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      music Ayana Takeuchi 25 July, 2016

      BUTTECHNOに見るロシアのユースカルチャー

      音楽業界に限らずファッション業界からも注目されるBUTTECHNO。ランウェイのサウンドプロデュースを行うだけでなく、ロシアを取り巻くウェーブの中核的存在となっている彼とその周辺を紐解く。

      BUTTECHNOに見るロシアのユースカルチャー BUTTECHNOに見るロシアのユースカルチャー BUTTECHNOに見るロシアのユースカルチャー

      ロシアに芽生え始めたカルチャーに世界が注目している。その発端ともいえるゴーシャ・ラブチンスキーがファーストコレクションよりフックアップしているアーティストが、パベル・ミルヤコフ a.k.a. BUTTECHNO。彼がDJとして頭角を現してきたことによって、新たな動きが見え始めたロシアのアンダーグラウンドカルチャーについて話を聞いた。

      音楽活動を始めた頃について教えてください。
      2009年、21歳の頃。MIDNIGHT COBRASというバンドでギターをやっていて、ノイズやシューゲイザーをよく聴いていたのだけど、シンセサイザー担当のメンバーのサヴィエ(SAVIER/現在はBURAGOとして活動中)が、徐々にクラフトワークとかのテクノにのめり込み始めて。その影響もあってそういった音楽を聴くようになっていった。その頃は、インターネットがまだそこまで普及していなかった頃だったし、CDが高かったから海外に行った友達が買ってきたレコードをシェアしたりして音楽をサンプリングしてたよ。今、ダンスミュージックを軸にしているのは、バンド時代にシンセを知ったことが大きかったと思う。でも、トラック制作でノイズを作るときとか、今も変わらずギターを使ってるけどね。

      あなたのサウンドは、クラシック音楽のように、方程式に沿ったような音作りですね。
      全ての音楽に言えることだと思うけど、音のウェーブやシェイプをリサーチしたり、例えば、どうしたら和音がうまく合わさるかとか考えながら編集してる。あとは、詩の創作みたいなものかな。そうやって、自分の中にあるイマジネーションをつなぎ合わせたり……、どうやって言葉に表したらいいのかわからないけど。

      ゴーシャとの出会いについて教えてください。
      2009年頃、グラフィックデザイナーとして雑誌『Афиша』のエディトリアルデザインの仕事とかをしていたんだけど、ゴーシャ・ラブチンスキーが2回目のショーのために、招待状も兼ねたZINEを作りたいということで、勤めていた事務所に依頼をしたんだ。一緒に仕事をしたのはそれがきっかけ。それは、「Aglec」と名付けられて、ドイツのカルチャー誌『032c』のスペシャルな付録にもなって。その後に「Aglec2」も制作して、僕たちのコラボレーションは続いていった。2014年に、BUTTECHNOとしてソロプロジェクトを始めた時に、ゴーシャに僕の音楽を聴いてもらったんだ。彼はそれをとても気に入ってくれて、それで、ショーのサウンドプロデュースをすることになった。

      ―ショーの音楽はどのように作ったのですか?
      はじめに、ゴーシャが描いたコレクションのスケッチを全て見て、彼のイメージを、音に置き換えていく作業をしていった。例えば"1984年のソ連"をテーマにしたコレクションでは、時代背景や、音楽も着想源にあって。そこから、イメージを膨らませたりもした。暗い時代というのも音で表現していて、具体的には、その時代のロシア音楽を象徴するようなコードを取り入れたり、ポピュラーな曲をサンプリングしたりもした。会場のムードを作るひとつの要素になるわけだから、場所も想定して曲を編んでいくようにしている。ランウェイミュージックを担当できるのは、とても良い機会だよね。色んな人に、僕の音楽を聴いてもらえるってことだから。

      —あなたのレーベルについて教えてください。
      John's Kingdomは、僕らのコミュニティ周りのアーティストたちをリリースしていて、アンダーグラウンドな精神を最も大切にしてるレーベル。友達のイルダ(ILDAL)がオーナーを務めるGOSTZDUKは、ロシアの音楽を海外に向けるためにやっているんだ。それぞれの目的とするアティチュードは同じとは言えないけど、よく一緒にDJイベントのオーガナイズもしてる。NIIという、ギャラリーとバーを併設するスペースがあるんだけど、そこが僕らの聖地で、ここは、バンド時代を共に過ごしたサヴィエ、イルダと僕の3人で運営してる。

      —地元のおすすめミュージシャンを教えてください。
      ヴィンタージナイキ(VTGNiKE)だね。MIDNIGHT COBRASのベーシストだった女の子と、当時、彼が付き合っていてそれがきっかけで知り合いになった。メタルを聴いていた時に、ダンスミュージックを教えてくれた人でもある。ゴーストズックのイルダもそうだし、彼を通して知り会った友達もすごく多い。

      —インディロック系のミュージシャンとも繋がっていますよね?
      Iceageのモスクワでのイベントをオーガナイズしたことがあって、前座は、Dirty Beaches(現 Last Lizard)とLust for Youth。そこで、IceAgeのエリアスや、Dirty Beachesのアレックス、Lust For Youthのロークと繋がったんだよ。

      —L.I.E.S.やTechnicolourからリリースするFlorian Kupferとの音楽的繋がりについても教えてください。
      彼と知り合いになったのは2回目の来日の時かな。実は、彼のロシア公演は何度かオーガナイズしているんだけど、この春9回目の来日を経て、かなり仲良くなったから、一緒にレコーディングも挑戦したよ。

      —最近好きなバンドはいますか?
      アンビエントノイズ系のSunn o)))とコラボレーションしたBoris。あとは、ケイジ・ハイノ(灰野敬二)も好き。Sonic Youthのメンバーとのコラボレーションで彼の名前を知って、それをきっかけに、彼が音で表現したいことや、哲学にのめり込んでいった感じかな。

      日本とロシアでは、音楽との関わりかたにおいて、違いがありますか?
      ここでは、音楽のダウンロードもアップロードも割と自由だし、コミュニティも細分化されてるから、同じ趣味同士でチャットもできる。見つからない音はないよ。 でも、レコードは音が良いし大切な媒体のひとつだと思う。日本は、ロシアに比べてレコード、シンセの価格が安いね。

      —直近のリリースは?
      ゴーストズックとウクライナのMuscutというレーベルをチェックしてみて!

      —Buttechnoという名前の由来はなんですか?
      ロシアの冬はとても寒いから、もっぱら暖かいヤルタで休暇を過ごすんだけど、あるとき、友達のデモテープを海岸で聞いていたんだ。それが、ブツブツと雑音が入る最悪なものでさ(笑)。ラベルにすごく汚い字で"autechno"と書かれていたのを、僕が間違えてbuttechnoと読み間違えて、なんだこれって。その時のBUTTECHNOっていう言葉の音が気に入ったから、自分のアーティスト名にしたんだよ。

      —今のロシアのユースカルチャーについて教えてください。
      今の15歳とか16歳の子たちは最先端のものを本当によく知っている。僕たちがその歳の時って、大した音楽を聞いていなかったからね。海外のアーティストを呼んだときも、どんなアーティストだってことを、ちゃんとわかって来るんだ。彼らのリサーチ力には本当に驚かされるよね。今、ロシアのユースカルチャーは、世界で起こっていることにとても左右されている。僕たちの旧ロシアからソ連までの壮絶な文化背景は、若い世代が再考し、今まったく新しい方法で表現されつつあるんだ。

      Credits

      Photography Masha Demianova
      Text Ayana Takeuchi

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      Topics:music, music interviews, buttechno, russia

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