Photography Mitchell Sams

自然への回帰をいざなうキコ・コスタディノフの2018年秋冬コレクション

偉大なる野外活動(ザ・グレート・アウトドア)へようこそ。

by Felix Petty
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15 January 2018, 9:30am

Photography Mitchell Sams

This article was originally published by i-D UK.

今シーズンの折り返し地点にきたロンドン・メンズウェア。初日は、少なくともLiam HodgesCottweilerまでは少々活気がないように感じられたかもしれないが、2日目のショーは希望が持てるものだった。ロンドンのファッションシーンにおいて皆が愛し、楽しんでいるものを称賛し、明るい未来を指し示していたのだ。そして今シーズンのKiko Kostadinov(キコ・コスタディノフ)は、希望を抱いている。

ブルガリア出身のこの若きデザイナーは、闇から抜け出し、光の下へ出たがっていた。ショーの後で、彼自身がそう説明したのだ。ロードムービーを観て、自然あふれる世界とシンプルな生活へ戻ることを夢見ていた彼。招待状は押し花でつくられていた。「今季のコレクションは、どんなふうにエスケープできるかがすべて。ポジティブな影響についてのものなのです」と彼は説明する。ハイキング、キャンプ、水泳といった、偉大な野外活動に着想を得たキコは、今季のコレクションに逃避(エスケープ)の可能性と自由を閉じ込めてみせた。

鍵となるのは、バーベット・シュローダーのアンダーグラウンドかつカルト的な名作映画『モア』。60年代後半を舞台に、不満を抱えたドイツ人青年がヨーロッパを横断する物語だ。青年はパリで自分自身を見つけ、イビザで美しい少女と出会ったのち、LSDの闇に迷い込む。「Obscured by Clouds」と題されたキコのコレクションは、この去りゆくユートピアと失敗に終わったカウンターカルチャーの物語を、もっと前向きに解釈したものである。

テーマの根幹をなすのは、逃避、新鮮な空気への希求、そして自然の純粋さが持つ希望。少しだけヒッピー的要素もある。「私たちはハイキングに出かけられるし、泳ぐことも、陶芸もできます」と彼は話した。大都市の息苦しさから逃れ、夏の日差しの下に憩いの場を探すという、潜在的な可能性に言及するコレクションなのだ。

彼はこのストーリーを、2人の登場人物を通して紡いでいく。その1人は男性だが、もう1人は女性。彼は自らのラインにウィメンズウェアを投入してきたのだ。ショーの前半はすべて彼女に捧げられたもので、花や枝葉を使った立体的かつシアトリカルなヘアアクセサリーが登場した。ヘッドピースはJunya WatanabeやUndercoverも手がける加茂克也がつくり上げたものだ。このようなドラマチックな演出とは対照的に、女性モデルが着用していたのは、シンプルで落ち着いた、1~2色のカラーブロックで構成されたスタイルの服だった。この対比は素晴らしい。

この色調のインスピレーションは、主にキコの故郷であるブルガリアと、その地域の伝統的な陶器や磁器にある。それがはっきりと浮かび上がるのはメンズウェアだ。ウィメンズの花を使ったヘアアクセに対して、こちらではブロンドのウィッグが用いられていた。イビザ風のボヘミアンスタイルより、もっとアクティブなものだ。すべてのピースは、工業用の生地と精緻なカッティングからつくられている。意外なインスピレーション源となったのは、イヴ・クラインの著作『Foundations of Judo』。画家およびパフォーマンスアーティストであるクラインによる、柔道のガイド本だ。美と立ち居振る舞い、そしてアクティヴィティが混在するそれは、キコが今回発表したコレクションの中枢にあるように思う。

Credits


Photography Mitchell Sams
Translation Aya Takatsu