきている。

—— この運動を通して学んだことは?

自分自身人種差別について考えることは以前から多かったが、差別に対する色んな考え方をこの運動を通して知ることができた。たくさんの人が発信する事で、人の心を動かすことが出来るんだと感動した。

1592647581486-FH000026
Photography Kotetsu Nakazato.

榊 風人

—— 何をしている人?

アーティスト。

—— 今回の撮影に持ってきたアイテムは?

何気なくアメリカの古着屋で買ったTシャツ。アート、ファッションはカジュアルに社会問題を伝えられるということを改めて学んだ。

—— BLMの運動に関心を持ったきっかけは?

海外に住んでいる複数の友達が頻繁にBLMに関する情報を挙げていたから。

—— この運動を通して学んだことは?

みんな自分の正義を全うするために生きているということ。まずはどんな相手とも対話するという気持ちを持つことから差別もなくなると思う。

1592647820789-FH000013
Photography Kotetsu Nakazato.

Michelle 25歳

—— 何をしている人?

Blanche Marketというヴィンテージショップのクリエイティブ・ディレクター。

—— 今回の撮影に持ってきたアイテムは?

Blanche Marketの20SSオリジナルTシャツ。世界で起きている問題に目を向けるという意味で選んだ。Tシャツの販売利益の一部はBlack Lives Matter Foundに寄付した。

—— BLMの運動に関心を持ったきっかけは?

ジョージ・フロイドさんの事件をきっかけに、映画『それでも夜は明ける』Netflixの『13th』を観た。インスタグラムでは、ベイカー恵利沙が発信している内容を見て知るべきだと思うきっかけをもらった。

—— この運動を通して学んだことは?

無知でいることの恐怖。無意識のうちに自分の特権を利用し、言葉という凶器や振る舞い、思い込みによる思考などで大切な人を傷つけていたかもしれないと気がついた。この問題には政治が大きく関わっていて、私たち若者が学び、伝え合い、変えようと努力しないと世界は良くならない。学び、知り、伝え合うこと、そして愛を持って接することを学んだ。

Tagged:
Black Lives Matter
Photography
BLM