Photography Vanni Bassetti

ディストピア的ユーティリタリアニズムをともに表現したUNDERCOVERとTAKAHIROMIYASHITATheSoloist.:Pitti Immagine Uomo 2018AW

フィレンツェのレオポルダ駅構内で行われた合同ショーで、2人の日本人デザイナーが、コレクションを通して警告を鳴らした。

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jan 17 2018, 12:21pm

Photography Vanni Bassetti

UNDERCOVERの高橋盾とTAKAHIROMIYASHITATheSoloist.の宮下貴裕は長年の友人だが、昨日のPitti Immagine Uomoで、2人の日本人デザイナーはさらに少しだけその距離を縮め、各々のメンズコレクションをひとつの個性的なショーとして、フィレンツェでともに披露した。常に実験的な姿勢を見せる高橋盾はヨーロッパでもおなじみ(UNDERCOVERはパリコレの固定メンバーである)だが、宮下が日本国外でショーをするのは、2009年に以前のブランドNumber (N)ineを去って以降、初めてのことだ。

照明が暗くなり、広大なレオポルダ駅にジョイ・ディヴィジョンの「Atmosphere」の最初の1音がこだまする前から期待は高まり、裏切られることはなかった。高橋と宮下は、秩序と無秩序という概念を題材に、今回で合同で披露しようと合意したのだった。そして双方とも、機械に支配される未来に対して警鐘を鳴らすダークなコレクションを展開した。

27年の歴史を通して、ブランドの「服ではなくノイズをつくる」というモットーのもと、UNDERCOVERのデザインチームは不穏な、だが同時に遊び心のあるコレクションを生み出してきた。2018年春夏のウィメンズコレクション『The Shining』では、ひねくれた再解釈で私たちを狼狽させた高橋。今季はその非常にシアトリカルな観点を、キューブリックの『2001年宇宙の旅』に見出している。宇宙やAI、高い知能を持った生命体をテーマにしたこのキューブリック作品のシーンを切り貼りし、再現したのだ。「I’m sorry Dave, I can’t do that(申し訳ありません、デイヴ。それはできかねます)」と話すスーパーコンピュータのHAL9000のヒップバッグから、「Caution: Contains Electric Bolts(感電注意)」という注意書きがあるアクセサリー、「Warning: Human Error(警告:人的ミス)」「Computer Malfunction(コンピュータの誤作動)」などという文字が施されたジャケット、キューブリックの作品に私たちを引きこむ映画のスチール写真まで、高橋が『宇宙の旅』をーー映画の公開から50年の歳月を経てーー今季のコレクションに使ったことで、AIがある日、私たち全員を殺すだろうというこの映画の警告が、かつてないほど的を射たものになった。Netflixで『ブラック・ミラー』が話題となってから、私たちは自ら破滅を招いているのではないかと自問したものだ。果てることがないように見える科学や技術の進歩への欲求は、いずれ我が身を滅ぼすことになるのだろうか?

高橋盾が自らのインスピレーションをコレクションの前面に押し出してきたのに対し、宮下はそのコレクションを実用的な素材の鎧からなるレイヤーで覆い隠した。2010年にTAKAHIROMIYASHITATheSoloist.を創立して以降、メディアの前にあまり姿を現さないこのデザイナーは、代わりに服自身に話をさせてきた。詰め込まれたディテール、重厚な手仕事、脱構築的なテーラリングを通して、彼のアイデアは声をあげる。「自分のブランドをデザインするほうが、より自由だと感じます」。<StyleZeitgeist>が行った貴重なインタビューで、宮下はそう話した。「そこでの服は、Number (N)ineのものより自分の心に近いのです」

2018年秋冬コレクションで、宮下の心にあったものとは何だろうか。おそらく私たちが考えている通り、世界の終りなのだろうか。現在普及しているメンズウェアと伝統的な日本の衣服がお互いを進化させ、私たちの眼の前でそのかたちを変える。エマージェンシーブランケットのスリーピングバッグを解体し洋服に仕立てた彼の服は、終末以後の世界に住むノマドな忍者のユニフォームのようだ。ドナルド・トランプと金正恩が赤い核発射ボタンの大きさを競い合う昨今、宮下が最悪の事態を想像するのは仕方のないことだ。しかし宮下は、フィナーレのNine Inch NailsのThe Day The World Went Away の楽曲に乗せて、今日は終わってしまったが、明日は新しいことができる新しい日=新しい未来へ向かうことができるという、未来へのポジティブなメッセージを唱えようとしている。